大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「仕事を舐めれば、仕事に舐められる。」

   

少し前のこと。

生徒のひとりが、
「先輩にデモの仮歌を頼まれて、
昨日レコーディングだったんですけど、音が取れなくて、
すごく時間がかかっちゃったんです。」
と言います。

そこそこ歌えるはずの彼が、そんなに時間がかかったなんて、
と不思議に思い、聞きました。
「その曲、スタジオで初めて聞いたの?」

プロの仕事では当たり前のようにあることですが、
そういう状況だったとしたら、アマチュアの場合、
時間がかかっても、無理はありません。

「いえ。ずいぶん前にもらってて。
そんなに難しくないと思ってたんですけど・・・」

つまり、端的に言えば、彼は、そのレコーディングを舐めたのです。

たかだか、先輩の手伝い。
お金がもらえるわけでもないし、
レコーディングもそんなにシビアなものでもないし。
適当にやればいいよな・・・程度のものと、
ろくに練習もしないで本番に向かった。

そういうことだったのでしょう。

どんな小さな仕事でも、
それが例え、ギャラにならなかったとしても、
縁あって引き受けたことなら、絶対に手を抜いたらダメ。

手を抜くなんて、150年早いんじゃいっ!
(つまり、死んでも、仕事は手を抜くなってことです)

理由は3つ。

1. 仕事を舐めて、手を抜けば、
やがて、自分のレベルが、手を抜いたレベルに下がる。

カラダに染みつくクセは、そう簡単には抜けません。
いざ、本当に力を出そうと思っても、カラダが裏切ります。

集中して、いい仕事をする習慣を、どんな時も持つこと。
それが、いざというときに実力を発揮するための準備です。

2. どんな機会も自分を高める修行と考えるべき。

アマチュアがレコーディングに参加できる機会なんて、
どのくらいあるでしょう?

人の書いた曲を唄って欲しいと頼まれることは?

まったくのオリジナル曲を自分なりに歌いこなす機会は?

そんな、滅多にない機会を一度でも無にしては絶対にだめ。

ベストのベストを尽くしても、
まだまだ実力は追いつかないはずです。

しかし、必死に実践を積んで、
泣きそうな思いでひとつひとつ乗り越えて、
少しずつ、少しずつ、本当の実力が育って行くものです。

学校で習うことなんて、ほんの入口でしかないのです。

3. レコーディングもライブも、一期一会。

先輩の仕事だからと甘く見て、
「また次にがんばればいいや」と思っても、
その、「次」はこないかもしれない。

いえ。こない。そう思った方がいい。

仕事を舐めて、時間かかって・・・
なんて、ボーカリストに、また頼もうと、人は思わないものです。

その先輩のリストから、彼の名前は消える。

それでは絶対に次につながりません。

人はメディア。
手を抜けば、「手を抜くやつだ」という評判が、
恐ろしいほど早く広がるのが業界です。

どんな出会いも大切にする。
どんな仕事もベストを尽くす。

難しいことなのだけれど、
本当に、本当に大切なことなのだと、
私も、日々胸に刻んでいます。

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