自信、自信、自信。
こどもの頃から声が大きくて、
大勢で騒いでいても、
友達の話に相づちを打っているだけでも、
「MISUMIちゃん、うるさい」と名指しで叱られてきました。
そんな私でも、
風邪でも病気もないのに、
声が全然出なくなって、
「声が小さい」と言われたことが、何度かあります。
たとえば・・・
小学校の時、校長室に呼び出されて、
いたずらの事情を話そうとしたとき。
学生時代、どうしても一緒にバンドをやりたかった男の子に、
「一緒にバンドやってくれない?」と誘ったとき。
はじめてのスタジオのお仕事で、
自分の歌う音がわからないまま、
レコーディングが始まってしまったとき。。。。
なんて思われるだろう。
叱られたら、断られたらどうしよう。
これで大丈夫かな?
あぁ、きっとうまく行かないんだ・・・
そんな心の葛藤がカラダを硬直させ、ノドを塞ぐ。
呼吸も浅く、荒くなる。
いい声なんか出るわけないんです。
ピッチだって、リズムだって、合うわけないんですよ。
実際のところ。
プレイヤーでも、
スポーツ選手でも、
カラダをつかってパフォーマンスをする人は、
自信がない、不安を感じる、緊張している、
などなどの状態で、いい仕事はできません。
ましてや、カラダそのものが楽器のヴォーカリストは、
心の状態が如実に音にあらわれます。
歌のトレーニングとメンタルケア、
メンタルトレーニングは、切っても切り離せないのです。
カウンセラーのようになってしまったり、
スピリチュアルに走ったりするヴォイストレーナーが多いのは、
そうした理由もあるわけです。
さて。
実は、ヴォーカリストの教育では、
この、メンタルが一番難しいポイントになります。
厳しいプロデューサーやディレクターの前で萎縮して、
レコーディングでもライブでも、
本来出せる力を出せないアーティストを何人も見てきました。
プレデューサーやディレクターは、
現場の厳しさを知っているからこそ、
想いを込めて指導し、教育します。
しかし、時に、そのことばが上手く伝わらず、
結果を逆に悪くしてしまう。
今日はどこを怒られるか。
前回指摘されたところはちゃんと歌えるか。
歌えなかったらなにを言われるか・・・。
がんばらなくちゃと思うほどに、
思うようなパフォーマンスができない。
かといってアドバイスや指導なしには
アーティストは育ちません。
これはなかなかのジレンマです。
ディレクターやプロデューサー、
その他、ヴォーカリストを育てる立場にある人はみな、
悩んだり、迷ったりしているものです。
私は、アーティストやヴォーカリストの指導で最も大切なことは、
こちら側が本人たちをきちんと評価している、認めている、
がんばれば必ずできると信じているということを、
きちんと言語化して伝えることだと考えています。
「だって、その辺信じらんなきゃそもそもつかってないんだから、
そんなこといちいち伝えなくてもいいでしょ?」
とは、実に男性的な発想です。
「言わなくてもわかるだろ?」
は、デリケートなアーティスト、
ヴォーカリスト(特に女性)には通用しません。
「何にも言わないってことはOKなんだから」
なんて、省エネもやめて欲しい。
「誉めたら図に乗る」というのも言い方、伝え方次第です。
「ここと、ここと、ここを直して。」
「もっと○○に歌って。」
と単に言われるのではなく、
「ここをこうすると、すっごいよくなる。」
「もっと○○に歌えるはずなんだから。」
と言われたら、
誰だって俄然自信が生まれます。
もちろん、最後は自分です。
いかに自信を持って歌える自分になるか、
徹底的に準備して、経験を積む。
徹底して、自らのメンタルを鍛える。
結局は、勘違いしたもんがちですから。
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