勇気を出して、「酷いことを言う人」になる。
言ってあげた方がその人のためとわかっているけれど、
言えば必ず、相手はショックを受ける。
間違いなく傷つけてしまう。
そんなことばを、言うべきか、言わざるべきか、
迷ってしまうことがあります。
通常なら、言うか言わないかは、相手との人間関係、信頼関係によるでしょう。
それほど親しくない間柄だったり、相手の性格や状況によっては、
こちらがどんなに相手のためと思って言ってあげても、
余計なことを言う人、と疎まれ、
マイナスな結果しか得られない場合も多々あります。
実際に、「言ってあげた方があなたのため」と、
デリカシーのないことを言う人も多いので、仕方ありませんが。
しかし、指導者をしていると、
どんなに辛くても、どんなに憎まれても、伝えなくてはいけないときがある。
心から相手の将来を思うからこそ、
そして、他の心ない人の口からそのことばが言われる前に、伝えなくてはいけない。
どんなに言いづらいことも、どんなに厳しいことも、
言わなくてはいけないときがあるのです。
それも、指導者の仕事のひとつ。
かつて教えた学校で、同級生から、本人が気づかないようなことで、
嫌われ、避けられている子がいました。
彼は、一所懸命友達をつくろうとがんばっているのに、
みんな彼に近づかない。
気になって、それとなく同級生に話を聞いてみました。
それは、思いもかけない理由すぎて、
とても本来なら、思春期の男の子に
面と向かって言えるようなことではありません。
ここでは、あえて、詳細は伏せさせてください。
しかし、それは、自分の努力次第で変えることができることでもありました。
何週間か、迷ったあげく、
私は、その残酷なことばを彼に告げました。
みんなが、キミのことをこう言っている。
ごめんね。言わなくてもいいことなのかも知れない。
でも、他の誰かに言われる前に、私が言ってあげなくちゃと思ったんだ。
その時の彼のショックを受けた顔を、今でも忘れることができません。
誰にも相談せずに、私1人で考えて決めたこと。
そうするのが彼への誠意だと信じたこと。
話したことは後悔はしていません。
きっと、今でも、同じことをすると思います。
それでも、彼のその時の傷ついた顔が、忘れられず、
今でも、こうして、時々思い出すことがあります。
彼はその後も変わらず、レッスンに来ました。
そして、その時のことは、2度と話題に上ることはありませんでした。
それでも、彼は、それから、少しずつ変わったように思います。
指導者をしていると、
こんな、つらい選択を迫られることが多々あります。
放置するのは簡単です。
見なかったようにすれば、自分自身は傷つかないし、
嫌われることもないでしょう。
しかし、誰かが言わなければいけないとしたら、
それは、自分しかいない。
そして、それこそが、自分の存在意義なのだと心から信じられたら、
勇気を出して、「酷いことを言う人」にならなくてはならないのです。
彼に、もう会うことはありません。
いつか、あのときは厳しいこと言っちゃったねと、
伝えられるときも、来るかもしれません。
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Comment
大槻MISUMIさんへ ココロノ悲鳴を、聞く前の『天使のささやき』時には『悪魔のつぶやき』にて、、ダイレクトに、目を覚まして、あげないと。。ココロが、めげると、、ココロに、人生の夕日すらも、顔を、出す日が、、もう、無くなるんですから。。朝日も、真昼の太陽も、ココロが、見逃したのなら、、ラストチャンスで、夕日を、見してあげれるようにしたら、晴れやかで、【悔い(くい)】は、ないし、言われたかたの人生の基礎になる【杭(くい)】に、なっていると、ボクは、思いました。。。隈富美子さんのシェアより、楽しく、時々、拝見させて、いただいて、おります。
>ジロー野口さま
コメントありがとうございます!
「言った相手の人生の杭になる」。心して精進します。