『きみ、ホントに、よくプロになれたよねぇ。』②
さて、たった2本のトラを引き受けただけのはずが、
いきなり全国ツアーを回ることになった私は、
「プロのお仕事」の洗礼を受けることになります。
中学から洋楽一辺倒。
高校から大学時代を通じ、ロックバンドに明け暮れていた私。
心の中で、どこかちょっと馬鹿にしていたようなところのある芸能界のお仕事。
カラダにも耳にも全然なじまない曲たちの、
しかも、バックコーラスをやるなんて。。。
正直、やりたくて仕方なかったか?と聞かれれば、Noでしょう。
バンド仲間にも、恥ずかしくて、言えなかったのを覚えています。
学生時代の仲間には、「MISUMI、そんなのやってるんだ?」と、
あざけりの笑いを浮かべた子もいました。
そんな風に、中途半端な気持ちで仕事をすれば、
しっぺ返しにあうのは当然です。
ツアーのはじめから終わりまで、コーラスの相方には、
それはもう徹底的に、ありとあらゆることを注意されました。
こどもの頃から音楽を学んでいた彼女は、耳がいい。
歌謡曲も好きだから、曲のツボや、コーラスのコツがわかる。
なにより、業界で仕事をしたい!という意欲がすごく、
スタッフやミュージシャンたちと仲良くなるのが上手で、
業界の事情も、本当によく知っていました。
さぞかし、ダサダサ、ダメダメの私の相方ぶりがふがいなかったことでしょう。
一方で、当時の私には、彼女が何を注意してくれても、全然理解できなかったのです。
もちろん、素直に聞く耳は持っていたつもりです。
しかし、理解できないのだから、改善しようがありません。
たとえば、
「MISUMIはピッチが悪くて、全然ハモんない。」
と言われても、「ハモる」というのがどういうことなのかわからない。
今でこそ、「ウーハー」や「白玉」
(女性コーラスが「フゥ〜〜〜〜っ」と2声で長い音符を歌う部分)で、
「ハモらないコーラス」がどれだけ致命的か、よ〜くわかりますが、
当時は、ホントにちんぷんかんぷん以下でした。
自分は一応、決められた音を歌っているはず。。。
毎回、ステージのたびに、自分なりに一所懸命歌うのですが、
その度に、ダメ出しをされ、
「ハモるってなんだろう?」と、クエッションマークは大きくなるばかりでした。
いやいやいやいや。あり得ません。
私のお仕事、「コーラス」だったんでした。
コーラスの仕事は、ギターの弦の1本みたいなもので、
何人かと声を合わせて、気持ちいいハーモニーを出して、やっと成立するもの。
つまり、「ハモってなんぼ」のお仕事です。
「ハモる」ってなあに〜?
・・・なんて状態で、お仕事行けば、そら、叱られますわね。
いわば、エクセルも経理ソフトもいじれない経理の女の子。
挨拶の仕方も知らない、電話対応もできない受付嬢。。。
しかも、相方のツアー中の注意のことばの数々を要約すれば、
当時の私ときたら・・・
服装も、
化粧も、
ステージの立ち姿も、
ダンスも、
何もかもがダサダサで、
おまけに、
お勉強はできるけど、頭が悪い、
世の中を知らない、
男に免疫がない、
シロウトくさい、
・・・要は、一緒に仕事してると、いらっとするようなタイプ。
あぁ、思い出すほどに、穴があったら入りたくなってきました。
そんな私を20数本の長いツアーの間、
ずっと教育しようとがんばってくれた彼女に、今さらながら感謝の気持ちが湧いてきます。
・・・・結局、当時の私は、彼女の気持ちには答えられなかったわけですが。
この、人生初ツアーのダメ話は、もうちょっとだけ続きます。
いやぁ、書き出すと、いろいろ蘇ってきて、マジで恥ずかしい。。。
もう何十年も前の話なんで、今さらですが、
みなさん、シロウトのくせに、紛れ込んでて、ホント、ごめんなさい。
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