世界観を限定するほど、多くの人に刺さる!
先日『THE GUILTY ギルティ』というデンマーク映画を見ました。
あまり詳しくは語りたくありませんが、
電話の向こうで起きる事件を題材にした映画で、
主人公が電話を通じて、
さまざまな人と情報交換をすることで、
ストーリーがどんどん進行していきます。
映画が終わって、
解説のイラストレーター・信濃八太郎さんが、
「この映画を見た人は、みんな違う顔、
違う情景を見ているんだと思ったら、
とても不思議な気持ちになった」というようなことを言っていて、
あぁ、だからこそ、ストーリーに広がり感、
奥行き感があるんだよなと、しみじみ共感しました。
歌しかり。
小説しかり。
例えば、私、高校時代、
レイモンド・チャンドラーの探偵小説にしびれまくりまして。
主人公のフィリップ・マーロウのセリフも、
どれだけ暗記したかしれません。
ある日、そのフィリップ・マーロウ・シリーズの中でも、
名作中の名作と言われる作品を洋画劇場でやるというので、
それはそれは楽しみに、テレビの前に陣取りました。
ところがです。違うんです。
顔も違う。
声も違う。
洋服のセンスも、髪型も。。。
もうどれを取っても「あんた、誰や?」なんです。
じゃ、どんな顔なら、どんな声ならいいのか?
・・・そういえば、そんなこと、
考えたこともなかったことに、
そのときはじめて気づきました。
ただ、知っている。
私のマーロウは、この人じゃないっ!
そんな感覚でした。
先日、MTLネクスト・エッセンシャルズの受講生のおひとりが、
「私、いつも、この歌をつくった人は、どんな景色を見ていたんだろうと、
一所懸命思い浮かべようとするんですが、うまくいかなくて・・・」
というようなことをおっしゃっていて、
そうそう。それは無理なんです。
と、お話しました。
自分が大好きな曲の中で降っている「雨」は、
自分だけの、これ以上ないくらいプライベートな「雨」。
歌手が歌っている「雨」とも違う。
作詞家が表現したかった「雨」とも絶対違う。
もしも、誰かが、その「雨」を映像化したら、
「違ぁ〜〜うっ!」って叫ぶくらい違う。
100人いたら、100の風景がある。
100の雨音があって、
100の匂いと温度がある。
だからこそ、アートって、素晴らしい。
表現者は、とにもかくにも、
自分の「雨」を表現しきる。
その表現がリアルであるば、あるほど、
聞き手は、自分だけの「雨」を見る、
感じることができる。
そんな歌い手でありたいと思うわけです。
◆6日間で基礎を終わらせる。【MTL ヴォイス&ヴォーカル レッスン12】、第9期のお申込み受付中。
◆ワンランク上を目指すシンガーのためのスーパー・ワークショップ“MTLネクスト”、満席です。キャンセル待ち受付中。
関連記事
-
-
ロックはエネルギー!
先日のロック・セミナーで、 「ロックはエネルギーだ」というお話を、 繰り返し、し …
-
-
成長に痛みが伴うのは、 本気度を試されているから。
高校1年の夏だったと記憶しています。 手足が痛くて、眠れない夜が続きました。 筋 …
-
-
カツゼツッ!!!
普段はほとんど興味のないテレビですが、 さすがに昨今、 ニュースくらいは見ておか …
-
-
「歌がうまい」って、なんなのよっ!?
歌なんか、習うもんじゃない。 ウンザリするほど聞いたことばです。 正直、私もずっ …
-
-
歌を学ぶ人の3つのステージ
私は歌を学ぶ人には、 3つのステージがあると考えています。 ひとつめは楽器として …
-
-
寝かしても、修正しても、ダメなアイディアはダメである。
ブログの更新が滞っている時は、 たいがい、Upしようとした記事を途中でボツにして …
-
-
「いいわけ」100連発。
お金がない、 時間がない、 ノウハウがない、 若さがない、 美貌がない、 エネル …
-
-
想像力は人の痛みを知るためにある。
2002年、 ふらっと訪れた旧友たちの住むニューヨーク。 以前住んでいたアパート …
-
-
上達するためのプロセス
高い声を出したい。 もっと正確にピッチやリズムを刻みたい。 速いフレーズを的確に …
-
-
自分にない価値観を学ぶのが学習ってもんだ
大学で2年生のアンサンブルという授業を担当しています。 用意された課題曲を、 楽 …
- PREV
- 自分の行動には自分で責任を持つ。
- NEXT
- 「結局、誰よりも渇望した人間が・・・」