大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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人生を変える「完コピ」3つのステップ

   

学生時代、完コピに夢中になっていた頃、
自分自身が「コピーオタク」などというものだとは、
夢にも思っていませんでした。

 

というか、「コピー」ということば自体、
最初に聞いたのは、ずいぶん後になってから。

 

コピーをはじめた理由は、シンプルです。

 

「この人はホントにすごいから、マネしようったって無理」
「日本人には、こんな風に歌えない」
「こんな声は、この人にしか出せない」

 

自分が、「好き!」「かっこいい!」と、
ぞくぞくするほどあこがれる歌手たちのことを話すと、

友人たちはそんな風に絶賛し、
暗に「キミには無理」オーラを出してくるのです。

 

多感で自己嫌悪が強く、いじけやすい頃ですから、
そういわれる度に、

「キミには、無理・・・

無理 無理 無理 無理ぃ〜〜!」

 

と言うことばが反芻され、心折れそうになったものです。

 

そこで、極普通の女子なら、あっさりあきらめて、
楽しい学生生活を送れたのでしょうが、

残念ながら私はそこで、
はた、と立ち止まってしまいました。

 

「所詮、おんなじ人間のやっていることなのに、
ホントに無理なのかしら?」

 

友人たちの「無理」の根拠は、こんな感じです。

「黒人の声は日本人には出せない」
「チャカやアレサは生まれつき声に恵まれている」
「日本人の血にはグルーヴはない」
「英語はネイティブか帰国子女にしかカッコよく歌えない」
「声にディストーションかかるのは、特殊な才能だ」

・・・etc.etc…..

 

いや、ちょっと待って。

黒人とか、白人とか、日本人とか、外人とか・・・
一皮剥きゃあ、同じ人間でしょ?

 

体格がどうのこうの言うけど、
体格の立派な日本人だって、
虚弱で小さい黒人だっているでしょ?

生まれつき声が、というけど、
生まれたときは、みんなおぎゃあしか言ってないでしょ?

 

 

チャカやアレサが特別な人間だって言うことが、
自分が「特別」になれないって根拠にはならないんじゃない?

 

 

当時も今も、とんでもなくひねくれているので、
とにかく納得できませんでした。

 

完コピを始めたのは、
とことん、マネして、ホントに無理なのかどうか、
確認したかったからなのかもしれません。

 

さて。

ここで言う「完コピ」とは、
音源通り、同じ譜割で歌える、
というようなレベルのことではありません。
 

コピーには段階があります。

「完コピ」と言えるレベルに至らないと、
人生を変えるような「コピー体験」にはなりません。
 

第一段階は、まず、「音源通り、譜面通り歌う」。

メロディをしっかり把握する。
リズムのハマリを確認する。
音符の長さや、ちょっとしたフェイクや、
歌詞の発音を確認する。。。

ほぼ8割の人が、これを「完コピ」だと思っています。

しかし、これは、「音を取る」「メロを覚える」という段階です。

もちろん、音を取れるようになるまでも、
そこそこ修行はいりますが
音が取れて、はじめて、「完コピ」の入口です。

 

第二段階は、「ニュアンスやグルーヴをとらえる」。

「譜面通り歌える」という段階くらい、
面白くない歌はありません。

音の強弱、絶妙なタイミング、
ことばのスピード感、
ビブラート、ファルセット、ピッチ感、
発音や発声のニュアンス・・・

さまざまな音楽的な仕掛けをとらえるのです。
どんどん精度を上げるのです。

ここまで追い込んで、
はじめて「コピー」と言える段階になります。

追い込めば追い込むほど、
歌えていない事に気づき、
どんどん深みにはまっていく、
コピーの楽しさの(?)真骨頂でもあります。

 

そして第三段階「スピリッツと雰囲気をとらえる」。

 

自分がその歌に感動したのは、
別に、その歌手がめちゃくちゃうまかったからでも、
曲が難しかったからでもないはずです。

音楽の目的は人の心を動かすこと。

自分が心動かされたように、
その曲で、その歌で、人の心を動かすには。。。

一体、何がこの曲の魅力なんだろう。
その魅力を自分は出せているのだろうか。。
そんなことを盗み取る。

これぞ「完コピ」です。

 

 

いかがでしょうか?

コピーがすき過ぎて、語り出すと止まりません。

完コピは私の歌手としての基礎をつくってくれました。
そして、私の人生を変えてくれました。

 

ここらでいっちょ、やってみません?

12647442 - young man singing while listening to music

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 - 完コピ

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