大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「ケツカッチン」で、劇的に成果を上げる

   

延ばせないデッドライン(締め切り)のことを、
業界用語で「ケツカッチン」と言います。

言い訳無用。
何がどうあれ、
その期日、時間までに作業が終わらなければ、

発売日にCDのプレスが間に合わない、
テレビの放映に穴をあける、
別のプロジェクトに大きな支障をきたす・・・etc.

そこそこ結果を出している大御所ならともかく、
駆け出しのペーペーや、
たいして売れてない業界人が
そんなことをやった日にゃあ、
即、お仕事、干されます。

いや、大御所ほど、
ケツカッチンを破ると、
大事故に繫がるケースも多いですから、
責任問題に発展する可能性も大でしょうか。

 

そんな恐ろしい「ケツカッチン」。

 

しかし、だからこそ、
「ケツカッチン」は「火事場の馬鹿力」のジェネレーターとして、
大きな役割を果たすのです。

アイディアが出てこなくったって、
全然形にならなくたって、
デッドラインまでには、
何が何でも、なんかしらひねり出さなくちゃならない。
是が非でも形にしなくてはならない。

かといって、
いい加減な仕事をすることは、
プロである以上許されません。

いや、プロとしてのプライドが許しません。

そうなると、
人は、ものすごい集中力が湧くものです。

実際、そんな「ケツカッチン」状態で、
名作を残したクリエイターは音楽の世界に限らず、たくさんいます。

「曲が書けるのはどんなときですか?」
という質問に、
「締めきりの前日です」
と答えたのは、坂本龍一だったか。

アーティストというやつは、
締め切りがないと、
「完璧なものをつくりたい」とか、
「もっと素晴らしい作品になるはずだ」なんちゃって、
何個も何個もツボを割っちゃう。

割っちゃったツボの中には、
きっと1個や2個、勢いあまって割っちゃった、
そこそこいい作品もあったはず。

中には、
ケツカッチンででっち上げるものよりも、
いいものだってあったはず。

サグラダファミリアだって、
工事の締め切りがないから、
永遠に工事が終わらないんですよね?

いや、もちろん、
どんどん進化していく建築物は、
壮大なインスタレーションはカッコいいけど。

死ぬまで完成形が見られないものの、
クリエイトに携わるのって、
あたしは淋しいなぁ。。。

おっと、脱線しました。

 

今日のポイントは、
「ケツカッチン」を利用して、
火事場の馬鹿力を演出しちゃおう、です。

家で自由に仕事をしている人ほど、

なかなかアグレッシブに攻められない、
仕事の成果が上がりづらい、
時間配分がうまくいかない、

などの悩みを抱えがち。

そんなときこそ、
自分で「ケツカッチン」状態をつくり、
にっちもさっちもいかない状況を演出するのです。

やり方は簡単。

商品なら、発売日を公表する。
企画なら、会場を押さえたり、
スタッフの手配をする。
講演やレクチャー、セミナーなどなら、
先にチケットを売っちゃうというのも手です。

単にSNSで公表するなどというのでは、
まだ甘いですね。

スケジュールを切って、
人とお金をぶっ込む。

これです。

迷惑をかけられない。
恥をかきたくない。
損したら大変だ。

そんな危機感に苛まれたら、成功です。

ケツカッチンを利用して、
多いに火事場の馬鹿力、出していきましょう。

ただし、

無謀なチャレンジをしろと言っているのではありません。

周囲のご迷惑になることだけは、
くれぐれもないよう、
覚悟を持ってのぞみましょうね!

・・・と自分に言いきかせる秋の夜。

 

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