大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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自己表現のための”自分アバター化作戦”

      2016/02/14

かつて、ハワイ出身の日系アメリカ人女性シンガーに、
英詞の提供をしたことがあります。

 

ハッキリ言って、あちらは「ネイティブ」。
私は独学の、まぁ、(ちょっぴり謙遜して)言うなれば、「なんちゃって」。

それなのに、なぜ、私が彼女に英詞を提供することになったのか。

 

ヴォーカル・レコーディングでスタジオに呼ばれたときに、
本人に、率直に質問しました。

「どうして、自分で歌詞を書かないの?」

すると彼女は、こう言います。

「日本語でなら書けるんだけど。
普段使っている英語だと、なんだか照れくさくて、逆に本音が書けないの。」

 

私自身、英語で詞を書くようになった理由は・・・

こどもの頃から洋楽一辺倒だったせいで、
日本語を歌にどうハメたらいいかさっぱりわからなかったこと。

そして、日常的に使っていることばの生々しさが、
どうもしっくりこなかったこと。

なので、彼女の気持ちはよくわかりました。

 

 

「人前に立つのが苦手」という人はたくさんいます。

 

作品や演奏、歌を、人前で披露することは、
どれほどキャリアを積んだ人にとっても、
有名人にとっても、
エネルギーと勇気がいることなのは、なんら変わりありません。

 

「自分をさらけ出せない」「解放しきれない」ことで悩んでいるアーティストは、
一体どれだけいるでしょう。

 

 

しかし、それで、引きこもってしまうくらいなら、
作品や音楽を発表できないくらいなら、
自由に表現できない自分に、苦痛を感じてしまうくらいなら・・・

思い切って、「別人」を演じてみるのもありではないか。

 

長年付き合ってきた名前や顔には、自分の歴史が刻み込まれています。

その歴史が自分自身にブレーキをかけてしまうなら、
歴史そのものを塗り替えるのもひとつの作戦です。

それが、
『自分自身を自分のアバター化する作戦』です。

 

 

髪を金髪やピンクに染めたり、
ウィッグをつけたり、
剃ってしまったり、

思い切った減量をしたり、
美容整形した人もいます。

名前を全然違ったものにしたり、
(今の時代は無理ですが)経歴まで全部でっち上げた人もいました。

男の子だったのに、女の子になっちゃったり、
その反対の子もいますね。

 

一歩引いたところから、冷静に自分自身を見つめられるし、
自分で創り上げるキャラクターは自分のイメージ通り、

時にクールにカッコよく、
時に愛らしく、
時にセクシーに動いてくれます。

そのアバターに、どう行動して欲しいか、
どう見せて欲しいか、
何を語って欲しいか。
どんな歌詞や曲を書いて、
どんな風に歌って欲しいか・・・

考えるだけでワクワクしませんか?

 

そうやって、思い切って自分自身を別人にしたことで、
大ブレークした人はたくさんいます。

 

 

やがてブレークすれば、
自分の名前はシャネルやヴィトンのような、ブランド名として、
たくさんのお金や人を動かす、ひとつの産業になっていく。

そうなれば、
さらに自分の名前は自分だけのものでなくなります。

 

そう考えると、自分自身を自分のアバター化することは、
やがてアーティストとしての自分を「ビジネス」にして行くために、
必要なことのひとつかもしれませんね。

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【Day-to-day】
実は私も、最近、なんだか他人と思えないこの丸い目鼻とでかい口に愛着を覚え、
新しい相棒として”Minnie O”(ミニー・オー)を連れ帰りました。
これからちょっとずつ、一緒に歌ったりする予定です。
これもアバターのようなものですね。たぶん。

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 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, プロへの突破口

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