大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「私のカラダはギターには向いていないんだ・・・」

   

高校時代、ギターリストを目差していた頃のお話。

クラプトンに憧れて、黒いストラトを買い込み、

ジェフ・ベックのマネをして太めの弦を張り、

日々練習に励んでいたことがあります。

 

ところがね。
全然上達しません。

家で座って弾いているときは何とかなるのですが、

なんなら、あこがれのジミー・ペイジみたいに、
ギターをやたら低く持ちたいものですから、

実際リハーサルやライブ(と言っても文化祭とかですが)などで、
立って弾くと、

ミストーンは多いし、音は濁るし、
小さな手では弦が押さえられなくって、
結局猫背になるし・・・

まぁ全然思うように弾けないわけです。

 

それで、音楽雑誌で、かのギターリストたちを眺めては、

「どうせ私は背が低いから・・・」

「やっぱり私は手が小さいから・・・」

などなどと凹みまくり、

そのうちに、ギターをあきらめてしまったのでありました。

 

当時の私の結論。

「身長170センチ以上で、
指の第2関節から上の長さがギターのフレットの幅より長くない人は、
ギターリストになれない。」

 

 

ところがです。

それから何年かして、
ミュージシャン仲間に、

「素晴らしいギターリストには、
身長のずっと小さい人、
手のひらのうんと小さい人もたくさんいるでしょ?」と笑われました。

 

いわれるまで、そんなこと、考えてもみなかった自分。
勝手に決めつけて、そして逃げていたのです。

 

やがてギターリスト、ジェフ夫さんと結婚し、
家には、やたらたくさんギターがあるし、
好きなだけ教えてもらえるわけだから、
「これを機に、もう一回、ギターを弾いてみようっ!」と、思い立ちます。

 

ところがです。

家にあるギターたちは、どれもこれもやたらと重い。
おまけにネックが太くって、
腰の位置にギターを下げるどころか、
座って弾いても、ハイコードがちゃんと弾けない。

 

あ〜あ。

やっぱり私のカラダはギターには向いてないんだ。

本物のGibsonやFenderは、
あたしみたいなチビ手&短腕女には弾けないんだ。。。

と、またしてもあきらめかけたある日、

「だったら、キミのカラダに合うギターを買えばいいじゃない。。」
と、ジェフ夫さん。

やがて、私の手にもしっくりくるギターたちに出会い、
私の腕の長さでも、
充分カッコよく見せられるストラップの長さを見つけ出し、
いいギターはボディが軽くても、弦が細くても、
やっぱりいい音がするのだと学習することになります。

 

身長180センチで大きな手ののジェフ夫さんと、
160センチの私が同じ楽器を弾けば、
操作性に違いが出るのは当然です。

反対にマンドリンのような小さな楽器は、
ジェフ夫さんのような手の人には持てあますに違いありません。

 

さて。

楽器を習得したければ、
まずは自分のカラダときちんと向き合う。
 

たとえ身体条件がどうあれ、
どうしてもギターを弾きたければ、
弾けるようにフォームを工夫したり、
ギターを研究したりするもの。

 

 

ヴォーカリストも同じです。

ヴォーカルを上達したければ、
まず、自分の声ときちんと向き合う。
どの辺まで高い声が出て、どこからチェンジして、
下はどこまで使えて、
どの辺が一番安定感があって。。。

 
きちんと向き合えば、
やるべきことや、付き合い方のコツも見えてきます。

 

 

自分だけにしっくりくる、カラダ使いを見つけましょう。

3453283 - little girl playing with red electric guitar and singing

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