『きみ、ホントに、よくプロになれたよねぇ。』③
どんなお仕事であっても、はじめての時は知らないことだらけであたり前です。
お仕事そのもののやり方以上に、
挨拶の仕方、タイムカードなどの事務的処理の仕方、
電話の取り方、ことばづかい、職場で使われる用語・隠語の数々など、
その仕事独特の流儀やルールを覚えるのは、
なかなかガッツがいることです。
さて、お話してきたように、
私の初仕事は音楽業界の中でも「ザ・芸能界」といわれる、
いわば特殊な世界のお仕事。
しかも、時はバブルのまっただ中です。
思い返しても、実にユニークかつ興味深い流儀や暗黙のルールがありました。
まずは独特の言葉遣い。
たとえば、
何時であろうと挨拶は「おはようございます」だったり、
なんでもかんでも、逆さまにことばを言ったり。
例えば、
「デーハーな、ちゃんねー。」(派手なねーちゃん)
「しーすー、まいうー。」(寿司うまい)・・・
さすがにこれは、聞き取れるまでにしばしの修行がいりました。
さらに、数字は音名で。
例)
G千通し(げーせん通しと読み、「5000円通し」の意味。飲み会などでの割り勘)
Eの並び(33,333円のこと。当時のギャラは「並びで請求」と言われたりした)
オクターブ(「8」のこと)
DG(「でーげー」と読み、2500円または25000円)
これらはもちろん、使えと強要されるようなものではありませんが、
わからないと不便だったのと、いかにも業界っぽくっておもしろかったので、
当時は私も好んで使っていました。
さすがに最近ではほとんど聞きませんね。
しかし、どうしても慣れなかったことがいくつかあります。
例えば、プロデューサーやディレクターが、初対面で自己紹介するなり、
「それで、MISUMIはさぁ・・・」と呼び捨てにしてくることや、
現場では「コーラスさん」と呼ばれるのも違和感があるのに、
たとえ業界用語といえども、「ラスコー」呼ばわりされたりする時は、
いつも居心地悪く感じました。
ミュージシャンやスタッフたちが、仕事の合間や打ち上げなどで、
いわゆる猥談を平然とするのも我慢ができず、
あからさまに嫌な顔をしたり、
わからないふりをしたりするほどに、
ことさらヒートアップしたり、矛先がこちらに向いてきて、
しまいには、集団でからかわれたりするのも本当に苦痛でした。
まぁ、私のそういう業界慣れしてない、融通の利かない感じが、
やがて「いじめ」レベルのことばを浴びせられるようになる原因になったのでしょう。
いずれにしても「セクハラ」「パワハラ」がすぐに問題になる現代ではあり得ないことです。
このシリーズ、なんだか昭和バブル期の匂いがぷんぷんしますね(^^)
関連記事
-
大陸横断鉄道の「個室寝台」
生まれてはじめて、 海外をひとりで旅したときのこと。 カナダの大陸横断鉄道、 V …
-
は?この手がなにか?
昔からよく、「手」のことをいじられます。 フリーター時代、バイト先の店長に、「歯 …
-
多感なこどもたちにジョークは通用しない
小学生の音楽の授業のときの話です。 「ではこの曲を、誰かに歌ってもらいましょう。 …
-
自分の人生の価値を過小評価しない!
人にものを教える仕事がしたいと思ったら、 真っ先にすべきは、自分のプロフィールを …
-
「才能」ってなんだ?
若かりし頃から、 「恵まれた人」に対する強烈なコンプレックスを抱えて生きて来まし …
-
握手。ハグ。キス。
音楽業界の常識と一般の常識とは、 あらゆる面で、大きなずれがあります。 起業して …
-
音楽と生きるのか?音楽で生きるのか?
かつて、日本には、洋楽至上主義と言っても過言ではないほど、 「やっぱ洋楽なんだよ …
-
自分が自分であることの奇跡
今日はお誕生日でした。 いくつになっても、誕生日はとてもワクワクし …
-
情報じゃない。オーラに感動するんだ。
学生時代から本屋さんが大好きでした。 それは今でも全く変わらなくて、 本屋さんと …
-
「〜だと思います」と言わない勇気。
B面ブログを本格的に書きはじめたとき、 「『〜だと思います』ということばは、つか …
- PREV
- 「今さらそんなことして、どうするつもりなの?」
- NEXT
- 自分の「本気」が試されるとき