大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

上達するためのプロセス

   

高い声を出したい。
もっと正確にピッチやリズムを刻みたい。
速いフレーズを的確に歌いたい・・・。

そんな思いで、
日々練習に取り組んでいるけれど、

思ったように音域が広がらない、
口やノドがなかなか追いつかない、
せっかく練習でできても、
本番になると、またできなくなってしまう。。。

などという悩みを持っている人は、
意外なほど多いものです。

上達するための練習には
もちろん、ある程度忍耐も根性も必要ですが、
それだけでは、なかなか思ったような結果を出せません。

結果を出すどころか、
時に、カラダの故障を起こしてしまうことさえあります。

「とにもかくにも練習したい」と、はやる気持ちを抑え、
上達するためのプロセスを一から踏んでいけば、
確実に、しかも最短で、
望んだ結果を手に入れることができる。

少なくとも、私はそう信じてきましたし、
レッスンでも実際に、
たくさんの結果を出してきました。

そこで、今日は、
「上達のための4つのプロセス」を、
ご紹介してみちゃおうと思います!

1. 『観察する』

まずは、自分自身を徹底的に観察することです。

高い声を出そうとした瞬間、
速いフレーズを歌おうとした瞬間に、
自分のカラダは何をするのか?
どんな筋肉がどんな風に動き出すのか?

実は、すべてのプロセスの中で、
これが一番難しいところ。

なぜなら、歌う時に使う筋肉のほとんどは、
すべてカラダの内側にあって、
見ることができないからです。

人の脳は視覚から得る情報の方が理解しやすいらしい。
そこが、ヴォーカルという楽器の最も難しいところでもあります。

とはいえ、
練習に息詰まっている人の9割以上が、
「見える部分」に明らかな力が入っています。
だから、観察、観察、観察なのです。

まずは、録画して、
自分のカラダがどんな動きをするのか観察する。
できればスロー再生で、
目に見える範囲の筋肉に、
余分な力が入ってこないかなどをチェックします。

頭が上を向く、
ノドまわりが締まっていく、
カラダの軸が無駄にぶれる、
顔が緊張する、
呼吸が強すぎる・・・すべてNGです。

視覚情報で、力が入る場所をチェックしたら、
次は、カラダの感覚を感じてください。
ある動作をしようと思った刹那、
グッと力が入ってしまうところはないか?
固まってしまうところはないか?

「気づき」こそがはじまりです。

2. 『リセットする』

カラダの力が入ってしまう場所や、
凝り固まっている場所に気づいたら、
次はそこをゆるめていきます。

ある筋肉に不必要な力が入ってしまうとき、
その筋肉を、ストレッチしたり、
マッサージしたり、
シェイクしてゆるめたり、
ということは多くの人がすることです。

それも、もちろん大切なのですが、
思い出すべきは、
カラダは一部分だけで存在しているのではないということ。

カラダのパーツはすべて相互に作用して、
バランスを取りながら働きます。

特定の筋肉に力が入ってしまうのは、
他とのバランスが取れていないから。

ここで見直すべきは「軸の力」です。

発声は運動ですから、
エネルギーをバランスよく、
全身にくまなく行き渡らせる必要がある。

そこで大きな働きをするのがカラダの軸なのです。

これは、どんなスポーツでも、
楽器の演奏でも、
ダンスでも、すべて同じです。

軸がぶれている、
もしくは弱まっているから、
アウターマッスルに無駄な力が入るのです。

全身のバランスを整え、
丹田にぐっと力を感じて、
リラックスした状態をつくります。

これがプロセスの2つ目です。

3. 『繫がる』

全身のバランスが取り戻せたところで、
実際に使うべき筋肉とのコネクションをつくっていきます。

間違った筋肉に力をかけていたのでは、
絶対に動きはスムースになりません。
必要な筋肉にアクセスするための
神経系を呼び覚ます必要があるのです。

「鍛える」のはきちんとコネクションができてから。

まずは、小さな音量から、
ゆっくりのテンポから、
低い音から・・・
フォームが崩れない、楽なところから、
少しずつ負荷をあげていきます。

楽に、心地よく、できることが正しいのです。
必要ならカラダのあちこちに触れて、
力の流れを感じてみることも大事です。

4. 『鍛える』

特定の筋肉と繫がって、
余計な力が抜けてきたら、
やっと、その筋肉を鍛えるフェーズに入ります。

毎日、繰り返し、そして少しずつ鍛えてゆきます。

実際には、1~4の全ての過程は、
行きつ戻りつを繰り返しながら、
少しずつ進行してゆきます。

もの凄く時間がかかりそうに感じるかもしれませんが、
そんなことはありません。

誤作動やこわばりに気づいた筋肉は、
2週間ほどで、少しずつゆるんで、
その機能を取り戻してゆきます。

コネクションをつくってゆくのは、
はじめはよりどころがなく、
もどかしい作業ですが、
ふとした瞬間に「あ、これ?」とわかります。

また、コネクションを築く過程で、
筋肉は少しずつ鍛えられてゆきます。
ここまでに1ヶ月。

毎日練習すれば、
まるっと1ヶ月半あれば、
確実に、上達を感じられるはずです。

あとは、ゴールを細かく設定して、
この1ヶ月半を繰り返していくだけ。

まずは、やってみてください。

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