最近、「コーラスさん時代」のことをよく思い出す。
最近でこそ、「サポートミュージシャン」なんて小洒落た名前で呼ばれてるけど、
ひと昔前は「バックバンド」「バックコーラス」なんて、
だ〜っさい呼ばれようをしたもの。
現場では「バンドさん」「コーラスさん」。
ガラの悪いところだと、
「ドンバー」「ラスコー」と業界用語で呼ばれることもしばしば。
「士農工商穢多非人バンドマン」などと、自虐的に言うのが流行ったこともあった。
コンサートを盛り上げる大事なお仕事なのに、ひどい話だ。
では、実際はどうかというと、ツアーの間中、
同行スタッフにも、現地スタッフの方たちにも、
もれなく大切に扱っていただきました。
現地までのチケットや行動表は専任のスタッフの方が徹底的に管理してくれ、
駅や空港に着けば、現地スタッフの方がお出迎え。
いきなり荷物をささっと持ってくれたかと思うと、タクシー乗り場まで先導してくれる。
ツアー中はどこへ行くのも、とにかくタクシー移動。
例え、徒歩3分の会場でも、歩いたことは一度もない。
会場に着けば、またダダダとスタッフさんが駆けつけてくれて、
荷物を持って楽屋に案内してくれる。
楽屋にはお菓子やフルーツがてんこ盛りに用意してあったもんです。
(これでいい気になるから、ツアー中はあっという間に太る)
サウンドチェック、リハーサル、本番と、
スタッフの方がちゃ〜んと楽屋までお出迎えしてくれて、
丁寧に足元を照らしてくれて、
もちろん、タオルもおしぼりもステージドリンクも完璧。
ステージが終わると、今度はホテルまでタクシー移動。
荷物を置いたら、ロビーでスタッフやメンバーと落ち合って、それから打ち上げへ。
当時は景気がよかったんでしょう。
とにかくどこに行っても大盤振る舞いで、贅沢な食事をたくさんいただいた。
ときには、二次会、三次会まであって、
VIPルームみたいなところに出入りさせてもらったことも一度や二度ではない。
その上、「今日の食事代」なんて、別にお小遣いまでいただいた。
まさに至れり尽くせり。
おまけにアーティストのファンの子たちからは、
「コーラスさ〜ん」なんて呼ばれて、ちやほやされる。
プレゼントまでもらうこともある。
20代そこそこでこんな扱いされちゃうから、勘違いしちゃうのも無理もないわね。
これで勘違いしちゃって、終わっちゃったミュージシャンもいっぱいいる。
私も結構いい気になる口だから、
現場でいじめられてなかったら、適性もないのに無理にお仕事続けようとして、
あっという間にお仕事なくなって、
ヒーヒー言うことになってたかもしれない。
日本が昔ほど景気よくなくなったとは言え、
今でもきっと、お仕事の大枠は変わっていないのだろう。
こんなことばっかり書いていると、
楽で楽しそうな仕事だなぁ、と思われがちだけど、それは大間違い。
確かに楽しいこともたくさんあるけど、
ツアーミュージシャンは確かな実力とルックスはもちろん、
体力、集中力、そして社交性をも試される厳しいお仕事。
収入は不安定だし、次のツアーも必ず呼ばれるという保証はどこにもない。
病気やケガでステージが続けられなくなる不安はいつだってある。
そんな大変な世界の、しかも一線で、何十年も活躍し続けられるということは、
本当に素晴らしいことなのだ。
現場でがんばる若者ミュージシャンたちにエール!
一線で活躍を続ける、先輩同輩後輩ミュージシャンたちにリスペクト!