自分が見つけたかった音楽の興奮や感動は、今もそこにあるか?
何かを必死に追いかけ続けていると、
ふと、なぜ追いかけてきたのだったか忘れてしまうことがあります。
音楽に夢中になったのは、
気持ちを揺さぶられるような感動的な出会いがあったから。
その音楽を聴いていると・・・
とてつもなく興奮したり、
しゃき〜んと身が引き締まる気持ちになったり、
何でもできる、空でも飛べる、というくらい、
自分の目の前がばか〜〜っと開けたり、
そうかと思えば、
ただただ、幸福を感じたり、楽しくなったり、
淋しくも、美しい感覚で満たされたり・・・
音楽の魔法につかまえられて、
音楽と一緒に生きていきたい、生きていこう、
あんな素晴らしい音楽を、自分も人に届けられる人間になろう、
みんなの羨望を集めるような、カッコいいミュージシャンになろう・・・
そんな風に音楽を志した人は多いはず。
とはいえ、音楽は、のめり込めばのめり込むほど、
どんどん、そのストイックな側面が切り立った崖のように立ちはだかって、
関わろうとする人を拒むときさえあります。
音楽の素晴らしさを存分に味わいつつ、
ストイックな面を回避するには、
音楽以外の仕事に就いて、生活を安定させた上で、
余暇時間に思いきり自分の演奏や、音楽鑑賞を楽しむというくらいの距離感が理想的。
しかし、そうしたバランス感覚を保とうとしても、どんどん吸い寄せられ、
やがて、多くの人が、音楽という魔物に飲み込まれていきます。
もっといい音出したい。
もっとうまくなりたい。
もっといい曲書きたい。
もっとカッコよく歌いたい。演奏したい。
もっとたくさんの人に聴いて欲しい。。。。
もっともっとが高じて、一種のランナーズハイのような状態になる。
よりよい楽器を求めて、楽器屋を回ったり、ネットサーフィンしたり、
高額な楽器のローンを組んだり、
スーパーテクニックの数々を取得しようと、来る日も来る日も練習に明け暮れたり、
さまざまな人の教えを請うたり、
電気関係にこだわって、ハンダごて片手に、あちこちいじくり回したり、
ダイエットやエクササイズでカラダを絞り込んだり、健康フェチになったり、
毎日何曲も何曲も、ヒマさえあれば曲を書いたり、
リハやレコーディングを繰り返したり・・・
こうなると、音楽を追いかけているのか、
音楽に追いかけ回されているのか、最早わかりません。
何事も、極めて行く人は、ある種の変態で、
そうして、のめり込むからこそ、道を極めて行かれるもの。
しかし、だからこそ、ときに、立ち止まって考えたいのです。
自分が見つけたかった音楽の興奮や感動は、今もそこにあるか?
自分の目の前で開かれた音楽という可能性の扉は、
今も、大きく、そこに開いているか?
ただただ、こだわりや、負けん気や、収集癖や、自己顕示欲、そして習慣で、
音楽の与えてくれるものとはかけ離れた方向に、
自分自身を駆り立てているのではないか?
そもそも、今も、本当に、音楽に夢中なのか?
毎日、必死だからこそ見失いそうになる、
自分自身と音楽との関係性を、ときに足を止めて、考えてみたいものです。
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