大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「やる気はあるのにできない症候群」の処方箋

   

「練習しなくちゃいけないってわかってるでしょ?
やらないと、できなかった自分に落ち込む、
はじめれば、楽しくなって、どんどんやれて、
しかもそれなりの結果が出せて、自信がつく。
・・・それなのに、一体全体なんで練習できないわけ〜?」

一定の割合で存在する、
「やる気はあるのにできない症候群」に悩む若者たちに、
繰り返しするお説教のひとつです。

 

かくいう私にも、
「やる気はあるのにできないこと」がいくつかあります。

まぁ、たいがいのことは、
時間の余裕がないからね、とか、
疲れているもんね、などと自分自身に言い逃れをして、

結局、あきらめてしまったり、
他の人にまかせてしまったり・・・

まぁ、生徒たちとおなじなわけですが、

「エクササイズ」だけは、言い逃れしていてもはじまりません。

 

 

ヴォーカリストですから、
筋肉の落ちた、衰えたカラダでは、
いい声は出せませんし、
自信を持って人前に立ってパフォーマンスすることもできません。

なにがなんでも、
最低限のエクササイズはしなくちゃダメなわけです。

 

そうそう・・・

いつも、生徒たちに口が酸っぱくなるほど言っているように、
「しなくちゃダメ」だと感じることをやるのは苦痛だし、
やりたくないことを無理にがんばるのは時間の無駄。
 

仕事の疲れをスポーツで癒す、なんて運動愛好家や、
仕事の合間に、ちょっとジムに行ってきます、なんて器用な人たちを、
どれだけうらやんでも、今さらしかたありません。
 

では、どうするか・・・?
 

長年の試行錯誤から、
「やる気はあるのにできない症候群」の処方箋は、
「やりたいを演出する」に尽きることを発見しました。

つまり、エクササイズしたくなる。
運動をやりたくなる、自分を演出するしかありません。

今日は、カラダを動かすことがそれほど好きなわけでもない私が、
長年、なんとかそれなりに運動を続けられた方法を
「やる気はあるのにできない症候群の処方箋」と題して、
お届けしてみようと思います。

 

1.結果よりも、プロセスにフォーカスする。

スタイルバツグンの人のポスターを眺めたり、
運動選手のカラダを見たりするのがいいと言う説もあるようですが、
私の場合、自分との違いに落ち込むだけで、
余計にやる気をなくしました。

それよりもエクササイズの方法やメカニズムそのものに興味を持ち、
エクササイズにカッコよく取り組んでいる人などをモデルに、
その姿を追いかける方が、私には向いていました。
 

練習もおなじです。
 
華やかなステージで活躍する人たちが、
実際にはどうやって練習やリハーサルに取り組んで来たのか、
そんなことに興味を持って、彼らの「努力」を追いかけてみる。
 
どんなことに挫折して、どんなことに落ち込んで、
どうやって、がんばって来たのか。。。

そんなことを知るだけで、ぐっとやる気が出るかもしれません。

2.新鮮な気持ちで取り組める工夫をする。

例えば、場所を変える。

ひとつのジムにこだわらず、
新しくできたジムに行ってみる、
ちょっとお洒落なヨガスタジオ、ダンススタジオに入ってみる、
自宅エクササイズを試すなどなど。
場所が変わっただけで、通うことそのものが楽しくなる場合もありますし、
なにより新鮮な気持ちで取り組めます。
 

例えば、運動の種類を変える、
水泳、エアロビクス、ボクササイズ、マシンジム、ジョギング、ヨガ、ゴルフ、ダンス・・・などなど、
専門的なスポーツのチカラをつけるのが目的ではありませんから、
どんどん挑戦してみるのもありです。
 
目的はなんと言っても、コンスタントにカラダを動かすこと。
飽きないしくみというのは、以外に簡単に思いつくはずです。
 
練習もおなじです。
 

例えば、練習スタジオやカラオケボックスを変えてみる。
例えば、練習曲や練習方法を変えてみる。
例えば、楽器を持ち替えて練習してみる・・などなど、
新鮮な感覚を持ち続けられる工夫をしてみましょう。

 

3.お金をかける。

「使ったお金の元は取りたい!」という気持ちは、
誰にでもあるものです。
 

ジムの入会金や会費を払うのももちろんですが、
ウェアやスポーツギアを買う、
DVDなどを買う、
ロードレースなどに申し込む、などなど、
ちょっとした投資が、
「元を取ろう!」というエネルギーを生んでくれます。
 

スタジオを借りて練習してみる。
スクールなどに入ってみる。
楽器や、録音機器を購入する。。。などなどの投資は、
多くの場合、いい結果を生むものです。

4.人を巻き込む。

 

友達を、ロードレースに誘えば、
お互い、足手まといになりたくありませんから、
一所懸命練習することになります。

ゴルフや登山などに人を誘っても、
同じように、ある程度がんばらなくちゃと思うものです。

強制的にエクササイズさせてくれる、
プライベートトレーナーなどもいます。

人を巻き込めば、その人のエネルギーを借りることができるのです。

練習もおなじ。
 

例えば、ピアノやギターの人につきあってもらって練習をする、
2〜3人で一緒にハーモニーなどの練習をしてみる、
とりあえず発表会やライブを決めてしまうなどなど・・・
工夫次第で、どんどん人を巻き込むことが可能なはずです。

 

5.続けられるしくみをつくる。

私のエクササイズの場合、
ずばり「続けないこと」が続けるコツでした。
 

なんか、続けられなくなってきたなぁ・・・と感じたら、
新しいトレーニングや、ジムを探す。
その時、その時に、自分がワクワクするものを追いかけることで、
常に、なんかしら、トレーニングをしていると言う状態をつくってきました。

練習もおなじでしょう。

毎日おなじCDを最初から最後まで歌う、ということを、
1年続けられる人もいれば、
おなじ曲を毎日歌うなんて無理、という人もいる。

ピアノを弾きながらの発声練習が、
楽しくてしょうがないという人もいるし、
曲しか練習したくないという人もいる。

まずは自分の適性を見極めること。

 

自分なりの、継続方法を見つけ出すことです。

 

 

いかがでしょう?

 

とにもかくにも、やりたくないことは、
どれだけがんばってもいい結果になりません。
 

まずは自分の「やりたい」を引き出すしくみを整える。

そこからスタートです。

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