「ヘタウマ」な人、「じょうず」な人、「いい声」の人。
若かりし頃、よく言われたことばに、
「キミってヘタウマだよね。」というのがあります。
今のように、ググったり、wikiったりできない時代です。
そう言われるたびに、ことばの意味がよくわからなくって、
「これって誉められているのか?けなされているのか?」と、
なんだか腑に落ちない、妙にイヤな気分になったものです。
さて。ここは21世紀。
ググればあっさり答えは見つかります。
「ヘタウマとは、創作活動において技巧の稚拙さ(つまり「ヘタ」)が、かえって個性や味(つまり「ウマい」)となっている様を指す言葉。・・・(中略)技巧が下手でしかも人を惹きつけて止まない魅力があるものを指す。」(wikipedia)
うーん。
要約すれば、「なかなか味のあるいい歌歌うよね。ヘタだけど。」
となるでしょうか。
けして誉めてない。。。
ホントに「いい歌」なら「ヘタ」は耳に入ってこないはず。
「感動するほどいい歌だけど、
よくよく聴いたらちょっとピッチやリズムが甘かった」
という人に、「ヘタウマ」とは言いません。
もちろん、ことばの意味は話し手や受け手によって変わります。
心から誉めて使う人もいるでしょうが、
私の場合に限って言えば、
暗に「レベルに達してない」という意味だったのでしょう。
さて。
とあるシンガーのライブ後、楽屋に来て、
「あなた、ホントにじょうずだね〜。
こんなにじょうずな人、見たことないよ。」と、
そのシンガーを誉めているミュージシャンがいました。
言われたシンガーは「またか」と言うような冷めた顔をして、
「ありがとうございます」と言っています。
その場に居合わせた私は、
あんな風に「つまらない歌だった」と伝える方法があるんだと、
変な感心をしたものです。
ピッチもリズムもばっちりで、
フレージングも表現も巧み。
「じょうずだなぁ。。。」
しかし、それしかことばが出てこない。
技巧を追求する人ほど、陥りやすい場所です。
どんなに「じょうず」でも人の感動を引き出せなくては、
歌う意味はなくなってしまいます。
参考:「上手そうに歌うな」
では、「いい声」はどうでしょう?
私が心の底から「いい声〜!」と震えたのは、
かつてよくお仕事をさせていただいた、
柳ジョージさんの声でした。
長年レコーディングに携わり、
いつかステージでサポートをやりたい、という願いが、
突然叶った時のことです。
リハーサルスタジオで、
モニタースピーカーから流れてくるジョージさんの歌声を聞いた瞬間、
もう、ホントに涙が出るほど素晴らしくって、
全身が震えたものです。
ジョージさんは、正真正銘の「素晴らしい声」の持ち主でした。
「いい声」と言うことばには、
「感動した」が含まれている場合と、
「声はいいけど何かが足りない」
というメッセージが含まれている場合がありそうです。
声の魅力は天賦の才+努力ですね。
どんなに「じょうず」でも、
「いい声」じゃないと、人は感動しません。
「いい声」なのに、あまりに「ヘタ」ではもったいない。
「ヘタウマ」と言われて満足して、
終わってしまう人もいるでしょう、
「ヘタウマ」から技術を磨いて、
素晴らしい歌手に転身する人もいる。
「ヘタウマ」を武器にして魅力を磨く人もいる。
「いい声」で「ヘタウマ」という人もいそうです。
誰かに言われたことばを、どう受け取るか、どう生かすか。
昨日もお話したように、
人が言ってくれることばは、たとえどんなことばでも、
自分になにかしら与えてくれるものなのですね。
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