大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

世界観を限定するほど、多くの人に刺さる!

   

先日『THE GUILTY ギルティ』というデンマーク映画を見ました。

あまり詳しくは語りたくありませんが、
電話の向こうで起きる事件を題材にした映画で、
主人公が電話を通じて、
さまざまな人と情報交換をすることで、
ストーリーがどんどん進行していきます。

映画が終わって、
解説のイラストレーター・信濃八太郎さんが、

「この映画を見た人は、みんな違う顔、
違う情景を見ているんだと思ったら、
とても不思議な気持ちになった」というようなことを言っていて、

あぁ、だからこそ、ストーリーに広がり感、
奥行き感があるんだよなと、しみじみ共感しました。

歌しかり。
小説しかり。

例えば、私、高校時代、
レイモンド・チャンドラーの探偵小説にしびれまくりまして。
主人公のフィリップ・マーロウのセリフも、
どれだけ暗記したかしれません。

ある日、そのフィリップ・マーロウ・シリーズの中でも、
名作中の名作と言われる作品を洋画劇場でやるというので、
それはそれは楽しみに、テレビの前に陣取りました。

ところがです。違うんです。

顔も違う。
声も違う。
洋服のセンスも、髪型も。。。

もうどれを取っても「あんた、誰や?」なんです。

じゃ、どんな顔なら、どんな声ならいいのか?

・・・そういえば、そんなこと、
考えたこともなかったことに、
そのときはじめて気づきました。

ただ、知っている。
私のマーロウは、この人じゃないっ!
そんな感覚でした。

 

先日、MTLネクスト・エッセンシャルズの受講生のおひとりが、

「私、いつも、この歌をつくった人は、どんな景色を見ていたんだろうと、
一所懸命思い浮かべようとするんですが、うまくいかなくて・・・」

というようなことをおっしゃっていて、

そうそう。それは無理なんです。
と、お話しました。

 

自分が大好きな曲の中で降っている「雨」は、
自分だけの、これ以上ないくらいプライベートな「雨」。

歌手が歌っている「雨」とも違う。
作詞家が表現したかった「雨」とも絶対違う。

もしも、誰かが、その「雨」を映像化したら、
「違ぁ〜〜うっ!」って叫ぶくらい違う。

100人いたら、100の風景がある。
100の雨音があって、
100の匂いと温度がある。

だからこそ、アートって、素晴らしい。

 

表現者は、とにもかくにも、
自分の「雨」を表現しきる。

その表現がリアルであるば、あるほど、
聞き手は、自分だけの「雨」を見る、
感じることができる。

そんな歌い手でありたいと思うわけです。

 

◆6日間で基礎を終わらせる。【MTL ヴォイス&ヴォーカル レッスン12】第9期のお申込み受付中。
◆ワンランク上を目指すシンガーのためのスーパー・ワークショップ“MTLネクスト”、満席です。キャンセル待ち受付中。

 - B面Blog, ある日のレッスンから, 歌を極める

  関連記事

「最後にマイクで歌ったのも、すごく気持ちが良くて最高でした✨」

MTLワークショップ in 東京vol.3の受講生からおよせいただいたご感想を紹 …

「本当に有名な人」は、意外なほど気づかれない。

「あら?今日はマネージャーさんの車で来たんじゃないの?」 ドラマに、CMにと、活 …

「自分が嫌い」の爆発的エネルギー

思うように行かないことは、いつだってあります。 自分が望むような方向に人生が流れ …

音楽ソフトが使いたい!でも、PCが苦手?

最近昔話ばっかりで恐縮です。 生まれてはじめて、 自分でオリジナル曲を録音した時 …

「今さら?これから始めてモノになるの?」

ビデオレターの課題を続々と送っていただいていますので、 一部になりますが、少しず …

カラダに染みこませたものは裏切らない。

若かりし頃から、使った「歌詞カード」を 大切に取っておく習慣があります。 「ネッ …

腰が硬い人はリズムが悪い!

以前教えていた音楽学校で、 「演奏中の動きがぎこちない学生が多い」という話になっ …

うっそくっさいブランディングは、いい加減やめよう。

かつて業界では、 ミュージシャンでも、タレントでも、 デビューさせるにあたり、 …

no image
ビジネスコース”マジトレBIZ6Days”の嬉しい副作用

先日もボイトレでキレイになった方のお話を書いたばかりです。 あんまり、「ボイトレ …

「いいね」が消えた日。

他人の評価なんか気にするな。 自分で自分をどう思うかが大切なんだ。 数字のゲーム …