大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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条件が不利な人ほど、熱意がある

      2015/08/10

優秀なボイストレーナーのレッスンに通い、
思う存分自主練習を積み、めきめき上達する。

プロを目差す人なら、誰もが望む状況です。
そんな状況に身を置くために、最も有利なのはどんな人でしょう?
筆頭は、なんと言っても、理解ある、
そして経済的に余裕のある親御さんのいる学生です。

親御さんが音楽関係者や、業界関係者なら言うことありません。

業界内の情報網で、優秀なトレーナーを探すことも可能でしょうし、
なかなか一般の人がレッスンを受けられないような人にも、
コネで会うことができたりします。

業界関係の方でなくても、
親御さんが音楽に理解のある方や教育熱心な方なら、
ありとあらゆる手段をつかって情報収集を手伝ってくれるかもしれません。

または、学生たちが集めた情報のクオリティをチェックし、
その取捨選択を手伝ってくれたり、
金銭面でのサポートや、送り迎えなど肉体的なサポートなどなど、
さまざまな形で、可能な限り応援してくれます。

 

次に有利なのは、事務所が目をかけてサポートしてくれるアーティストたちです。

情報やコネクションを持っているのは間違いありませんし、
余裕のある事務所であれば、レッスン費用も負担してくれます。

アーティストのポテンシャル次第では、
地方からの交通費や、東京での生活費を負担してくれるところもありますし、

事務所のスタジオを自主トレに使い放題という、うらやましいところもあります。

 

スケジュールを切るのも、移動時間を計るのも
マネージャーさんがやってくれるような事務所なら、
練習や制作以外のことに心煩わされることなく、思う存分集中できます。

 

さらに、この、上記2パターン、
つまり学生、そして、事務所所属のアーティストたちでも、
その条件は、都心に住んでいるほどいいと、言わざるを得ません。

親御さんや事務所がどれだけ熱心でも、
学生であるこどもを、週末のたびに東京に送り出すのは、
いろいろな意味で難しいもの。

そうなると、どれだけ他の条件が整っていても、
レッスンに通う回数が制限されてしまうからです。

 

さて、今日のお話はここからです。

 

どんなにレッスンに通ったり、練習したりという環境や状況に恵まれても、
本人が熱心に取り組めなければ、結果など出るわけもありません。

そして、ショッキングなお話ですが、

こうした環境や状況の有利さと、本人の熱心さや上達度合いは、
なんと!反比例する傾向にあるのです。

 

あぁ、親御さん、事務所のみなさん、ごめんなさい。

でも、本当なんです。
実は、最もレッスンや練習に熱心なのは、

時間もない、応援してくれる人もいない社会人。

親にも友達にも打ち明けられず、
ただひたすら、一所懸命バイトしながらレッスンに通う学生。
遠方に住みながらも、それでも特定の先生に習いたい、
学校に行きたいと、その方法を模索する若者たち。
そんな人たちです。

誰にも応援されなくても、やり通そうという意志。

今に見てろよ、という想い。

時間がないほど、お金がないほど、
やりくりして時間やお金をつくり出そうという熱意。

練習する場所や方法、時間を見つけ出そうという工夫。

月一度しかレッスンに行かれないなら、
1度きりのレッスンを、何が何でもものにしよう、
次のレッスンまでに、完璧に準備しよう、という意地。

 

そんなパワーを、
温室育ちの学生たちは、なかなか持てません。

若いうちから、ちやほやされてしまう、
ぽっと出の新人さんたちや、

なんとなく曲を書いていたら、気に入られちゃった、という
シンデレラ系のシンガーソングライターの卵たちも同じです。

 

環境よりも、状況よりも、熱意が自分を成長させる。

さまざまなサポートを与えるのは、
本人の中に、そんな本物の熱意が目覚めてからが良さそうです。

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 - 「イマイチ」脱却!練習法&学習法, イケてないシリーズ

Comment

  1. 通りすがり より:

    言わざる終えません。

    言わざるを得ません。

    ね。

  2. otsukimisumi より:

    ご指摘ありがとうございます。
    毎回、長文を書いておりますので、誤字脱字は多々あるかと思います。
    気づいたらその都度訂正いたしておりますので、大目に見ていただけますと幸いです。

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