大槻水澄(MISUMI)ブログ 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

イケてないロック・ヴォーカルは、なぜイケてないのか?

   

イケてないロック・ヴォーカルって、一体全体どこがイケてないんでしょう?

 

かつては、とにかく自分の歌を磨くこと、
仕事の精度を上げることに必死に取り組むのみでしたが、

歌の指導を仕事にして、
たくさんのイケてる歌から、そうでもない歌を聞き、
彼らに何が起きているのか、

どうしたらそれはよくなるのか、

今、どんなアドバイスをすべきなのか、

常に、冷静に、客観的に、具体的に思考、指導するよう心がけてきたおかげか、

 

イケてない歌、特にロックヴォーカルのイケてない要素が、
手に取るようにわかるようになりました。

 

 

今日は、『イケてないロック・ヴォーカルは、なぜイケてないのか?』と題して、
思いつくまま、ランダムに、イケてない要素を上げていきたいと思います。

 

1.ロックの声を、いわゆる「ガラガラ声」と勘違いしている。

優れたロックヴォーカリストのハスキーな声は、
きちんと鳴っている声にディトーション成分をプラスしたものであって、
「酒とたばこで潰して」声帯自体がきちんと機能しなくなった、
いわゆる「ガラガラ声」とは全然違うものです。
 

ロック声になるのは、
声帯に無理な負担をかけてノドを締め付けているのではなく、
 
声帯をきちんと鳴らしながら、同時に仮声帯を鳴らして、
ディストーション成分を足しているからなのです。
 

ポリープや結節などができる、いわゆる「潰した声帯」では、
ロックヴォーカルの肝である高い音は出ません。

逆に言えば、「ロック声は声帯に悪い」ということもない。

つまり、正しい発声は、どんな音楽でも共通であるということです。

 

2.ピッチが悪い。

特に70年代頃のロックの曲にはブルーノートのような、
ピアノの鍵盤にない音がたくさん登場します。

 

なので、フラット気味に歌うことが
「ロックっぽい」、「ブルースっぽい」と勘違いしてしまうヴォーカリストが、
うんざりするほどたくさんいます。

 

ピッチの悪い歌は、チューニングが合っていないギターと同じ。
全体のサウンドの中で、気持ちの悪い周波数を出し続け、
すべての演奏を台無しにします。
 

いわゆるブルーノートのような曖昧な音は、
ギターのチョーキングなどと同様、
最終的に落ち着く音が気持ちいいから成立するのです。
 

ずぅ〜っとブルーノート、ずぅ〜っとチョーキングは、「単なる音痴」。

そして、ブルースやロックを歌う人で、
そういう人は、うんざりするほどたくさんいます。

 

3.リズムが悪い。

ロックは、リズム。そしてグルーブです。

ヴォーカリストが絶対的に留意すべきなのは・・・

子音と母音の音のおきどころ。
ことばでパキンと、他の楽器と同じビートをたたき出せる訓練が必要です。

さらに、音の切りが長すぎればスピード感が出ない。
短かすぎれば、間が抜ける。

グルーブのとらえ方が、前過ぎれば、レイドバックした気持ちよさは出ませんし、
後ろ過ぎれば、緊張感が出ない。

ピッチは悪くないのに歌がパッとしないのは、たいがい、リズムのせいです。

 

4.英語の発音が悪い。

洋楽のカバーをやるとき、
同じ歌のレベルなら、圧倒的に英語の発音が良い方が音楽的に聞こえます。

そう言うと、みんな、「R」や「L」だの、「TH」だのと、
子音ばかりを練習しがちですが、

日本人の発音で猛烈に気になるのは、実は「母音」なのです。

 

日本語には母音は5つしかない。

英語には(説にもよりますが)20個ほどの母音があると言われています。

 

発音というのは、「周波数」。
つまり、「音色」なのです。

どんなに表情豊かに歌っているつもりでも、
英語を英語らしく発音できているかどうかで、
歌そのものの色彩感覚は圧倒的に変わってきます。

 

 

5.パフォーマンスがイケてない。

歌は多少いろいろあっても、
ステージプレゼンスがあるヴォーカリストは、
そんなことすべてを吹き飛ばすような説得力があるもの。

ステージに出てきた瞬間に人を惹き付ける。

歌に徹底的なパッションが宿っている。

歌っている間中、目が離せない。。。

 

なにより、ロックは、ステージプレゼンスなのです。

歌詞カードや譜面ガン見のパフォーマーに、
カッコいい、ロッカーは1人もいません。

立ち方、目線、衣装、動き・・・

どうでもいい要素なんて、ただのひとつもない。

それが「ロック」だからです。

 

 

いかがでしょうか?

