大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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「エアギター」のススメ

   

ギターリストになりたくて、
明けても暮れても練習していた時代があります。

今やこれを語るときはネタ扱いですが、
当時は、本当に真剣に練習し、
ちっとも上達しないことを、本気で悩みました。

ジェフ・ベックみたいに弾きたいのに、
どうやって弾いたらジェフ・ベックになるのか、
まったくわからないわけです。

音量を大きくしてみました。
→苦情が来た。

手当たり次第エフェクターを繋げてみました。
→音がぐっちゃぐっちゃでわけわからなくなった。

ジェフ・ベック奏法の本を買って、練習してみました。
→”ジェフズ・ブギー”とか”グリーンスリーブス”とか、
とにかく教本見ながら弾ける曲の、弾けるとこだけ練習したけど、
結局一番弾きたいギターソロは手も足も出なかった。
(後年、ぼろくそに言われた、あの、教則本です)

ジェフ・ベックとおんなじ弦を張ってみました。
→太すぎて、全然うまく弾けなかった。
(後年、そういうウソな情報鵜呑みにしてたんだ。。と言われた弦です。)

ジェフベックのギターっぽくするために、
ギターをあちこち削ってみた。
→シロウトがやりがちな愚行。

そうして、なにをやっても弾けなかった私は、
ロック好きの若者なら、
絶対密かにやったことのあるはずの、
例の行為に没頭します。

 

そう。エアギターです。

一応、ちゃんとギター持ってやるんですよ。
気分は弾けてるんです。
弾けるとこだけ、ちゃんと一緒に弾く。
でも、基本はエア。

まぁ、思い出すだに、
小っ恥ずかしい行動ですが、
お話はここからです!

このエアギター、
よりちゃんと弾けてる気分になるためには、
指の動きとか、右手の動きは、
シンクロしなくちゃダメなんです。

だって、気分はジェフ・ベックですから、
ジェフ・ベックが「くぃーん」するときには、
チョーキングして、
「ガガガガガガ」するときには、
一緒にピッキングして、
「てぃらり りらり りらり」するときは、
一緒にハンマリングやプリングやスライドしなくちゃいけない。

だからめっちゃ音源聞くんですね。

で、この細かいフレーズを覚えるのに、
最も手っ取り早いのは、口コピでした。

ジェフ・ベックのギターを口でコピーして、
その自分の口コピーにあわせて、
エアギターをやるわけです。

おかげで、自慢じゃないけど、
今でも「あ、そのフレーズ違う」とか、
すぐわかっちゃう曲が、結構あります。

さて。

実はこの、
「あんた、なにやってんの?」みたいな行動が、
歌の練習に、もの凄くよかったらしい。

エレキのバッキングでビートを刻む感じ。
ドラムやベースとシンクロしていく感覚。
ロック的なグルーブ感。
1音1音を立てる感覚。
バイオリン奏法のように、音をフェイドイン&アウトする方法。
速弾きを口でリズムよく、ビートよく再現するコツ。
高い音から、低い音まで、メロが移り変わっていく感覚。
そして、コード進行の中で、
自由自在に繰り出されるフレーズの動き。

聞くたびに発見と驚きの連続だったインスト曲を
とにかく夢中になって聞き込んだことで、
さまざまな楽器の音、
ロックのグルーブを全身で感じられるようになった気がします。

およそ、歌の練習とかけ離れた、
ギターの口コピとエアギター。

まぁ、人様にオススメするようなことではありませんが。
(恥ずかしいし)

なんでも楽しんで、夢中で取り組むことは、
無駄にならないんだよなと、
今でも時々こっそりエアギターをしながら思うのです。

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