夢中になれる音楽は「一生の宝」
少し前のこと、バンド仲間で、キーボーディストの友人に、
「若い頃、影響を受けた音楽は?」と聞いたら、
「主にELPだね。」という返事が返ってきました。
なるほど。
彼の大好きな音楽はプログレ。
中でもELPのキース・エマーソンは彼が大尊敬する、スーパースターです。
もちろん、彼の口から「ELP」という答えが返ってくるのは当たり前のことです。
彼がELPに影響を受けた時代からかれこれ30年以上。
そこで、私は続けて質問しました。
「最近はどんなの聴いてるの?」
彼はにやりと笑って言いました。
「主にELPだね。」
大好きな音楽はどれだけ聴いても、
飽きるどころか、どんどん好きになる。
聴くたびに興奮するし、新しい良さを見つけてしまう。
本気で夢中になれる音楽は一生の宝です。
音楽というものが生まれたその瞬間から、
地球上には、ありとあらゆる音楽が、文字通り無数に生まれてきました。
今、この瞬間も、世界のどこかで、誰かが音楽を生み出しています。
そんな、星の数より多いかもしれない音楽の中から、
自分の一生に影響を与えるような、素晴らしい音楽に出会えてしまうということは、
本当に幸運なことです。
聴いた瞬間に心をとらえて離さない曲。
人生を変えるような、強烈なインパクトを与えてくれる音楽。
世界中の、たくさんの人たちに、そんな影響を与えられる音楽を創り出してきた、
音楽の偉人たちには、心から感謝するばかりです。
ラジオや、テレビから、
親兄弟、友達のラジカセや、レコードプレイヤーから、
流れてくる音楽に心奪われて、
お小遣いを必死でためてレコードを買ったり、
夢中でラジオ番組を録音したり。
音楽雑誌を本屋で立ち読みして、
レコードのライナーノーツを熟読して、
事情通の友達に根掘り葉掘り質問して・・・
そうやって、1ミリずつ、
大好きな音楽に近づいていった時のぞくぞくするような興奮は、
おそらく一生、カラダのどこかに刻まれていくのでしょう。
近年、若者たちの、
音楽とのつきあい方はとんでもなく様変わりしています。
「ヴォーカリストは誰が好きなの?」
「チャカ・カーンです。」
「ほぉ〜。どのアルバム聴いてるの?」
「??・・・あ、あの、『勉強になるから、これ聴いてみなって』
事務所の社長にいただいたCD-Rに入っていたので、アルバム名とかはちょっと・・・」
「そっか。なんて曲?」
「あ・・・いえ。曲名もちょっと。。。」
不思議に思って、もらったという資料を見せてもらったら、
チャカに、スティービーに、ホイットニーに・・・という寄せ集め。
そして、その資料を聴いていることで、満足してしまっている彼女。。。
彼女は特殊な例ではありません。
「好きなアーティスト」の曲のCDなんて、1枚も持っていない、
すべてYoutubeで聴いていると言う子。
次々、youtubeに上がっている曲や、
みんながシェアしている流行の曲を聴いているから、
曲名もアーティスト名も一切知らない、と言う子。
時代を否定するつもりはありません。
今はおそらく過渡期なのでしょう。
情報をどんどん掘り下げる子は、もちろん今でもいますし、
音楽好きの人の中から、ホンモノのミュージシャンや音楽愛好家が生まれる確率は、
時代が変わってもたいして差はないのかも知れません。
情報が多すぎて、音楽の共通言語をなくした子たちは、
SNSに共通の言語を見出して新しいコミュニケーションを展開しているのかも知れません。
変わっていく音楽シーンの行く末を憂いてしまうのは、
私自身が年寄りになりつつある証拠なのかも知れません。
でも、です。
そんな若者たちに・・・一度でいいから、
一生を変えてくれるような強烈な音楽を探す旅に出てみて欲しい。
気になる曲やアーティストの背景、そのルーツを追いかけながら、
次々と、関連する曲やアーティストを掘り下げて行ってみて欲しい。
そして、よりドキドキするもの。
よりワクワクするものを、求めて、求めて、
徹底的に音楽を聴きまくってみて欲しい。
その結果、それほどの興奮に出会えなくても、
何か出会えること、自分の中に見つけられることはあるはず。
こんな時代に、馬鹿みたいに時間とお金を使って、
音楽を追究してみる。
そんな「無駄」が、実は大きな宝物をくれるかも知れません。
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