何がやりたいかわかんない人に教えるのが一番ムツカシイ。
たいがいの無理難題は受けて立つタイプですが、
レッスンを担当することになって、なにが困るって、
受ける本人が、何のためにレッスンを受けるのか、
わかっていないときです。
事務所やレコード会社などから依頼を受ける場合は、
その点、本人が明確じゃなくても、
スタッフさんと綿密な打ち合わせが可能ですから、
迷うことはありません。
個人でMTLの門を叩いてくださる方たちも、
まぁ、「虎の穴」と呼ばれるようなところに、
自ら身を投じるわけですから、
それなりの覚悟と目的意識を持っていらっしゃる。
本当に難しいのは、
専門学校や大学で出会う学生たちでした。
「なぜ」「なんのために」が、
明確でない若者が実に多いのです。
ソングライティングも自分でやる、
ソロ・アーティストになりたいのか、
誰かに曲を提供してもらって歌う、シンガーになりたいのか、
スタジオで通用するヴォーカリストになりたいのか、
バンドをやりたいのか、
打ち込みで制作したいのか、
ライブをやりたいのか、
ネットでやっていきたいのか、
デビューを目指してオーディションを受けたいのか、
ヴォイストレーナーとして独立したいのか、
音楽教室で教える、歌の先生になりたいのか、
歌、音楽は「勉強」として取り組んで、
卒業後は就職なり、結婚なりしたいのか・・・
こちらとしては、望む場所に連れて行ってあげたい。
いや、連れて行ってあげることは無理だとしても、
少なくとも、
こっちに歩いて行けばいいんだよと、
道を指し示して、できれば灯りを点してあげたい。
しかし、どこに行きたいのかわからない人の、
道案内はできません。
1年目、徹底的に基礎をやったら、
2年目以降のレッスンでは、
そんなゴールの確認を、折に触れ、していました。
最初はあれもこれもと欲張ってもかまわない。
変化するのも当たり前。
でっかい風呂敷広げて取り組みはじめ、
やがて、少しずつ現実的な方向に軌道修正をしていくのが、
学生というもの。
その都度、レッスンプランを修正したり、
具体的なアドバイスをしていったりと、
二人三脚で進められたレッスンは、
それなりにおたがいの満足度高く、
終えられた気がします。
ところが、「どこに行きたい?」「何をしたい?」という、
質問をされることに慣れていない人がたくさんいます。
「どんな歌を歌いたい?」という質問さえも、
苦痛と感じる人がいるようです。
そんな質問ばっかりしてないで、
ただ教えてくれればいいのよ。
・・・という態度をされたこともあって、
逆に面食らいました。
一方的に与えられることが当たり前。
自分の意志はそこに介入させたくないのです。
こんな「思考停止派」のレッスンは、
言うことはデカいのに、
蓋を開けてみたらなんにも努力ができない、
「なんちゃって派」のレッスン以上に、
途方に暮れたもの。
そのたびに、音楽に夢中で、
ただ単位を取るためだけに大学の授業に出席していた、
学生時代の自分自身を思い、
そんな出来の悪い学生たちに、
「とにかく目的意識がなければいかんのだ!」と、
何かというとお説教をしてくれた、
今は亡き鷹取先生を思い、
深く深く反省するとともに、
彼らにとっての音楽は、
単なる「科目」ひとつなのだと自分に言いきかせたものです。
学ぶのは自分自身。
なぜ、何のために学ぶのか、
明確でない学習は、結局、時間の無駄になりかねない。
教える側が学ぶ側の力を引き出すだけでは、
不十分なのです。
学ぶ側の姿勢が、
教える側のやる気とポテンシャルを引き出すのです。
心からやりたいこと以外に時間を使えるほど、
人生は長くない。
目的意識を研ぎ澄まして、
学びの価値を最大化して行きたいものです。
RadioTalkをはじめました。23時前後に配信をしています。
まだまだひっそりやっている感じなので、ご質問やご感想も励みになります!
関連記事
-
-
「営業」なんて、無理!
「あいつは営業がうまいからね」 若かりし頃、 実力もセンスもイマイチのはずなのに …
-
-
自信、自信、自信。
こどもの頃から声が大きくて、 大勢で騒いでいても、 友達の話に相づちを打っている …
-
-
「ありのまま」ということばを免罪符にしない。
作品でも、パフォーマンスでも、 作り込むより、パッションが大事とか、 ありのまま …
-
-
練習の成果は「ある日突然」やってくる
はじめて「上のF」が地声で出た瞬間を、 今でも鮮明に覚えています。 学生時代は、 …
-
-
リズムをカラダで感じるための初歩練習~Singer’s Tips#28~
音楽にあわせて足踏みをする。 手を叩く。 小さなこどもが音楽教室に入って、 一番 …
-
-
迷う余地なく行動できるよう自分を追い込む
あれは中学生くらいのことだったでしょうか? 新しい学年がはじまると …
-
-
カラダに染みこませたものは裏切らない。
若かりし頃から、使った「歌詞カード」を 大切に取っておく習慣があります。 「ネッ …
-
-
「対バン」の流儀
「対バン」。 学生時代からあまりに当たり前につかっていることばなので、 この言葉 …
-
-
一点突破
大変遅ればせながら、新年初回ブログです。 2019年も、『声出していこうっ!』を …
-
-
大きな声を出せないときに、やるべきこと。
各地で次々と緊急事態宣言が解除され、 コロナ自粛も出口が見えてきました。 とはい …