大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

とにかく歌う。毎日歌う。それを続ける。

   

生まれて初めて包丁を持つときは誰だって、
なんのことはない作業、
例えば、単に「キュウリを切る」という作業をするだけなのに、
手が震えたり、ドキドキたり、ものすごく時間がかかってしまったりするものです。

 

お母さんたちは、あんなにこともなげに、
見事に包丁をつかっているのに。

あぁ、自分は、こんなにも包丁をつかうことが向いていないんだ。

どうせ自分になんか、一生包丁を使いこなすことなんか無理なんだ。
 
あぁああああ。無理無理無理・・・・やめてやるぅ〜〜っ!!!
 

そんな風に思い込んで、
そのまま一生、包丁を手にしないなんて人、
一体どのくらいの割合でいるでしょう?

 

たいがいの人が、
毎日キッチンに立って、料理をするようになれば、
包丁なんて、あっという間につかえるようになることを知っています。
 
さらに10年、20年と、
家族のさまざまなニーズに答えながら、料理を続けていれば、
よほど料理が嫌い、食べることに興味がないという人以外は、
そこそこ名人、達人の域に入っていくもの。
 
その間、さまざまなレシピを試し、
さまざまな人のフィードバックを受け、
失敗を重ねたり、工夫を重ねたり。
 
程度の差こそあれ、
誰もが、ありとあらゆる試行錯誤を、
無意識のうちに繰り返していくわけです。
 

料理に使う時間を、毎日2時間程度と仮定すれば、
1年365日で年間730時間。
10年間で7300時間。
20年だと15000時間近く。
 

それだけの時間、打ち込めれば、
あんな、鉄の板を片手に持って、
透き通るような薄さで大根をむけるようにさえなる。

 

不思議なのは、
誰もがこれを当たり前と考えていること。
 
そして、これが当たり前なのは、
「お母さんの仕事だから」と思っていること。

 

さて。

 

包丁を「歌」や「楽器」に置き換えてみて下さい。

 

「さまざまな人のフィードバックを聴きながら」
「試行錯誤を重ねて」
毎日、歌っていれば、または弾いていれば、
「あっという間にうまくなる」。
 
1日2時間、1年365日。10年で7300時間。
 
それで、名人。達人の域です。

これだって当たり前のことなんです。
 
プロがうまいのは、それが仕事だから。
毎日、やらざるを得ないから。

 

大事なこと。

 

なにかをできるようになりたいと思ったら、
毎日やること。
そして続けること。

 

最初、へたくそなのは、誰だって当たり前です。
 
その時点でめげるから、終わっちゃうんです。

 

仕事だからとか、やらざるを得ないから、ということではなく、

とにかく歌う。毎日歌う。毎日弾く。
それを続ける。
 
それだけです。
 
10年とか、20年とかいう、気の遠くなりそうな時間も、
そうやって毎日何かに取り組んでいれば、
あっという間に過ぎ去るものですよ。

13412538 - girl holding a microphone, singing on dark background

コアでマニアックなネタを中心に不定期にお届けしているヴォイトレ・マガジン『声出していこうっ!me.』
購読はこちらから。

 

 

 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, 夢を叶える

  関連記事

91センチの挫折

自己啓発書の普及の名作といわれる『思考は現実化する』には、 金が採れるといわれる …

安定させる!~Singer’s Tips#30~

高いところに行くと、やたら声が大きくなる。 低いところに来ると、こもってしまう。 …

「売れないアーティスト」の回顧録

自分の心がおもむくままに、 なにかをクリエイトすることは、 私の癖のようなもので …

15分間の名声(15 minutes of fame)

「誰もが知っている有名人」は、 自分が有名であるという認識こそ、もちろんあるけれ …

ゆっくりやってもできないことは、速くやったらなおさらできない。

「速くて難しい曲」、どうやって練習していますか?   学生などの練習で …

「才能」ってなんだ?

若かりし頃から、 「恵まれた人」に対する強烈なコンプレックスを抱えて生きて来まし …

本気で目立ちたかったら「本質を磨く」。これしかない。

Clubhouseだの、Zoomだの、インスタだの・・・ やっと新たな名前とコン …

オーディション詐欺!?・・・久々にぶち切れました

まず、ハッキリと言っておきたい。   オーディションというのは、 事務 …

歌を学ぶ人の3つのステージ

私は歌を学ぶ人には、 3つのステージがあると考えています。 ひとつめは楽器として …

「能書きが多いヤツ」は上達しない。

「歌って何才までうまくなるんですか?」 実によくされる質問ですが、 こればかりは …