大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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個人レッスン?グループレッスン?メリットと選び方

      2025/09/03

実によくされる質問のひとつに、
「個人レッスンとグループレッスンっだったら、やっぱり個人がいいですよね?」
があります。

「1時間のグループレッスンだと、まず、みんなで声出しして、自分が見てもらえる時間は、せいぜい10分くらい。
それならマンツーマンで自分の歌をガッツリ見てもらった方がいいのでは?「
ということのようです。

確かに、自分の歌を集中して見て欲しいなら、個人レッスン一択ですが、グループレッスンには、個人レッスンにはないメリットがいくつかあります。

1.人の歌を客観的に聞くことで、自分の歌への理解が深まる

自分の歌の現状を見極め、今、何をすべきか見出す。
この力が身につけば、歌はどんどんうまくなります。

ところが、レッスン中必死に歌っていると、なかなか自分の歌を客観的に聞けないもの。
講師にアドバイスされても、できているのか、いないのか、わからない。
腑に落ちる答えをみつけられないまま、モヤモヤと帰路につくこともあるでしょう。

一方、人の歌はよく聞こえます。
その人の声、姿勢、呼吸。フレーズのうまさ。まずさ。
リズムやピッチのよしあし。
自分のことに悩んでいるときほど、人の歌をじっくり聞けるようになります。

人の歌や、その人に対して講師がしているアドバイスを聞くことで、自分の歌だけに意識を向けていたときとはまったく違う形で、レッスン内容がスーッと理解できることは多々あります。

他の人に講師がアドバイスしている時間を「無駄」と感じるか。
その時間を利用して、「学び」を深めるか。
何ごとも心構えです。

2. 講師の人柄や力量を理解しやすい

レッスンは、講師との人間関係がすべてと言っても過言ではありません。

残念なことですが、講師のことばに、知らず知らず、自信を奪われたり、傷つけられたりという人はたくさんいます。
講師の要求に応えられない、言っていることが理解できないのは自分の努力不足だ、と考える人も多いようです。

ハッキリ言えば、それらはすべて講師側の力不足。勉強不足。
真面目にがんばっていても、思ったように上達しないのは、講師の教え方が悪いからです。

いえ、人様の批判をしているわけではありません。
これは、私が常日頃、自分に言いきかせていることばです。
「なぜ、上達しないんだろう?」と思ったら、教える側がもっともっと研究し、くふうすべきなのです。

グループでレッスンを受けていると、その講師の人となりや、力量を客観的に判断することができます。
ワンクッションあることで、人間関係の重さも軽減されます。
受講生同士で、講師の噂をすることで、受けなくていい負の影響を回避することも可能です。

3.情報交換が、成長のきっかけになる

人はそれぞれ、まったく違う音楽環境の中で成長します。
今、たまたま同じ音楽が好きでも、それぞれのバックボーンの在り方で、その聞き方、聞こえ方は全然違う。

音楽は人と一緒に演奏するもの。人に届けるもの。
「人への理解」なしに、いい歌を歌うこと、いい演奏をすることは不可能です。

目の前の人が自分の歌をどんな気持ちで聞いてくれるか。
人はどんな目線で歌う曲を選ぶのか。
感心することも、感動することも、あきれることも、ぜんぶが勉強です。

音楽を通じて人と関わることを学ぶ。
グループレッスンはその大きなきっかけをくれるはずです。

 

いかがでしょう?

グループでも、個人でも、レッスン時間には一瞬も無駄な時間はありません。
どんな時間も、その時間の価値を最大化できるか否かは、自分次第です。
全身全霊、味わっていきましょう。

◆関連記事:
誰かに「習う」前にやるべきこと、できること。

◆グループでも。個人でも。
MTLの講座なら、あなたに合ったスタイルで学べます。

 - 「歌を教える人」になる, ある日のレッスンから, ヴォイストレーナーという仕事

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