肩書きが人をつくるんじゃない。 人が、自分の肩書きをつくるんだ。
初めて自分の肩書きというのを意識したのは、
サポートコーラスとしてツアーのお仕事をするようになった翌年。
仲間に教わるままに、生まれて初めて、確定申告をした時のことです。
職業を書かなくてはいけない欄があって、はて?となりました。
“ミュージシャン”ではいかにも軽い。
まだバイトもしているとはいえ、”フリーター”ってのはさすがに違う。
音楽で仕事をしているわけだから、やっぱ”音楽家”でいいのかな?
以来、業界でそこそこお仕事をさせてもらうようになっても、毎年のように、「で、職業は音楽家ってことでいいのよね?」と自ら指さし確認をしていました。
当時のミュージシャンは、顔と名前が名刺代わり。
名刺なんて持つのはダサイとされてました。
SNSなんてものもない時代です。
一流の腕を持つ人間は、スタジオに入ってきた瞬間にわかる。
プロフィールや肩書きで盛らなくても、醸し出すオーラがすべてを語る。
そんな価値観がありました。
「どこで誰が見ているかわからない」
「いつどこに呼ばれても恥ずかしくないように」
と計算してファッションやアチチュードを身につける人もいれば、
厳しい現場でお仕事の経験を積むうちに、洗練されていく人もいて。
プロミュージシャンってのは、”なるもの”じゃなくて、
気付いたら”なっているもの”なんだよな。
そんな風に思っていました。
著者を目指して、土井英司氏の主宰する『10年愛されるベストセラー作家養成コース』に参加したときのこと。
本講座の前に参加した『プロフィール講座』で、「まずは徹底的に、キャリアの棚卸しをするように」と指示されました。
すでにボイストレーナーとして起業して、著名な芸能人のボイトレもさせてもらっていた私。
“ボイス&ボーカル・トレーナー”という肩書きは、”音楽家”というフワッとした肩書きよりも、はるかに説得力があると思っていました。
当時、トレーナーとして自己紹介をする際、わざわざ「スタジオで仕事をしている」とか、「ロックバンドでメジャーデビューした」などと語ることは、意識的に避けていました。
「ボイトレのスタンダードをつくる」というミッションを受け取って、高い理想を掲げ、日々レッスンに取り組んでいた私。
「音楽で食えないからトレーナーやってる」と思われたくないという、プライドもありました。
今さら「私ってすごいのよ!」などと、音楽家としてのキャリアをひけらかす必要もない。そんな自負もあったでしょう。
ところが、です。
土井氏は、編集者の方たちを招いた最終プレゼンテーションの席で、
いきなり私に、「MISUMIさん。とりあえず歌っちゃってください」と言うのです。
は?
歌うの?
ここで?
講座では、徹底した「ブランド人教育」をたたき込まれました。
一流のブランド人と認められたくて、
思いきり背伸びして服装や髪型や持ち物をそろえて挑んだプレゼンです。
しかし、土井氏の戦略は圧倒的でした。
そもそも、出版プレゼンで、いきなり歌い出す人なんかいないわけです。
「500曲以上のレコーディングに参加した」とか、
「有名人のボイトレを担当した」などというプロフィールを読み上げるより、
一声出すのが一番説得力がある。
編集者さんたちの表情が、一瞬で変わりました。
その視線が、ぐっと私に注がれるのを感じました。
そりゃあそうです。
“プレゼン”は、その時が人生で3回目。
一方、人前で歌うことは、誰よりもやってきました。
自信が違います。
このプレゼンがご縁で、一般書の著者としてデビューすることになり、
以来、長きにわたり、
“ボイストレーナー””講師””著者””ボーカリスト”などなどと、
複数の肩書きでお仕事をしてきました。
A面、B面とブログを分けて書いていた時期もあります。
そうして肩書きの線引きをすることで、服装や振る舞い方のスイッチを切り替えてきたのだと思います。
しかし、です。
実はこの数年、やっと、自分のぜんぶのキャリアがひとつの流れの中にまとまってきたと感じるんです。
職業=大槻水澄(MISUMI)というやつです。
肩書きのひとつひとつが、自分にしっくりする形で最適化されたのか。
ことさら、「らしく」振る舞う必要も、
わざわざ「こういう仕事をしています」と声高に叫ぶ必要もなくなりました。
いわゆるライブ活動中心のシンプルな音楽活動にもどったこともあって、
フリーター時代のように、さらっと、「ボーカリストです」と言い切れるというのもあります。
ついに、職業:MISUMIに落ち着きました。
これ、終点だよね?
離婚でもしない限り。(今のところ予定はないです)
ワカナゴ→イナダ→ワラサ→ブリ
ってヤツでいうところの、ブリに、やっとたどり着いたってことでしょうか。
この先は、”刺身”くらいしかないもんね。
今しばらく、職業MISUMIを楽しんで行きたいと思います。
あなたの「肩書き」はなんですか?

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