わかりやすくうまい人 vs. さりげなくうまい人
「歌のうまい人」には2種類います。
ビヨンセやホイットニーやアギレラみたいに、
高い声やら、アドリブやら、ビブラートやら、
それこそ、ありとあらゆるテクニックを、
これでもかと見せつけてくる、
わっかりやすく歌がうまい人たちと、
普通のポップスを、
何気なく、
さらりと歌いこなすタイプの、
うまい人たち。
わっかりやすくうまいチームの歌は、
聞いただけでひるむくらい、
音域が広く、
ダイナミックで、
リズムが巧妙だったり、
ことばが詰め込まれていたり、
メロディラインが難解だったり。
そのスリルとサスペンスに満ちあふれたパフォーマンスに、
聞く人は心揺さぶられ、
アドレナリンが出まくります。
歌を志すものたちは、
こんな声出せない、
こんなメロディ歌えない、
こんなスピード追いつけない・・・と、
フロンティアスピリッツを刺激され、
ちっくしょ〜〜と食い下がるうちに、
どんどん練習にのめり込んでしまう。
技巧派に憧れるシンガーたちは、
ギャンブルやゲームにハマるように、
歌を攻略したくて、
練習にのめり込んでいくんですね。
一方で、
さらり系のうまい人たちのパフォーマンスでは、
曲の魅力、詞の魅力、声の魅力が、際立ちます。
なんかマネしたくなる。
自分も歌える、なれる気がする。
ところが、聞くとやるとは大違いです。
歌ってみたら、
意外なほど音域が広い、
メロディも歌詞も難しい、
なんだかちっとも雰囲気が出ない。
何気なく、さらりと歌うポップスの名人たちは、
何をどうしたらいいのか、
その技の盗み方さえわからないもの。
だから、歌えている気になるか、
単なるモノマネになっちゃうかの、
どちらかなんですね。
現代はテクノロジーのマジックがありますから、
どこまで本当にうまいかはわかりませんが、
かつてのシンガーたちは、一発録りで、
難しい曲をさら〜っと歌って、
実に魅力的なパフォーマンスにしたもの。
さらりとピッチを完璧にあてる。
フワッと、高い音を揺るぎなく出す。
こけおどしにならないビブラートを自然にキメる。
アドレナリン・ジャンキーを卒業すると、
さらりとふわりと、
何気なく歌うシンガーの魅力が、
見えてきます。
歌は深いですね。
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