大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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「じゃ、”ハモる”って、どうするの?」コーラス上達法②

   

さて、昨日の投稿『きみ、ホントに、よくプロになれたよねぇ。』②でも、
紹介したとおり、コーラスは「ハモってなんぼ」。
 

実は、日本人、このハーモニーが苦手なんです。

 

残念ながら、昔ながらの日本の音楽には、この「ハーモニー文化」がありません。
歌い手がハモっている民謡や雅楽を聞いたこと、ありませんよね?

実は、世界的に見ても、西洋文化のように、
当たり前にハーモニーが存在している音楽の方が珍しいと言われています。

 

イギリスを車で横断していたときのことです。
宿泊予定のホテルのレストランで食事をしていると、
ラウンジの方から、結婚式で盛り上がったらしい大勢の人たちの合唱が聞こえて来ました。

これが、実にすんばらしいハーモニー。
思わず、どんな人たちが歌っているのかと振り返ってみると、
ごくごく普通のおじさま、おばさまたち。

その時、一緒に食事をしていたイギリス人の友人が、こう教えてくれました。
「アイルランド人だね。彼らにとっては、ああして歌うのはごく普通のことなんだよ」
 

一方、ニューヨークのゴスペル教会でも、
いきなり会場全体が歌い出したゴスペルのクオリティの高さに驚いた経験があります。
八百屋のおじさんも、魚屋のおばちゃんも、たばこ屋のおじいちゃんも、
み〜んな、気持ちいい声で、思い思いの音を歌い、
それが見事にハモっている。。。

 

こどもの頃からこんな環境にいるわけですから、

はぁ〜〜、よいよい♪
えんやぁ〜〜こらさの、どっこいしょ♪
なんて大ユニゾン大会を気持ちよいと思ってしまう日本人とは、
感覚が違うのは当然です。

 

では、合唱の経験もほとんどない、
ハモる感覚がわからない人が、どうやって「ハモ感」を手に入れるのか。
最もシンプルな練習方法は、
ハモりの得意な人たちに、一緒に歌わせてもらうことです。

 

1.まずは、2人以上の人に目の前でハモってもらい、感覚をつかむ。

2.そのうちの誰かのパートと同じ音を歌って、ハーモニーに加わってみる。

3.今ひとつ合わないときは、同じ音を歌った人に、2人だけでユニゾンで歌ってもらい、
ピッチ、音色、そしてリズムやグルーブなど、ぶれるポイントをチェックする。

4.自分と同じパートの人にお休みしてもらい、それ以外の人とハモってみる。

5.録音して、チェックする。

 

ひとたび、「ハモると気持ちいい」という感覚をつかまえられれば大丈夫。

後は、その感覚を再現するために、声の微調整をして行けばいいだけです。

 

もっとも大事なことは、
ハモれなかったらどうしよう・・・と、恐る恐る歌わないこと。
ハーモニーが美しいのは、異なる音の周波数がいい関係にあるということ。

ひとつひとつの楽器がよく鳴って、心地よい周波数が出ていること。
その上で、その複数の音の周波数が整うと、人は心地よいハーモニーと感じるわけです。

 

声は楽器です。

きちんといい音で鳴らせていない楽器が、
心地よい周波数を出せるわけがありません。

思い切ってしっかり声を出す。

その声のピッチや周波数を整えて行くことがとても大切なんです。

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 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

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