「ダメ出し」こそが、プロの技を試される仕事なのだ
他人にダメ出しをする人には、
自分のためにダメ出しをする人と、
相手のためにダメ出しをする人の2種類います。
自分のためにダメ出しをする人の目的は、
「自分はわかるのだ」というパフォーマンスだったり、
相手に、「だから、オレの方がすごいんだ」とわからせるための、
マウンティングだったり、
ときに、自分もよくわからない人の、
「・・・ってことで、あってますよね?」という、周囲ヘの確認だったり。
いずれも、心のベクトルは自分の方向に向いていますから、
相手の気持ちは二の次。
だから、心ない言い方になったり、
相手が理解できないような、抽象論をかましたりします。
こんな人に出会ったときに、自分に言い聞かせるべきなのは3点。
・抽象論しか言えないヤツの意見は信用するな。
・こちらを傷つけたり、
お互いの力関係を確認したりすることが目的のヤツとは関わるな。
・「お前のためだ」という飾りことばに心乱されるな。
後は、相手のことばが、こちらへの愛で発せられているのか、
それとも、自己愛で発せられているのか、
即座に感じ取れるような本能をいつも磨いておこうと、
自分に言い聞かせるのみです。
さて。
人に意見を求められる立場になると、
一瞬一瞬が、ことばの選択や、
相手に投げかけるメッセージのトーンの決断の連続です。
もちろん、相手が喜ぶことばを並べてあげるのが、
最も簡単で、最も平和。
言う方も、言われる方も、終始笑顔で、
摩擦もなく、わだかまりもなく、
さらっと、コミュニケーションが終わります。
しかし、今、そこで、自分がダメ出しをしなかったら・・・
・この人は、一生、上達しない。
・きっと、どこかで恥をかく。
・「なぜ認められないんだろう?」と悩み続ける。。。
そんな思いに後押しされるときが、
「相手のために」愛あるダメ出しをすべきときなのです。
もちろん、単に、ダメ出しをしたのでは、
結果は「自分のためにダメ出しをする人」と変わりません。
そこに自分のエゴはないか?
伝えたい思いを、過不足なく伝えられるように、
伝わることばを選べているか?
タイミングをはずしていないか?
表現に、心に届く工夫がなされているか?
そして、なにより、相手がそれを必要としているか?
そんなことをめまぐるしいスピードで考えながら、
同時にことばを発する。
そんな能力が試されます。
ダメ出しこそが「プロの技」を試される仕事なのだと、
痛感する日々です。
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私もダメ出しはよくやります。
「惜しい!ここがこうなればもっと良くなるのに!それが出来る潜在能力は持っているはずなのに!」と思うと、聴いている最中からイライラ、ソワソワしてきて、「黙っていよう」と思っても、思わず言ってしまいます。
ただ、私の場合は、「相手の心に届くように」とか「相手が必要としているか?」は考えないことがほとんどです。
その代わり、相手が私のダメ出しを受け入れたかどうかは確認しないようにしてます。後日、受け入れていないことがわかった場合は、もう何も言わずに離れます。
私の場合、ダメ出しはこちらの勝手な行動です。
ただ、ダメ出しをする者としての、何らかの根拠があります。
例えば、私は約20年間、ブルーノート、コットンクラブ、ビルボードライヴにやってくる世界レベルのシンガーの歌「しか」聴いてなくて、アマチュア、インディーズといったシンガーは聴いたことがありませんでした。
それが、ある日、ちょっとしたきっかけでアマチュア、インディーズを聴くようになった。最初は「何だ、これは????」「どうして、みんな、こんなのに拍手してるんだ???」でした。
この場合、私のダメ出しの根拠は、長年聴いてきた世界レベルのシンガーの歌の蓄積。それに投じた時間、お金、磨かれた感性、知識、努力・・・・等々もあります。
つまり、「勝手なダメ出し」の背後には、私なりの「投資」があって、それを「無料」で提供するわけですから、「受け入れるか受け入れないかは、相手次第」と割り切ります。
相手からすれば、そんなことは知ったことではないわけですが!!
でも、真剣に上を目指す意欲がある人なら、ひとまずは受け止めてみて、残すべきか捨てるべきか、自分なりに判断して決めるんじゃないかと思うのですね。