カルメンマキさんが、スタジオの丸窓から覗きこんでくれた日
間もなく高校3年なろうとしていた頃のこと。
女子校仲間と組んでいたバンドのライブを見にやって来た、男子校の生徒たちに、
いきなりバンドにスカウトされました。
しかも、ヴォーカルで、です。
毎日ギターのことしか考えていなかった当時の私。
私たちの高校でも人気の的だったバンドの男子たちに、
ギターではなく、「ヴォーカルで」と誘われて、嬉しいやら、戸惑うやら。
同級生女子たちから羨望や嫉妬の目を向けられていたらしいのですが、
こちとら、それどころではありません。
「ヴォーカリスト」をやる日がくるなんて、夢にも思っていなかったからです。
「ひとまず音を出してみよう」と呼び出され、
テンパり気味でスタジオに向かいました。
音を合わせてみれば、もうみんな、びっくりするくらいうまい。
そして、本気でカッコいい。
ギターを弾けないことは不満だったけど、
なにしろ、そのバンドにはすでにイケメンのギターヴォーカルのオーイシくんと、
ロックでセクシーなギターの名手・ヤマワキくんがいて、
私のヘボいギターはお呼びじゃない。
指が長くてロン毛のフクダくん。
これまたイケメンで、ファンキーなオガワくん。
そして、がたいのいい、いかにもドラマーという感じのオリタさん。
こんなメンバーと一緒にやれるなんて…。
心臓バクバクながら、とにかくいいところを見せたくて、
(まだまだクリーントーンでしたが)めいっぱいシャウトしました。
演奏したのは、忘れもしない、カルメンマキ&OZの『崩壊の前日』。
カルメンマキのシビれる歌声と、イカした歌詞がとにかくカッチョいい、大好きな曲です。
女子校バンドでは絶対に味わえなかった爆音と、演奏クオリティに酔いしれながら、ふと、スタジオのドアの丸窓に目をやると—-
そこには、な、な、なんと、
か、か、カルメンマキさんご本人が立っているではありませんかぁあああ!!!
どっひゃああああああ。
そうやら同じスタジオにリハーサルに来ていたらしいマキさん。
自分の曲が聞こえて、思わずのぞき込んだのでしょう。
曲が終わる前に、マキさんの姿は消えましたが、
メンバー全員の、夢を見ているかのような、興奮した顔、
あのマジックモーメントは一生忘れられません。
それから、20年あまりの時が経ち、またも唐突に、
今度は、ベースの鳴瀬喜弘さんから、電話をいただきました。
「うるゴメのヴォーカルやらない?」
六本木のSTB139 スイートベイジル。
同じくVocalのNoBちゃん、キーボードの河野陽吾くん、ドラムの小森啓資くん、
ギターは、あの、松本孝弘さんと、北島健二さん…。
そうそうたる、とんでもないメンバーです。
しかも、ゲストに、あの、カルメンマキさんが登場するというではありませんか!
リハ初日の武者震いと興奮は、それまでやってきたどんなライブも遙かに超えました。
マキさんの強烈なオーラと、声の迫力に震えが止まりませんでした。
モニターから流れるマキさんの声を聞きながら、
「20年前の、あのできごとは、今この瞬間への伏線だったんだ!」と感じ、
ことばにならない感動を覚えたものです。
記憶というのは、ほんっとに不思議です。
今となっては、あの時、マキさんがスタジオをのぞき込んでいた瞬間が、
はたして本当にあったことだったのか、はたまた単なる夢だったのか。
はっきりとは言えません。
それでも、あの瞬間から、スイートベイジルという「時の点」を通って、
今この瞬間に私を連れて来てくれたタイムラインは、
冒険に満ちあふれた、不思議で、ずっと最高な旅だったよなぁ…と、
振り返るほどに、満たされる気持ちになります。
次はどこへ行くんだろう?
今も、特別なこと、楽しいことが起きるたびに、
「これってもしかして、次への伏線?」と、
妙にワクワクしてしまうおめでたい私がいます。
次の「伏線回収」に向かって、楽しみながら全力で突っ走ります!
あなたには、「あれは伏線だった?」と思える記憶、ありますか?

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