大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

期待通りにやれるのが「プロ」、 期待を越えるのが「一流」。

   

生まれて初めての配信ライブにして、
本年最初で最後のライブを明後日に控え、
リハーサルに行ってきました。

今回も大先輩&大御所の皆さんのバンドに、
ゲストで参加させていただくわけですが。

いやー、久々というのもあり、
一流ミュージシャンってすんごいなあと、
しみじみ感じ入る時間でした。

 

難しいことができるから、
すごいんじゃない。

ロックを志す人なら誰でもできる、
ごく当たり前のこと、

例えば8ビート。
例えばロックンロール。
例えばブルース・・・。

ほんとにすごい人は、
ごく当たり前のことが、本気ですごい。

音色、
グルーヴ、
音の立ち上がり、
フレージング、
間・・・

余計なことをなんにもしない、
ごくごくフツーの8ビートです。

なにがすごいのか、
どこが違うのか、わかんない。

わかんないから、マネできない。

こういうのを「センス」って言うのよね。
このことばを使うと、終わっちゃうんだけどね。

・・・などと、思う一方、

いやいや。
これを、単なる「センス」で片付けず、
こだわって追求するから、すごい人になれるのかもね。

なんて思う自分もいたり。

 

そんな風にお客さん気分で聞いているうちに、
リハはあっという間に進行していきます。

何度もやっている曲はもちろんですが、
初めてやる曲でも、
せいぜい、譜面の確認をする程度。
打ち合わせらしいことは、ほとんどありません。

それでも、バッチリあう。

一流の、もうひとつのすごさって、
この「曲の理解力」なんですね。

 

オリジナルのある曲はもちろん、
スタジオではじめて接する曲でも、

譜面を追って、
ひととおり演奏すると、
「あぁ、そういうこと」ってわかる。
演奏の中での自分の役割がつかめる。
音楽の意図がわかる。

たとえばプロのスタジオミュージシャンは、
この「あぁ、そういうことね」を、
まず、はずしません。

作曲家なり、アレンジャーなり、
ディレクターなりの、
意図していること、
頭の中だけで鳴っている音楽を、
会話レベルじゃないところでつかまえて、
「音」にできる。

だから、スタジオに入って、
譜面を渡されて、
「じゃ、やってみましょうか」と演奏して、
一発で「いい感じですね」となったりします。

まぁ、もちろん、
それぞれの専門分野はありますし、
新しいものをつくろうというときは、
それなりのやり取りがある場合も多々ありますが、

この「理解を音にする力」が優れていないと、
まず、仕事になりません。

さらに、一流ともなると、
その、スタッフサイドの意図と理解を、
いきなり越えてきます。

期待通りにやれるのが「プロ」、
期待を越えるのが「一流」です。

スタッフの期待を越えた瞬間は、
現場にいると実にわかりやすいものです。

コントロールルームがどよめく、
クリエイターがにやりとほくそ笑む、
小さくガッツポーズをしたり、
バンザイをする人もいたりします。

そこに感動があるから、口コミが生まれる。
若手でもどんどん名前が売れて、
一流の仲間入りをしていく人たちは、
小さな感動をたくさん積み重ねているんですね。

センスや理解力は磨くことができる、
というのが、
鈍才である私の信念です。

この前提がなかったら、
努力にはなんの意味もないことになりますし、
そんな人生の不公平を、
許したくも、受け入れたくもないじゃありませんか。

センスや理解力を磨くには、
とにかく「聞くこと」。

ちゃんと聞く。
耳に穴をかっぽじって、徹底的に聞く。

疑問を持ったり、
批判的な気持ちを抱いたり、
仮説を立てたり、
検証したり、
テーマを持ったり、

とにかくありとあらゆる態度で聞くことです。

同じ音楽を聞いて、歌を聴いて、
どこまで情報を拾い上げられるか。
肝心なのはそこですね。

まだまだやれることはありそうです。
いや、やれることしかない。

一生修行であります。

◆   9月22日(火祝)18:00〜無料配信ライブに出演します。

GOLD ROCK feat.MISUMI
大槻啓之 (gt.vo.)
伊藤広規 (ba. cho.)
岡井大二 (dr. cho.)
feat. MISUMI (vo.)

アクセスはこちら↓
https://youtu.be/CMMI3a94DcI
「いいね!観覧チャージ」お申込み はこちら↓
http://ito-koki.com/contact/net-live-charge-charity

配信会場 : 西荻窪Terra(※当日は入場できません。)

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