大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

歌詞が覚えられない?~Singer’s Tips #22~

   

「歌詞なんか、よく覚えられるね。」
と言う人がいます。

「そこまで真面目にやる必要ある?」
「外タレだって、プロンプター置いてるよ。」
「1回しか歌わない歌の歌詞なんか、覚える意味ないでしょ?」
「歌詞を思いだそうとすると、かえって集中できないから。」

こちらから、何か言ったわけでもないのに、
自分が歌詞を覚えられないことの言い訳をはじめる人もいれば、
歌詞を覚られるなんて、特殊で、
くそ真面目な人だけだと言いたげな人、
歌詞なんか覚えなくていいものだと説得にかかる人もいて。

結局、みんな、
自分が歌詞を覚えないで歌うことを、
少なからず引け目に感じているのでしょう。

歌詞を覚える目的はひとつだけです。
すべてを忘れてパフォーマンスに集中するため。

レコーディングのように、
歌詞を目で追う方が無心になれる現場もありますから、
椅子に座って歌うスタイルの人や、
楽器を弾きながら歌うスタイルの人は、
この限りではないでしょう。

しかし、ロックやポップスのライブで、
歌詞を目で追っていたら、
バンドの音やオーディエンスのエネルギーを全身で感じられない。
自由に動けないし、音楽の世界観に入り込めない。

歌詞がカラダに入っていれば、
どこまでも自由に歌の世界を楽しむことができます。

歌い手が楽しんでいない、
世界にのめり込んでいないのに、
オーディエンスが楽しめるわけはない。

少なくとも、私は、そう感じています。

そもそも、
歌詞カードを追わなければ歌えないレベルの準備しかできていないのに、
プロとして人前で歌う度胸がある人は、むしろ尊敬に値します。

英語なんか覚えられないという人もいますが、
覚えられないくらい、
意味のわからないことばを歌えるのか。

そんな風に言う人は、
日本語の歌詞でも覚えられないものです。

ただし、この件に関しては、
流派もいろいろあるでしょう。
哲学もあるでしょう。

だから、正解は自分が決めればよいのです。
信念を持ってやるなら、言い訳はいりません。

少なくとも私は、
台本を片手に名演技をする俳優を見たことがないし、
一流の歌詞が歌詞カードをガン見で、
パフォーマンスをするのを見たこともない。

どんなに小さなステージで歌う時も、
一流のレベルを目指す人が、
少しずつステージを大きくしていかれるものだと、
信じてやまない。

それだけです。

「覚えるのが大変」
「歌詞を見ないでステージに立つのが怖い」のは、
みんな、一緒ですよ。


“MTL ヴォイストレーナーズ・メソッド” 開講します!
業界トップクラスのメソッドで、圧倒的な結果を出す。ヴォイストレーナーとして活躍されている方はもちろん、ヴォイストレーナーを目指す方、トレーナーという仕事に興味があるという方も。

 - B面Blog, Singer's Tips, 歌を極める

  関連記事

わかりやすくうまい人 vs. さりげなくうまい人

「歌のうまい人」には2種類います。 ビヨンセやホイットニーやアギレラみたいに、 …

死ぬほどしんどくなるくらい、やりたいこと。

音楽の道って、なんて苦しいんだろうって、 思っている人、たくさんいますよね? 歌 …

関係性がつくれないから上達しない。

ここ数年、芸能事務所や音楽事務所の 新人育成ワークショップを担当させていただく機 …

ダメな時はダメ。それでいいのだ。

一昨日から、 書いても書いても仕上がらない記事がありまして。 どうやってもアップ …

走りながら学ぶ。

情報がなかった時代でも、 情報があふれている時代でも、 本物の情報のパーセンテー …

「この曲嫌い!」をどうするか?

一念発起して通いはじめた歌の学校で、最初に手渡されたのは、いわゆるAORというジ …

「ビートを立てる」って難しい。〜Singer’s Tips #11〜

「もっとビート立てて、リズムよく歌って。」 などというディレクションを受けること …

声のリハビリ

3月からのライブ・ラッシュに向けて、 朝トレをしているわけですが、 ここ半年あま …

「結局、誰よりも渇望した人間が・・・」

「なんで歌の学校なんか行くの? 歌なんか、習うもんじゃないでしょ?」 大学4年の …

「歌い方」の前に、「なぜ、そう歌うのか」

歌を学ぶ人も、教える人も、ついつい陥りがちなのは”How&#8221 …