音色の決め手は「箱」なんじゃ。
昨日、「音」はプレイヤーの命であるというお話をしました。
声は持って生まれるものでしょ?
「音」すなわち「声」が決め手になってしまうなら、
歌なんか、どんなに練習したってダメじゃん。
そんな悲観的な声が聞こえてきそうです。
では、
「音色」は何が決めるんでしょう?
かつて私は、
「音色や音量は体重が決めるのだ幻想」に捕らわれていました。
だから、自分の小さなカラダにコンプレックスを感じ、
長身の人や、胴回りの分厚い人に、
心から憧れて、太ろう、でかくなろうと、
運動と食に励んだりしました。
しか〜し。
ちょっと待って。
冷静にまわりを見渡せば、
お相撲さんのような立派な体格なのに、
蚊の鳴くような声しか出ない人や、
190センチもあるような巨漢なのに、
もこもこ声がこもった人はいくらでもいます。
反対に、身長が小さくたって、
ライオンのような音量の出る人、
重厚なサウンドの出せる人はいます。
ちなみに、ググってみたところ、
私のアイドル、ティナ・ターナーの身長は163センチ。
あの、チャカ・カーンは162センチだそうです。
Googleのない時代、
彼女たちはきっと、170センチ以上あるんだと、
無益に落ち込んでいた自分に教えてあげたい。。。
いや、そうじゃなくって、声の質を決めるのは、
体格じゃなくって、声帯様でしょ?
だから、やっぱり生まれつきってことでしょ?
なるほど、
そんな風に思いたいのもわかる。
しかし、声帯様は楽器の「弦」や「リード」と同じく、
「振動」を生み出すもの。
「よき振動」こそが「よき声の種」とすれば、
もちろん、声帯様を育み、いい状態に保つことは、
必要不可欠ですが、
それだけでは「いい音」にはなりません。
ちょっと考えてみてください。
もしも、最高級の弦を張れば、
最高級の音がするなら、
なぜ、ギターリストは、
あんなにギターそのものにこだわるのでしょう?
超高級リードを使えば、いい音になるなら、
何百万もするサックスはいらないですよね?
音色の決め手は、
共鳴腔の形と状態であるとされています。
共鳴する空間の特徴が、
すなわち音色の特徴になるのです。
かつて、佐々木硝子という会社がつくった、
ガラスのグランドピアノのお披露目イベントに
出演させてもらったことがあります。
ガラスのピアノは、
なんとも不思議な、温かい音色で、
素材が違うと音ってこんなに違うのかと
感動したものです。
つまり、ギターの弦をピアノに張れば、
ピアノのような音になり、
反対にピアノの弦をギターに張れば、
ギターのような音になる。
極論すれば、誰かと自分の声帯様を取り替えたとしても、
やっぱり自分の声になるわけです。
ほら、やっぱり声は生まれつきってことですよね?
はい。
そうとも言えるし、
全くそうではないとも言える、が正解です。
声の音色は声道、すなわち、共鳴腔の
形と状態で決まるわけですが、
人間の共鳴腔ほど、
自由自在に変化するものはないでしょう。
声帯様から上、声の出口までにある、
たくさんの筋肉や粘膜や、
歯や舌や、その他諸々、たっくさんの組織が、
一瞬一瞬その形と状態を変えてゆく。
声の音色は、自由自在に変えられるのです。
モノマネが得意な人はたくさんいますが、
どんなテクニックを駆使しても、
ギターでピアノそっくりの音を出すことはできません。
人間という楽器は、どんな楽器よりも
豊かに、さまざまな音色を表現できるのです。
「生まれつき」のせいにして、
自分自身を信じられないから、
先に進めないんですね。
カラダは完璧です。
そう信じて、前に進むのです。
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