「売れないアーティスト」の回顧録
自分の心がおもむくままに、
なにかをクリエイトすることは、
私の癖のようなもので、
そこには努力も苦悩もありません。
詩を書き、
文章を書き、
曲を書き、
歌詞を書き・・・
そんな私の作品たちは、
誰のためでもなく、
私自身の、
なんというか、
心の中身を外にとりだして、
確認するように生まれてくるものたち。
なにかをクリエイトすることで、
自分を好きという気持ちを、
やっとメインテインできるような、
そんな感覚でした。
だから、もちろん評価されれば嬉しいけれど、
人の評価は二の次で、
私が心から、
この曲好き、この文章好きと思えるところまで、
追い込むことが作品づくりのゴール。
そんなだから、
世の中に出ていない作品は、
山のようにあります。
「作品を売り出してこそ、本物のアーティストだ」とは、
スティーブ・ジョブズのことば。
アーティストとして認められよう、
作品を認めてもらおうと、
努力をしていた時代も、長くあります。
しかし「売り出す」ことをゴールにしたことで、
作品そのものの意味合いは変わっていきました。
自分のためでなく、誰かのために。
では、誰のために?
誰が、私の作品を必要・・・?
そのために自分の作品のパッケージングを変えたり、
中身を入れ替えたり・・・
自分なりに、
届きやすくするためのくふうを重ねた時期もあります。
しかし、後に、ビジネスの勉強をはじめ、
当時の自分を振り返って、
あぁ、私は、本当の意味での、
自分の作品を売るための努力はしていなかったんだな、
と気づきました。
というより、
売るということに、
興味が持てなかった、
本気になれなかったんだなと。
だって、そんな努力のひとつひとつが、
とんでもなく苦痛だったし、途方もなかった。
何をしていいか、
誰に何を聞いたらいいかもさっぱりわからなかった。
何やってんの?
何媚びてんの?
何やりたいの?
どうせうまくいかないなら、
なんで自分の好きなもんだけつくんないの?
っていうか、誰が成功法則わかるっていうの?
・・・的な、
負け犬自問自答を延々とやっていました。
売れない売れない。
こんな人、絶対売れません。
そのことを考えることが、
苦痛と苦悩でしかなかったんです。
つくることはとんでもなく楽しかったのに、
何時間でも、何年でも、ノンストップでやれたのに、
「売る」とか「売りたい」っていうアイディアは、
もう、まったく楽しくない。
自己嫌悪と、まわりに対する疑心暗鬼と、
負の感情のスパイラルと、
フラストレーションと・・・
いやいやいやいやいやいやいやいや。
楽しくないことで成功するなんて、
ぜ〜〜ったいあり得ない。
世の中には、人にものを売るのが楽しくて、
人に喜んでもらうことが嬉しくて、
仕方がないという人が、た〜っくさんいるのに、
そんな、嫌々、恐る恐る、
なんなら、買い手を小馬鹿にしながら、
成功するわけなんか、絶対の絶対にないんです。
そこに気づいてから、
私は、自分の音楽作品は、
私の音楽が好きな人にだけ買ってもらおうと、
きっぱり心に決めました。
だから、好きなことしかやらない。
好きなものしかつくらないし、
好きな歌しか歌わない。
その代わり、好きを極めようと。
そう吹っ切れたら、
とんでもなく、
心が平和に満たされました。
自分で言うのもなんですが、
歌詞も、曲も、歌も、
一皮剥けちゃった感じです(弊社比)。
売れないアーティスト、改め、
売らないアーティスト。
なんじゃ、そりゃ。
・・・まぁ、こんな私的な話に興味のある人はあんまりいないかもですが、
書き出したら、面白くなってきちゃったので、
また続きを書きます。
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