「まったくおなじ音」は2度と出せない?~SInger’s Tips #19~
長年歌をやっていて、
もっとも難しいと感じることにひとつに、
「おなじ音をおなじ音量、おなじクオリティで繰り返し出す」があります。
例えば私、毎朝神棚に手を合わせているのですが、
目をつぶって、柏手をぽんぽんと2回叩いたとき、
2回のクラップ音は、
一度としてとして「まったくおなじ音」になりません。
一方が他方より、ちょっと大きい、ちょっと小さい、
ちょっと高い、または低い、
密度が低い、高い・・・etc.
手の平のような、比較的シンプルな構造のカラダの部分でさえ、
たった2回、まったくおなじ音を鳴らすのはことほどさように難しい。
ノドのような、複雑な組織はなおさらです。
人間のカラダの状態は刻一刻と変化しているもの。
そのカラダにさまざまな微調整を加えて、
まったくおなじ音、
いや、聴感上、まったくおなじと感じられる音を出せるようになることは、
一音の精度を上げることの次に、
非常に大切なテクニックとなります。
おなじ音を同じように弾いているのに、
音が揺れたり、大きくなったり、小さくなったり、
音色がコロコロ変わったりする楽器は信頼できません。
まずは、信頼できる楽器を手に入れる。
非常に難しいことであると同時に、
楽器としてのカラダの基本の「き」でもあるのです。
◆“MTL ヴォイストレーナーズ・メソッド” 開講!
ヴォイストレーナーとして活躍されている方はもちろん、ヴォイストレーナーを目指す方、トレーナーという仕事に興味があるという方も。業界トップクラスのメソッドと本気で伝わる”ことば”を磨く。
◆一生に一度、集中的に学ぶだけで、”自分で自分に教えること”を可能にするMTL 12。毎週日曜日10時〜Youtubeにて公開中。
◆毎週月曜発行中!声に関するマニアックな情報やインサイドストーリーをお届けする無料メルマガ『声出していこうっ』。バックナンバーも読めます。
関連記事
-
-
「譜面台を立てるか、立てないか問題」を考える。
「譜面台を立てるか、立てないか問題」は、 これまで、さまざまなところで 語ったり …
-
-
「へたくそな自分」を楽しむ
一昔前までは、 『NHKのど自慢』に登場するような、 歌好きのひとたちって、 も …
-
-
自分の「サイズ」に合った声を出す
管楽器ほど、 一目見ただけで音色の想像がつく楽器もないでしょう。 大きさ通り、見 …
-
-
声の温度。歌の肌触り。音の匂い。
ボタンひとつで音色を自在に変えられる、 いわゆるデジタル・シンセサイザーが登場し …
-
-
ルーティンワークで「微差」をつかまえる。
鰻屋を営んでいた母方の祖父は、 生前、お昼ごはんに、 毎日お店の鰻重を食べていた …
-
-
引き返せない場所へ、自分を連れて行け!
うるゴメ時代。 私にとっては、バンドでのメジャーデビュー作品となる、 アルバムの …
-
-
げに不安定な音を奏でる、完全なる楽器?
歌に真剣に取り組むほどに、 人間のカラダという楽器の奏でる音の不安定さに、 気が …
-
-
「どうせ向いてない」を変える3つのプロセス
楽器の練習や歌の練習、パフォーマンスや創作活動がうまくいかないとき、 自分がどう …
-
-
イケてないプレイヤーは弾きすぎる。
イケてないプレイヤーは弾きすぎる。 よく言われることばです。 例えば、 ソロを弾 …
-
-
「やるっ!」と決めた時から、旅ははじまっている。
「がまん」という言葉が嫌いです。 やりたいことこそ、やるべきことで、 やりたくな …