大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「仕事ができない」と言われる人にはワケがある

   

どんな人が「仕事ができる人」と呼ばれるかは、
業界によって、少しずつ違います。

社交的で、軽妙な人がバリバリ活躍できる場や、
コミュニケーションが苦手でも、
一日PCの前に座っていられる人が活躍できる場。

ひとつの事だけ圧倒的に知っていれば重宝される現場もあれば、
なんでもマルチにこなす人でなければ仕事にならない現場もある。

 

しかし、どんな業界、現場においても、
「仕事のできない人」というのは、みな似ています。

仕事ができない原因は、
仕事そのものの能力というより、
仕事との向き合い方にあるからです。

 

元々、仕事の能力がない人はともかく、
人並みの、時に、人並み以上の仕事の技術や知識がありながら、
それでも「仕事ができない人」と言われてしまう人とは、

では、どんな人なのでしょう?

 

1.基本的な確認ができない人

どんな現場にもルールがあり、マナーがあります。

外部の人間や、新参者にとっては、そのほとんどが、
一から覚えなくてはいけない新しいこと。

しかし、その現場で常識となっていることを、
現場の人たちはいちいち説明してくれないものです。
 
なぜなら、自分たちにとっては、
それらすべてがすでに常識だからです。

 

わからないことは恥ずかしいことではありません。

大切なことは、どんな小さな疑問も、
億劫がらず、恥ずかしがらず、きちんと確認することです。

怠惰な人、コミュニケーションが苦手な人、
そして、プライドばかりが高い人がやりがちなのは、

「たぶん●●だよね」と決めつけること。
「きっと大丈夫だよ」とたかをくくること。

そんな人ほど、間違いを指摘されると、
「自分のせいじゃない」、「聞いてない」と、
開き直るものです。
 
どんな小さな疑問でもきちんと確認する。
鉄則です。

 

2.想像力が足りない人

「想定外の事態」というのは、
仕事の現場では、本来、あってはならないことです。
 
ありとあらゆる状況をシミュレーションして、
準備しておくこと。
万一の場合の対応策を考えておくこと。
 
国家レベルの大事故に限らず、
これは、どんなに小さな仕事にも言えることです。

 

以前、友人のお弟子さんで、ローディーとして
バンドのリハーサル、ツアーに同行していた若者がいました。
 
とにかく素晴らしく想像力の働く子で、
機材のセッティングや、まとめ方が効率的だっただけでなく、
あらゆる場面を想定して、バンドのライブで必要になりそうな、
さまざまなものを常に携帯していました。
 
ガムテープ、ハサミや爪切りなどは、
まぁ、当然の部類でしょうが、
裁縫用具から、セロテープ、カッター、
 
果ては、私の口紅が落ちないようにと、
ペットボトルに刺すストローから、
そのペットボトルのふたに穴を開けるための目打ちまで持っていて、
まさに、ひっくり返りそうになったことがあります。
 
こういう子を仕事のできる子というのだと、
メンバーに絶賛されていたものです。
 

今日の現場はどんな現場なのか。
そこで自分はどんな要求をされるのか。
要求をされないとしたら、自分にはどんな貢献ができるのか。

集めようと思えば情報はいくらでもあるはずです。
想像力を働かせれば、ありとあらゆる状況が想定されるはずです。

ベテランになるほど、
「現場に行ってから、探ればいいや。」
と、いわゆる「現場処理」に慣れていきます。

もちろん、現場処理でなんとかなるのは、
腕や経験があるからこそですが、

現場処理で、場当たり的な仕事ばかりをするようになれば、
それ以上、どこへも行けません。

想像力。
そして、準備。

私自身の経験則として、
どれだけ想像力を働かせて準備をしても、
それが無駄だったと感じたことは一度もありません。

準備のおかげで、先方の期待以上の仕事ができる。
それこそが、仕事に呼んでもらった人に対する誠意というものです。

 

 

3.話をきちんと聞けない人

「最後にこんな基本的なこと?」と思うかもしれませんが、

話をきちんと聞けない人というのは、
大学生、若者に限らず、
大人にも、びっくりするほどたくさんいます。

相手の話が半分も終わっていないのに、
相手の言いたいことのすべてがわかったように、
口をはさんだり、相づちを打ったりする人。

「そんなこと、もちろんわかっていますよ」
と、したり顔でとんちんかんな受け答えをしてくる人。

 

相手の話を聞いているようにみせかけて、
相手が話している間中、
自分が何を言うかを必死に考えている人。。。。

 

たいがいが自分の頭の中で完結しているか、
自分に自信がなさすぎて、
人の意見や想いを受け入れる余地のない人ですが、
 
人は、自分の話をきちんと聞いてくれない人、
会話のキャッチボールができない人と、
仕事をしたいとは思わないものです。
 
誰だって、自分の話を聞いて欲しい。
自分の話を胸のど真ん中で受け止めて、
それをふくらまして投げ返して欲しい。
 
コミュニケーションの基本は、
「話す」ではなく、「聞く」なのです。

 

 

いかがでしょう?

 

当たり前のことばかりですが、

おとなになると、
当たり前のことができないからと、
教えたり、諭したり、叱ったりしてくれるような、
奇特な人に出会えることはまずありません。

 

「あいつはダメだね」

それで、おしまいです。

 

なにかがうまく行かないと感じたら、
一度、自分の胸に手を当ててみる。
ちょっとだけ、自分を変える努力からはじめてみる。

 

おとなになるほど、心がけたい、「働く人」の常識です。

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