大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

風邪をひいたら歌っちゃだめなんです

      2019/01/14

「先生、私、ちょっとノドの調子が悪いんですけど・・・げほげほげほ、
でも、一所懸命練習してきたんで・・・げほげほげほ・・・
ちょっとくらいなら・・・げほげほげほ」

という、練習熱心な子が、時々います。

がんばってるね。
具合悪いのに、たくさん練習して、偉いね。
じゃ、ちょっとだけ、見ようか・・・

と、言ってあげたいのが人情ですが・・・

でも、これ、ダメなんです!!

「風邪引いてるのに、声なんか出したらダメに決まってるでしょ?
そんな声で練習なんかしてるから治らないのよ〜!
早く帰って寝なさい!」

というのが正解です。

声が出ないのは、「出すな」というサインです。
声帯さまのまわりは確実に真っ赤っかです。
そんなときに声を出せば、結節や、ポリープなど、トラブルを招きかねません。

声帯は非常にデリケートな組織。
ケガをしてヒリヒリしている場所を、
乾いた布でゴシゴシこするようなことはしませんよね?

安静にしましょう。
おしゃべりも禁止です。

じゃあ、声が出れば、鼻ぐずぐずでも、喉が痛くても大丈夫かというと、
喉の中はぜ〜んぶつながっているんです。
鼻から喉、どこかが炎症を起こしているときは、
刺激を与えれば、その炎症が広がる可能性があります。

可能な限り、声を出さない方がいいでしょう。
そもそも、喉が痛いときは、熱が出る可能性もあるから、
体力を消耗するような運動はNGですよね?

喉も鼻も大丈夫なんだけど、咳だけが出る、というときも、
できれば歌わない方が賢明です。
発声が気道を刺激することには変わりありません。
炎症が引かない上に乾燥します。
そもそも、カラダが病原菌と戦っているときに、
「歌う」などという全身運動をすれば、それだけエネルギーが取られ、
治るのが遅くなります。
風邪かな?というときは、キャンセルできる用事ならすべてキャンセルして、
とっとと家に帰って、
温かい、栄養のある、消化のいいものを食べて、
水分とビタミンをたっぷり補給して、
ぐっすり眠るのが一番です。

無理に練習をしても、思ったように音程にあたらないので、
かえって、変なクセをつけてしまいます。
第一、気持ちよく歌えない。
あげくどんどん具合が悪くなって、声帯まで痛める・・・

これでは無意味どころか、マイナス。やってはいけないことです。

あきらめて、おとなしく、寝てくださ〜い。
例外は、仕事で歌わなくてはいけない人。
そんなときは・・・

必要以上に絶対声を出さないこと。
リハーサルも最低限のサウンドチェックにとどめること。
おしゃべりで声を使うのは絶対厳禁。
保湿につとめ、周囲の湿度を上げ、
歌う前にはゆっくりとウォーミングアップして歌うこと。

耳鼻科の先生にそのように相談すると、喉に注射を打ってくれるところもあるので、
いい主治医を持つことも大事です。

ま、一番大事なことは、風邪をひかないことなんですけどね。

そのへんは、また今度、ゆっくり書きます!

22214933_s

*12日(金)お昼ごろ発行のメルマガには、今日のブログのインサイドストーリーを書きました。私が体調管理に徹底的にこだわるようになった、駆け出し時代のイケてないエピソード。

バックナンバーも読めますので、よろしければ是非こちらから登録してくださいね。

 - カラダとノドのお話, 声のはなし

  関連記事

「自分の本当の声」ってなんだ?

「私の本当の声ってどんな声なんでしょう?」 シンガーやパフォーマーに限らず、 一 …

人は「声の高低」でワクワク、感動する。

全っ然、キャラじゃないんで、 あんまり言わないんですが、 こう見えても、 ディズ …

スーパーファルセット(すんごい高い声)出したい?

スーパーファルセット、 ホイッスルヴォイスなどと聞いて、ピンとくるでしょうか? …

「ヴォーカリストはまず姿勢!」の本当の意味

「MISUMI先生は、姿勢、姿勢っておっしゃるんですけど、 姿勢をよくする意味っ …

マスクは「声」をダメにする!?

先日、新宿駅を歩いていたときのこと。 背後でおしゃべりしている若い女性たちの声を …

声を伝えるのに必要なのは「デリカシー」。「気合い」じゃないんですよ。

音の波形ってみたことありますか? 音は空気の振動。 特殊な装置をつかうと、 その …

本当の声。好きな声。売れる声。

私、「自分の本当の声」がわからなくなっちゃって・・・。 私の「本当の声」って、ど …

緊張に打ち克つ。

多くの人に相談される悩みのひとつに、 「人前に出ると緊張してしまって、声が出なく …

大切なのは声の「大きさ」や「高さ」ではなく、「音色」なんです。

東京アラートは出ていますが、 自粛解除になったということで、 すご〜〜く久々に、 …

鳴らない楽器と鳴らせないプレイヤー

輸入物の下着の値段を見て、 ひっくり返りそうになったことのある女子なら、 「洋服 …