正しい「シャウト声」の出し方!
高校時代の自分のバンドのライブ音源という、
恐ろしいものが存在しています。
少し前に、おそるおそるそのテープを聴きました。
カセットテープにおさめられた、
高校時代の演奏は、
まぁ、微笑ましく・・・
よくもこれで、
ギターリストになろうなんて思っていたわいと、
思わず失笑してしまうようなカワイさです。
ひときわカワイイのは、私の声。
まぁまぁしっかりと声は出しているものの、
ディストーション成分ゼロ。
いたってクリアで、
若者らしい滑らかな声であります。
ロックナンバーのクライマックスに必ず登場する、
シャウト声も、単なる大声になっちゃってて。
あぁ、私ってこんな声だったんだよな、と驚くほどです。
今ではディストーション声、すなわち、
ハスキーな、ロックっぽい歌を得意としている私。
人の声ってこんなに変わるのだという、
生き証人のようなものです。
ロックをやっている人間なら、
必ずあこがれるハスキーヴォイス。
当時の私も、
どうやったらカルメンマキさんみたいに、
ジャニスやロッドみたいに、
しゃがれた声が出せるのか、
知りたくてたまりませんでした。
当時の知り合い、誰に聞いても、
言うことは同じでした。
「酒とタバコで、1回や2回、のどを潰さなくちゃダメなんだよ。」
「お前みたいな健全なタイプはロックは歌えないよ。」
「断崖絶壁で海に向かって叫ぶくらいやらないと、ダメなんじゃない?」
あぁ、無責任。バカヤロー。
あの頃、そんなことばを信じて、
声帯様を傷つけていたら、
私もいわゆる「ロック声」と言われる、
声帯様がちゃんと閉まらない、
すっかすか、ガンラガラで、
高い声なんかちっとも出ない、
「やられた声」のヴォーカリストに、
なっていたかもしれません。
くわばら、くわばら。
私の声をご存知の方ならおわかりと思いますが、
普段の私は、もちろん多少ハスキー成分はありますが、
どちらかと言えば、クリアな声。
裏声もばっちり出ますし、
地声的な声として、ハイA、ハイB♭くらいまで、
気持ちよく出ます。
ハスキーヴォイスにも、
いわばエフェクターを踏むように、
「ハスキーな声が出したいわ」と思った瞬間に、
切り替えることができます。
ハスキー成分、ディストーション成分は、
仮声帯といわれる場所を振動させて出す、
いわば、エフェクト音。
声帯様は主音を出すための器官ですから、
傷つければ、「音」をつくれなくなる。
つまり、鳴らない楽器をつくってしまうことになります。
主音は広い音域を自在に行き来しつつ、
仮声帯や軟口蓋、その他声道のいろいろな部分で、
トーンコントロールをしたり、
エフェクターをかけたりするのが、
自由な声の表現を可能にする理想的な状態です。
では、どうやって、そんな状態を作り出せるのか?
正しくは、声道まわりの力を抜いて、
呼吸の支えをしっかりつくった上で、
仮声帯を振動させる感覚を身につけること。
「力を抜く」、
「呼吸を整える」は、
発声の、いわば「基本のき」。
この2つをクリアできていない状態では、
何をやってもうまくいきません。
とはいえ私自身も、
「シャウト声」の理論は、
ほんの数年前、後付けで知りました。
実際は、誰かに教わったわけでも、
何かから知識を仕入れたのでもなく、
徹底的な完コピを繰り返したことで、
体験的に手に入れた声です。
出来ないなぁ、
どうやるのかなぁ、からはじまって、
試行錯誤を繰り返しました。
やっと出るようになった声は、
のどを締め付けて、無理矢理絞り出す、
いわば、NGの発声でした。
出し続けたら、のどがひりひりして、
翌朝は、声がガラガラ、
ということもありました。
ずっとこうやって出していれば、
のどが潰れて、理想的な声になるのかと、
思いあまったこともありましたが、
ジャニスが歌えるようになることで、
ホイットニーをあきらめるのはごめんだと思ったり、
のどを締め付けている感じなど全然なくて、
パワフルで自由自在なのに、気持ちよく歪む、
ティナ・ターナーみたいな声になりたいと思ったり、
めちゃくちゃなめらかな声なのに、
いきなりぽんっと歪ませられる、
ダイアナロスのようなヴォーカリストにあこがれたり。
とにもかくにも、
いろんな人の声を、ひたすらマネしました。
どんな顔で歌っているのかな。
力入ってないな。
顔も歪んでないな。
のども楽そうだな。
姿勢もまっすぐだよな。
呼吸はどうしてるのかな。
そんな、マニアックな研究と、
練習と、くふうの積み重ねが、
声をどんどん変えていきました。
知ることは大事。
教えてくれる人がいることも、もちろん大事。
でも、結局は、「できるまでやれるか」。
これに尽きます。
◆第9期MTL12の日程が決定しました。
4月11日(土)、25日(土)
5月9日(土)、23日(土)、
6月6日(土)、20日(土)
◆中上級者向けワークショップ、”MTLネクスト”、いよいよ始動!詳細は近日発表いたします。
先行でのご案内をご希望の方はメルマガをご登録ください。
関連記事
-
-
理解できない相手がクソなのか、させられない自分がダメなのか。
誰にも歌を認めてもらえず、 今日辞めようか、 明日ちゃんとした就職先を探そうかと …
-
-
「君、あんなもんでいいの?判断基準甘くない?」
「ま、君は、リズム、もうちょっとシビアにがんばった方がいいね」 1 …
-
-
「大きい音」を扱うのって、テクニックがいることなんですぞ。
「ラウドな音楽をやっている」と言うと、 デリカシーのない、 雑な演奏をしていると …
-
-
スタジオ・ミュージシャンって何するの?
私のプロフィールには、 「500曲以上のレコーディングに参加した」と書いてありま …
-
-
お前の主観はいらんのじゃ。
人が音楽や歌をジャッジするポイントは、 大きく分けて3つあります。 1つめは「正 …
-
-
You can never have too many guitars?
“You can never have too many guita …
-
-
「シンガー」というキャリアのゴールを描く
プロを目差すシンガーたちには、それぞれのゴールがあります。 ゴールが違えば、歩む …
-
-
バンドとカラオケは全然違うっ!
カラオケ育ちの若者たちは、バンド内のコミュニケーションが実に苦手です。 &nbs …
-
-
「限界ギリギリの定番曲」をいきなり歌う。
練習はルーティンからはじめる、というのは、 どんなスポーツでもおなじではないでし …
-
-
同じ音を、同じ音色、同じ音圧で、 100発100中で出す
人間のカラダは「まったく同じ音」を2回以上出すことはできない楽器。 そんなことを …
- PREV
- 「あ、あれ、まだ書いてない」
- NEXT
- マンツー vs. グループレッスン