ロックな声は、“知識”じゃなく“体感”で育てる
ロックと言えば、バッキーンと突き抜ける高音。
そして、ハスキーボイス。
昨今、さすがに「ロックを歌うなら、酒とタバコで喉潰せ」だの、「断崖絶壁でシャウトしまくれ」だのと、時代遅れのウソクソを教える輩は、ずいぶん減ってきた印象です。
一方で、情報過多の時代には、別の落とし穴があります。
その最たるものが「わかった気になる」です。
先日、とあるロック系アーティストのレッスンで、「以前のトレーナーに“ロックっぽい声の出し方を教えてほしい”と頼んだら、レッスンを重ねるほどに、どんどん声が枯れていった」と聞いて、震撼としました。
聞けば、そのレッスン内容も「一体どこでそんなこと教わったの?」というようなものばかり。
先生は声楽出身のポップス系トレーナーで、ご自身はロックな声で歌ったことがないとか。
お金と時間と若さをかけてレッスンを受けるのに、聞きかじりやネット上のウソ情報で、“わかった気”になって教えられたのでは、たまったものではありません。
ロックな声の出し方を教えられるのは、ロックな声を出せる人だけです。
もう、これは絶対の絶対に、です。
自分の宣伝のためにでっかいことを言っているわけではありません。
体感です。経験です。真実です。
ディストーションボイスを出せない人に、どうして、ディストーションのかけ方が教えられるのか?
頭でわかっていることと、本当にできることの間には、とてつもない隔たりがあります。
どれだけ高い声が出せたって、バキーンという高音で歌えない人に、
ロックのハイトーンの出し方は教えられないんです。
もちろん、声という楽器の正しい在り方はひとつです。
たとえ、ロックが歌えないトレーナーでも、ロックシンガーが知らず知らず身につけてしまった悪い癖をリセットし、正しいフォームを身につけるための指導はできます。
いい先生につけば、ノドの痛みや、声枯れなどは改善されるでしょう。
まずは一旦、クリーンな声を気持ちよく響かせられるようにする。
この大切さは、誰が語っても同じです。
これができずに、声は育てられません。
ただし、その先。
「クリーンな声」をどうしたら「バキーン」と突き抜けた声にできるのか。
どうしたら「ディストーション」のかかった声になるのか。
これは、ある種”専門領域”です。
自分自身が体感し、実践し、結果を出せない人には、教えられる領域ではありません。
ロックシンガーがオペラの歌い方を教えられないのと同じです。
トレーナーには、できないことは、”できない”と断る勇気も必要だということです。
ロックな高音の基礎はノドに負担をかけない、「人のカラダ本来の、正しい発声」です。
ファルセットも出せないような、ノドのトラブルを抱えてはダメなんです。
呼吸は常に一定です。
息をノドにぶつけない。息の出るタイミングと声の出るタイミングを合わせる。
余計な息は出さない。
声はいついかなる時もフワッと出す。
その上で、
そのフォームを崩さないように、「圧」を少しずつをかけていく。
フォームが崩壊しないレベルの「圧」こそが、自分の適正パワーです。
今の自分の筋力バランスでは扱えない声を、無理に出そうとしないこと。
バランスをキープしながら、日々”自分のマックス音量”を更新する。
ロックな高音を育てるには、これしかありません。
力を抜いたままパワフルな声を出す感覚がつかめてきたら、
今度は、声道にちょっと圧をかけて、仮声帯を共振させてみてください。
すると、いきなりディストーションがかかります。
ディストーションボイスは、声帯振動をともなわずに出せる声。
ノドをぎゅっと詰めて出す声ではないんです。
むしろ、脱力しないと出ません。
声帯様をイジメないでくださいね。
文字で書くと少し複雑に聞こえるかもしれませんが、
実際には、感覚さえつかめれば、それほどむずかしいことではありません。
このあたりは、文章で読むよりも、実際の声で聞いてもらうほうが早いので、
そのうちまた動画で紹介しますね。
関連記事 :
誤解だらけの「ロック声」。そのシャウトでは、危険です。
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