大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「失敗の記憶」をリセットする

   

心もカラダもリラックスした状態で物事に取り組み、
自らのポテンシャルを最大限に発揮して、
確実に結果を出していくためには、
ホンモノの自信が必要不可欠です。

そして、その自信を育てるのは、成功体験の積み重ね。
これしかありません。

最初はおそるおそる、
少しずつスムースに、
時折、思いがけなくうまくいって。

コツがつかめる。
リラックスできるようになる。
ひとつひとつの動作が自分自身に馴染んでくる。

やがて、一定の成果と評価を得られるようになるほどに、
小さな自信の種が、少しずつ成長し、
ホンモノの自信に育って行くわけです。

さて。

こうやって、時間をかけて育まれる「自信」が、
たった1度の大きな失敗によって、
すべて帳消し、
完全にリセットされてしまうことがあります。

たとえば大きな舞台で、
それまで確実に歌えていた、キメ曲の音をはずしてしまう。
声が全然出なくなってしまう。
歌詞を完全に忘れて、歌えなくなってしまう・・・etc.

その失敗が原因で、
メディアなどで叩かれる、
スタッフに激しく叱責される。
ファンから心配する声、嘆く声、
落胆したという声などが届く・・・

影響力のある人の失敗は、
どんどん大きく、膨らんでいきます。

やがて、その、
「失敗体験」が大きなトラウマとなって、
自信を奪い、緊張させ、萎縮させ、
次々と失敗を呼び寄せてしまう。

失敗の連鎖です。

こうなってしまうと、
なかなか、負のスパイラルから抜け出すことが難しくなります。

そんな負のスパイラルが原因で、
高い声が出なくなってしまった、
発声障害になってしまった、
ピッチが取れなくなってしまった・・・など、
症状をこじらせてしまうシンガーがたくさんいます。

人間ですから、
どれだけ準備しても、
失敗を100%回避することは不可能です。

失敗によるトラウマを抱えてしまうことは、
誰にだってあります。
成功よりも失敗の方が記憶に残りやすいからです。

こんなとき、
次こそは挽回しよう、
絶対にちゃんとやり遂げようと練習しまくるよりも、
効果が出るのは、マインドセットを変えること。

うまくいかなかったことではなく、
うまくいったことの方にフォーカスすることで、心のバランスを保つ。

「毎日が初日」と考え、真っ新な気持ちで取り組む。

負のスパイラルが高じてしまったら、
トラウマを修復できるまで一時的に完全休養する、
ということも、視野に入れてもいいかもしれません。

いずれにしても、
おそれるべきは、失敗ではなく、
失敗を引きずってしまう、
小さな失敗で積み上げてきた大きな成功体験をリセットしてしまう、
そんな心の弱さです。

毎日が新しいはじまりです。
切り替えていきましょう!

 

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事のインサイドストーリーなど、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, Life, The プロフェッショナル

  関連記事

時間の密度を高める集中のコツとツボ

作品をつくりあげるとき、 制作現場で、 そして、トレーニング、練習、リハーサルで …

「飲みニケーション」は死んだのか?

ここ数年、若手バンドマンたちの「クリーン」ぶりに、 驚かされるシーンに何度も出会 …

イケてないプレイヤーは弾きすぎる。

イケてないプレイヤーは弾きすぎる。 よく言われることばです。 例えば、 ソロを弾 …

「このくらいデカい音出さなくちゃいい音出ないだろ?」

━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━ 2016年1月、M …

「迷い」に耳を貸さない覚悟

「これだ!」と閃いて、 ワクワクはじめたはずなのに、 なぜかうまくいかない、 こ …

「そうか、映像にもグルーヴがあるんだ。」

広告代理店の映像&音楽プロデューサーの下で、 音楽選曲のお仕事をさせてもらってい …

「妄想」は所詮「妄想」です。

小学校1年の終わりに急性腎炎で、2ヶ月ほど入院し、 (今となっては理由は定かでは …

メイクに目覚める年齢 vs. あきらめる年齢

大学4年の頃、よく遊んでいた同級生の男子に、いきなり、 「っていうかさぁ、コサカ …

「いいね」が消えた日。

他人の評価なんか気にするな。 自分で自分をどう思うかが大切なんだ。 数字のゲーム …

腰が硬い人はリズムが悪い!

以前教えていた音楽学校で、 「演奏中の動きがぎこちない学生が多い」という話になっ …