「無理」かどうかを決めるなら、それはあたしだ。

「独立して会社をやりたいんです」

当時、お世話になっていた事務所の社長にそう言うと、
「なに考えてるの?音楽の世界しかしらないでしょ?
経理のなんたるかもわからないくせに、無理に決まってるじゃない?」
と、嘲笑された。
2007年の9月のことだ。

ボーカリストとして、英作詞家として、業界で20数年。
ボイストレーナーを始めて、9年目のことだった。

理由はいっぱいあったけど、最後に私の背中を押してくれたのは、
この、社長の、「無理に決まってるじゃない?」だった。
一体何度この、「無理」ということばに奮いたたされて来たろう?

そんな年から音楽始めて、音大に行くなんて無理。
その程度の歌やルックスで、歌のプロになるなんて無理。
帰国子女でもないのに、英語で歌詞書くなんて無理。
無理。無理。無理。。。

もちろん、ヘタレなんで、そうやって言われるたびに悔しくて、いっぱい泣いた。
それでも、心の中で中指を立て、
反芻されることばに、「サンキューベリーマッチ!」と悪態をついた。

「無理」かどうか、決めるなら、それはあたしだ。

やってみもしないことに、恐怖心から結論を出してしまうような、
臆病モノにだけはなるまい。

たくさんの人たちにいただいた「無理」ということばのおかげで、
あたしは、プロとしてちゃんと食べられるようになったし、
英語の歌詞でたくさんお仕事もさせてもらった。
さらには、驚くべき事に、音大で教える人になってしまった。

社長と話した2日後。
清水の舞台から飛び降りる覚悟で、いきなり起業塾に申し込んだ。
ついでに、簿記3級の通信講座にも申し込んだ。

深く考えた末の行動だったのか、今となってはもうわからない。
単に、売られたケンカは買ってやるという、ロック魂がそうさせたのかもしれない。

起業塾初日には、講師の話す単語がひとこともわからなくて、
家に帰り着くなり、玄関先で号泣した。

送られて来た簿記のテキストを見ただけで、数学恐怖症だった頃が蘇って、
蕁麻疹が出そうになった。

傍線を引き、ページの角を折りながら読んだ最初のビジネス書は、
最初から最後まで傍線だらけで、全ページの角が折られた。

正直、
「あたし、なにやってるんだろう・・・」と無力感に襲われたこともしばしば。
音楽一所懸命やってりゃあいいじゃない?と。。。

ただ、残念ながら、「無理」という答えに行き着けなくて、
毎朝2時間早く起きて、簿記の勉強をし、
amazonから毎日のように届く本を、1日1〜2冊のペースで読み続けた。

結局ね、それが必要なことだったのかどうかは、
今となってはわからないわけです。
簿記の知識が必要な場面なんて、皆無に等しいし、
マネージメントだの、マーケティングだの、ことばをどんなに学んだって、
実際の仕事にどれだけ生かせているのか、自信もない。

それでも、そんな日々が、
たくさんの友との出会いをくれた。
未知の世界に飛び込んで、小さなことだけど、ひとつひとつやり遂げたことで、
自分に対して、ある種のリスペクトのような自信を感じることができた。

2008年8月8日。起業して5年。
私をささえてくれたすべての人と、
私に「無理」と言い放ってくれたすべての人に、心からの感謝を送ります。

そして、悔しいとか、できないとか、泣いてばかりの私を、
「富士に登るも一歩からでしょ?」「わからないから勉強するんでしょ?」と
元気づけてくれたHUSと、ぺろぺろ舐めては慰めてくれたデイジーに!

*オフィシャルなご挨拶は今日のB面ブログにてさせていただいてます。
是非そちらも!

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