大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

人は生涯に、何曲、覚えられるのか?

   

優れた作曲家、アレンジャー、プレイヤー、

そして、ヴォーカリストの多くが、
びっくりするほどたくさんの曲を覚えています。

人間ジュークボックスかと言うくらい、
気が向けば、次から次へと曲を演奏する人。

歌詞やアドリブまでしっかり覚えていて、
曲がかかると、どんどん一緒に歌える人。

中には,歌いながら演奏できる人も、たくさんいます。

 

では、どうやって、そんなにたくさんの曲を覚えたのでしょう?

今は昔。
インターネットはおろか、
市販の楽譜なども、ほとんどなかった時代。

演奏したいと思えば、耳コピでコードをたどり、
片っ端から覚えたり、自力で譜面を制作したりする以外ありませんでした。

聞き取れないような早弾きや、
録音が悪くて潰れた音のコードを、

カセットテープを何度も巻き戻しながら、

いや、もうちょっと前の時代の人たちは、
レコード針を何度も落としながら、

しつこく、しつこく、何度も聞いては、練習しました。

 

ヴォーカリストたちも同じ。
歌詞カードは邦盤にしかついておらず、
ついていても、
どうするとこんな風に聞こえるんだろうと思えるほどウソばかり。

本物と同じように歌いたければ、
ひたすら、耳コピするしかありません。

そうしてつくった、オリジナルの歌詞カードを見ながら、
歌えないフレーズを、出せない音を、何度も何度も練習する。

その度に、まだ歌詞が間違っている気がして、何度も聞き込む。

 

なんで歌えないんだ。

どうして、カッコよくならないんだ。

やっぱり英語は無理なのか。

所詮、自分はダメなのか。

どこが違うんだ。

いい音がしないのは、なぜなんだ。

 

そんな疑問の答えを、来る日も来る日も探し続ける。

練習は、自分との戦いです。

 

そうやってうんざりするほど時間をかけて、自力で手に入れた情報こそが、
時を経ても、自分のカラダの中にずうっととどまって、
音楽人生を支えてくれるのです。

ミュージシャンの、本当の意味での宝物です。

 

ちょっと探せば、なんかしら譜面が手に入る時代。

最初は読むのが一苦労だった譜面も、
練習を積めば、文字を読むように読めるようになります。

鍵盤や指板を確認することなく、
譜面から目を離さずに演奏をすることができるようにも、
もちろんなります。

しかし、譜面を見て、ぱっと演奏できるものは、脳に記憶されず、
素通りしてしまいます。

 

速さと正確さを競う、タイピストの技能検定のような演奏をいくら繰り返しても、
演奏に深みや厚みは出ないのです。

 

大切なのは、暗譜すること自体よりも、そのプロセス。

 

「とりあえず弾けるから、ま、いっか。」
「間違えないで歌えるから、もう大丈夫」

そんな、誰でもできる、ちょろい準備をしていたのでは、
一生うまくなりません。

 

上達には近道はない。

「カラダにしみこむまで練習する。」

この、王道しかないのです。

18330235 - london, canada - march 4, 2013. canadian jazz singer and pianist, diana krall performs at the budweiser gardens in london canada.

 

 - The プロフェッショナル, 「イマイチ」脱却!練習法&学習法

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