大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「声が低けりゃ威厳を感じるのか問題」を考える。

   

ヴォーカリストの悩みで一番多いのは、
「高い声が出ない」。

一方で、ビジネスパーソンの悩みの中で、
5本の指に入ると言っていいくらい、
よく相談を受けるのが「声が高い」です。

人は声の低い人に威厳や信頼感を感じる、と言われます。
いわゆる「モテ声男性」は低音なものですし、
人気俳優の多くは、よく響く心地よい低音で話します。

 

低い、落ち着いた声で話したいと思うのは、
男性ばかりではありません。

男性中心のビジネスの現場では、
女性の声の周波数は目立ちます。

さらに、高い声の女性は、
「感情的」「頼りない」と評価されることが多いため、
女性たちも、低い声で話したいと考える傾向にあるようです。

実際に声のトーンを変えただけで、
オーディエンスの態度が一変した、
社会的地位が上がったという、
アメリカの女性弁護士のレポートもあります。

しか〜し。

ここで間違えてはいけないのは、
聞く人が威厳や信頼感を感じるのは、
単に「音程が低い声」ではないということです。

そもそも、人はなぜ、
声の低い人に安心感を感じるのか。

声の低さは、体の大きさの象徴でもあります。

身長が高い人ほど、
長い声帯様を持っている場合が多い、
すなわち、低音が出やすいのです。

長くて立派な声帯様をきちんと鳴らすことができるのは、
呼吸力、体力がある証拠。
すなわち、よく響く低音は、
若さと強さの象徴でもあります。

低音に威厳を感じるのは、
動物としての本能なのですね。

さらに。

どんなに立派で健康、
若いカラダを持っていても、
緊張すれば声は高くなります。

大きな犬でも、
ケンカに負けそうになったときや、
弱気になっているときは、
キャインキャインと鳴きますね?

深みのある低音は、
精神的に安定している証拠でもあるわけです。

人間の場合、
心身の状態による声の音色の変化は、
さらに顕著です。

不安や緊張を感じれば、
声は神経質そうに、
キンキンと固くなります。

カラダの軸に力がなければ、
弱々しい声になりますし、

自分を大きく見せようと、
必死になれば、
声がひっくり返ったり、
枯れやすくなったりしてしまいます。

内向的な性格で、
自信が持てないタイプの人は、
構音器官に力が入りやすく、
声がこもります。

低くよく響く声というのは、
身体的にも、精神的にも充実した、
自信あふれる人の象徴なのです。

まずは、心身の充実した状態を演出すること。
いきなり音程を下げることよりも、
口の内外の筋肉の緊張を解くことが先決です。

ノドまわりのいらない緊張をゆるめて、
カラダの軸の力の流れを意識しながら、
ゆったりと声を出しましょう。

たとえばあくびをするとき、
お風呂でため息をつくとき、
いつもよりも低い声が出る気がするのは、
リラックス効果なんです。

リラックスして、
軸に力を感じながら、声を出せるようになったら、
少しだけ音程を下げて話してみてください。

ただし、あからさまな低音にするのは、
ただのコントです。

下げるのは「半音」。
カラオケで言うところの−1で十分です。
そのくらいが、無理なく、自然に話せる範囲です。

マーガレット・サッチャーが政治家として選挙に立つときに、
ヴォイストレーニングを受けて声を低くしたという話は有名ですが、
彼女が下げたのも、わずか半音程度。
それでも、「低音の強い声」を演じ続けたために、
声を痛めたとも言われています。

なにごとも、過ぎたるは及ばざるがごとし。
自然な、深みのある声を目指すのが一番ですよ。

◆【ヴォイトレマガジン『声出していこうっ!me.』】
ほぼ週1回、ブログ記事のインサイドストーリーなど、1歩進んだディープな話題をお届けしているメルマガです。無料登録はこちらから。バックナンバーも読めます。

 - B面Blog, ビジネスヴォイス, 声のはなし

  関連記事

究極の正解を探せ!

カバー曲はいい感じで歌えるのに、 オリジナル曲になると精彩を欠く。 こうしたケー …

ほんっとに「一期一会」

一期一会。 若かりし頃はあまりピンとこないことばでしたが、 年を重ね、世界を巡り …

「もっと心をこめて歌ってよ」!?

「歌は心」的な話は苦手です。 心をこめて歌おう、 情感たっぷりに歌おうとがんばる …

「あのね、わかる人と変わってください!」

先日、某携帯電話のS社に問い合わせの電話をかけました。 新規にiPadのセルラー …

ノドにいい食べ物?悪い食べ物?エピソード

「ノドにいい食べ物ってなんですか?これは食べちゃいけないってありますか?」 こん …

ノドを痛めるのは「大きな声を出すから」ではなく「出し方が悪いから」

「大きな声=ノドを痛める」と思っている人が、 あまりに多いことに、いつも驚かされ …

「自分の声の地図」を描く

「あなたの音域はどこから、どこまで?」 「え?」 「高い方はどこまで出るの?下は …

ホンモノか?ニセモノか?

「あいつはホンモノだよ」 「なんか、あの子、ウソくさいのよね」 一般の人たちがど …

「いい音を出すには、ある程度の音量が必要だ!」とかって言いますけどね・・・。

「いい音を出すには、ある程度の音量が必要だ」 ロックギターリストが口をそろえて言 …

「それは、MISUMIさんが無理だって思っているからです」

後に圧倒的な成功を手にすることになる、 ある若き女性と、 食事をしていた時のこと …