題材を「ロック」にしたので、今日はひときわ、熱く語ってしまいましたが、
実は、上記のすべては、どんな音楽にも言えること。
 

ぜひ一度、点検してみていただきたいことです。

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 - イケてないシリーズ

Comment

  1. さちこ より:

    クォーターチョーキングの音はピアノの鍵盤では出せない音ですが、ブルーノートの音(♭5)はピアノの鍵盤で出せる音だと思うのですが。。
    私の知識が間違っていたらすいません。。
    詳しく教えて頂ければ幸いです。

  2. otsukimisumi より:

    黒人音楽がルーツにあるロックやブルースなどの、「ブルーノート」と呼ばれる音は、ピアノの鍵盤や譜面などで、きっちりと定義できないものと解釈しています。
    たとえば、実際に「フラット」を歌うのではなく、「フラット気味に」歌うというようなことですね。
    詳しくはネットなどを参考にしてくださいね。

  3. さちこ より:

    ご回答ありがとうございます。
    ネットで調べてみると、
    ブルー・ノート[blue note]とは
    「ブルースの音階上の特徴となっている音。3度と7度と5度を半音ずつ下げたもの」
    とあります。
    そして
    「ブルー・ノート・スケール(ブルース・スケール、blue note scale)は、ジャズやブルースなどで使われる、メジャー・スケール(長音階)に、その第3音、第5音、第7音を半音下げた音を加えて用いるもの、もしくはマイナー・ペンタトニック・スケールに♭5の音を加えたものである。特に、♭5の音をブルー・ノートと呼ぶ。」
    とあり、ギター教室でもそのように教わっていたので、フラット気味に唄うという解釈は初めて知りました。
    ひとつ勉強させて頂きありがとうございました。

  4. ビート より:

    ブルー・ノート・スケール(ブルース・スケール、blue note scale)は、ジャズやブルースなどで使われる、メジャー・スケール(長音階)に、その第3音、第5音、第7音を半音下げた音を加えて用いるもの、もしくはマイナー・ペンタトニック・スケールに♭5の音を加えたものである。特に、♭5の音をブルー・ノートと呼ぶ。近代対斜の一種でもある。
    と、ウィキぺディアではなっており、その他のサイトでも、ググった限りでは、「ブルーノートとは、ピアノの鍵盤にない音」を定義する記述は、発見出てきませんでした。手元のジャズ理論を記した本も同様です。
    よらしかったら、「ブルーノートはピアノの鍵盤にない音」を裏付ける出典を教えてくださると後学のためになるのでありがたいです。

  5. otsukimisumi より:

    >さちこさん
    >ビートさん

    2月16日付けブログにてご質問にお答えしています。
    お探しの答えとは違うかもしれませんが、ご参考になれば幸いです。
    http://misumiotsuki.com/?p=3605

  6. ベルト より:

    これを読ましていただいて、「ほとんど自分に当てはまってる…」と思いへこみました。
    では、どうすればNIRVANAのkurt cobainのように、soundgardenのchris cornellのようにディストーションを聞かしてピッチも正確に歌うことができるんでしょうか?
    正直今挙げたアーティストの歌をピッチだけ正確に歌っても全然カッコよく聞こえません、実際少し自分なりのディストーション(ガラガラ声)を利かして歌った方がピッチはズレやすいですがまだカッコよく聞こえるんです。

  7. TAKA より:

    発音の指摘は貴重ですね。確かに、英語母音の発音ができない人・・・・というより、できる人は圧倒的に少ないですね。店でプロとして歌っている人でも、正しく発音できている人は記憶にありません。歌詞によく出てくる「love」なんか、残念なことが多いですね。

    もっと言えば、日本語とは発声なんかも違いますが、きちんとそれらを習える場はないに等しい???

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