大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「今日はノドの調子が悪くて・・・」

      2015/05/08

誰にだってのどの調子の悪いときというのはあります。

どんなに気をつけていても、あぁ、声の出がイマイチだなぁ、とか、
なんかガラガラしちゃってるなぁ、なんて時は、
どんなプロフェッショナルにもあるものです。

そんなとき、ステージやスタジオで、歌う前からいきなり、
「すみません。今日風邪でノドの調子が悪くって・・」
と言い訳をする人もいますが、
そんなことばを聞くたびに、「あぁ、プロじゃないな」と思ってしまいます。

理由は・・・

〇たとえいくらであっても、お金をいただいてステージに立つ以上、
言い訳はしないのが鉄則。
言い訳しなくちゃならないような状況なら、キャンセルするべき。

〇そもそも自分の状態が悪いことを
歌う前からお客さんやクライアントとシェアする意味はなんでしょう?
それって、
「多少のことがあっても許してください」
「風邪なのに、こんなにがんばって、すごいでしょ?」
と言う甘えではないでしょうか?

〇どんな状態であっても、
それをお客さんやクライアントに悟られないようベストを尽くす。
またどんな状態であっても、それを悟られないで歌えるだけのテクニックや、
地力を身につけておく。

〇最初から負の情報をインプットされたら、
その段階でお客さんやクライアントは不安や同情を強いられることになります。
そんな状態では気持ちよく、自由に音楽を聴くことも、的確にジャッジすることもできません。それではフェアじゃありません。

〇そういうことばを口にするのは、お客さんに対する申し訳ない気持ちというより、
「自分はこんなものじゃない」
ということをわかって欲しいという気持ちです。
歌い手の価値は聞き手が決めます。
調子の悪い状態を作ってしまうのも、実力のうちなのです。

人気声優、神谷明さんはインタビューで、こう答えています。

「風邪をひいた時はどうするんですか?」
「風邪はひかないことにしています」

プロフェッショナルのことばです。

6990915_s

 - The プロフェッショナル

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

  関連記事

やっぱ、英語なんだよなぁ。

日本語の歌を歌っているとめちゃくちゃカッコいいのに、 英語の歌になったとたんに、 …

衣装にこだわる?「こだわらない」ことにこだわる?

衣装の選び方は、ひとそれぞれ。   「とにかく楽なこと」と、オシャレ度 …

他人の作品を「表現する」ということ。

ケン・ソゴルという名前を聞いて、 「おぉ、懐かしい」と思う人は、 どれくらいいる …

楽しくやるから、いい仕事ができる。

ニューヨーク時代、日々の生活で最も気になったのは、 巷で働く人たちのやる気のない …

エネルギーのピークは本番に持っていく

「歌う当日って、どんなことを心がけたらいいですか?」 という質問をよく受けます。 …

「他者基準」で自分をジャッジしない。

才能あふれる若者たちを教える機会に恵まれています。 レッスンのたびにワクワクした …

自分自身を「スポットライトのど真ん中」に連れて行く。

スポットライトって、すごいなぁと、 ヴォイトレに来るアーティストたちの、 コンサ …

「時間を忘れて夢中になる人」だけが、プロフェッショナルとなる

「ボクね、コーヒー飲もうと思って口に入れるでしょ。 で、そのまま機材の調整はじめ …

ヴォーカリスト必読!マイクとモニターの超絶役に立つお話!!!〜前編〜

昨夜のブログ、そしてメルマガにて、モニターやマイクのお話を書いたところ、 なんと …

『ライブ前に自分に問うべき10のことば』

ライブ直前、自分のブログを読み返していると、 なんだか胃が痛いような気持ちになり …