大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

バンドとカラオケは全然違うっ!

   

カラオケ育ちの若者たちは、バンド内のコミュニケーションが実に苦手です。
 
スタジオでリハーサル形式の授業をしているというのに、
最初から最後まで、歌詞カードしか見ていない。
 
演奏が終わっても、お互いの演奏に関して、
感想や意見を言ったり、注文をつけたりという場面が、
まぁ、ほとんどない。
 
みんな、自分と歌詞カード。または、自分と楽器とひたすら向き合う。

「なら、カラオケでやったって一緒やろっ!」

という雰囲気なのです。

 

というか・・・

 

極論ですが、

一切お互いの音を聞いたり、コミュニケーションを取ったりしないなら、
むしろカラオケ、マイナスワンと演奏する方がいい。

 

だって、カラオケはミストーンを出さないし、テンポもよれない。
グルーブだって正確だし、
なんたって、毎回確実に、同じ演奏をしてくれます。

 

 

実際、いろいろな技術が進歩して、音響的に遜色がなくなってきてから、
カラオケやマイナスワンだけでライブする人たちも出てきているくらいです。

 

 

一方で生身の人間は間違える。
勝手にアレンジする。
テンポがよれる。
グルーブが乱れる。
びっくりするくらい下手な人やちゃんと練習してこない子もいる・・・
 
それでも、なんでも、やっぱり人と演奏するのはなぜか?

 

それは、人にはエネルギーがあるからです。

 

 

観念的な話をしているのではありません。

 

音は空気の振動。
その振動を生み出しているのは、シンガーやプレイヤーの肉体。
そして、その肉体を動かしているのは、それぞれが持っているエネルギー。
 
エネルギー不変の法則に基づくならば、
 
つまり人は、音楽を通じて、
エネルギーを与えたり、受け取ったりしているわけです。

 

 

 

こんなことがありました。

 

ニューヨーク武者修行時代のある日のこと。

オーディションを受けたライブハウスで気に入られて、
急遽、「来週末のゴールデンタイムにパフォーマンスをやってみない?」
というオファーをもらいました。

 

あまりに嬉しかったので、後先も考えず、
「もちろん!」と即答したものの、
 
ニューヨークに住み始めて、ほんの1〜2ヶ月の当時の私には、
ミュージシャンの友達など、ひとりもいない。。
 
あちこちあたってみたけれど、
曲がオリジナルだったというのもあって、
「カラオケでやるのが一番なんじゃないの?」ということになり、

 

結局、1ステージ、40min分ものライブを、
たった1人で、カラオケで、やったわけです。
いやぁ〜〜・・・寂しかった。
 
けしてパフォーマンスがうまく行かなかったわけではありません。
友人がつくってくれたカラオケだって、すばらしい出来でした。
 
 
それでも、なんでも、
いつもバンドのみんながくれるエネルギー、
こちらがぐいぐいといけば、さらにぐいぐい押し返してくる、
みんなの、言霊ならぬ音霊がない。

 

この、エネルギーすっかすかの空間での、
自分自身が自家発電するエネルギーだけでのライブの経験が、
バンドというもののエネルギーの大切さを、しみじみ教えてくれたのでした。

 

 

人を動かすのはエネルギーです。
壁をつくらず、
「自分」というものに閉じこもらず、

 

自分がたくさんのエネルギーを発したいなら、
たくさんのエネルギーを受け取ること。

たくさんのエネルギーを受け取りたいなら、
たくさんのエネルギーを発すること。

 

それが、音楽のコミュニケーションというものです。

 

44624793_s

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

Message

メールアドレスが公開されることはありません。

  関連記事

勘違いか?わかってないのか?はたまた、なめてるのか?

ライブでもレコーディングでも、 いや、リハーサル、または実技の授業などであっても …

欲しい情報は、ありとあらゆるところにみつかる

「カラーバス効果」ということばをご存じでしょうか?   心理学用語で、 …

「曲を知らなければ演奏できない」

「曲を知らなければ演奏できない」   当たり前のことのようですが、 こ …

実力を磨く「三位一体」

学生時代に一緒にバンドをやっていた仲間と、 3〜4年ぶりに同窓会的なライブをする …

無限大に見える作業量を前に、ひるんだら負けだ!

洋楽のカバーを歌う、英語の苦手な学生たちに、 英語の発音指導をすることがあります …

ヴォーカリストこそ楽器を練習して「演奏の当たり前」を知る。

楽器をうまくプレイできるからといって、 歌もうまく歌えるかというと、もちろん、そ …

人は生涯に、何曲、覚えられるのか?

優れた作曲家、アレンジャー、プレイヤー、 そして、ヴォーカリストの多くが、 びっ …

リズム感が悪いと言われたら「発声を見直す」!

「リズムが悪い」と言われたら、 誰もが真っ先に試みるのは・・・ 1.ドンカマやド …

迷う余地なく行動できるよう自分を追い込む

あれは中学生くらいのことだったでしょうか?   新しい学年がはじまると …

ボイストレーナーなんかいらない自分になる。

『ダイジェスト版MTL voice&vocal オープンレッスン12』が …