大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「〜だと思います」と言わない勇気。

   

B面ブログを本格的に書きはじめたとき、

「『〜だと思います』ということばは、つかわない。」という決心をしました。

 

地味な決心ですが、これが実は非常に勇気のいることです。

 

たとえば、

「明日の夕方は雨が降ります」と言うのと、

「明日の夕方は雨が降ると思います」と言うのとでは、

受け手の印象がまるで違います。

 

もしも、そのことばを信じた人たちみんなが傘を抱えて出かけたにも関わらず、
一滴も雨が降らなかったら・・・?

後者なら、

「あ〜、ごめんごめん。そう思ったんだけど、やっぱり降らなかったね〜」

と軽く言えちゃうかもしれませんが、

きっぱりと、「降ります」と断定的に口に出してしまった前者はそうは行きません。

 

それだけ、ことばの使い方ひとつで、
覚悟や責任の重さは違ってくるということなのです。

 

もちろん、新聞や雑誌などのように影響力のあるメディアに書くわけではないし、

私自身、世間がその言動、一言一句にアンテナを張り巡らすような、
有名人、著名人、というわけでも、

一言書くと大炎上するような人気ブロガーというわけでもない。

 

世間的に見て、大成功しているわけでも、
大きな会社の社長さんや、大きなコミュニティのトップのように、
何かと人の注目を浴びるような存在ですらありません。

言ってしまえば、誰も知らない秘密の私。

世の中のすべての人と同じように、知る人だけが知っている、
ちょっぴり一般の平均的な人たちよりはエネルギー量の多い程度の、

いち、ボイストレーナー。
いち、ミュージシャン。
いち、著者。

 

その程度の人が、しかも、たかがブログで、
間違ったことや、見当違いのことを言ってしまっても、
別に関係ないんじゃない?

と、自分に言い聞かせながらも、

それでも、なんでも、

自分が信じることを、
不特定多数の人たちに向かって、「○○である」と言い切ることは、
やっぱり、本当に勇気のいることであります。

 

そうして、書き始めた当初は、
せいぜい100人くらいの人に、読んでもらえれば嬉しいくらいだったのに、

 

だんだんと、読者さんが増え、今や、毎日1000人以上、
多いときには1日に4000〜5000人もの人に読んでいただくブログになり、

なおさら、覚悟と勇気を試されている気分で書いております。

 

だってね。

 

音楽業界には、大先輩がたくさんいます。
誰が聞いても知っている超有名ミュージシャンから、

私なんざ、足元にもおよばないほどの
実績や実力をお持ちベテランミュージシャン、

スタジオに作編曲にと超多忙で、
年収何千万もお稼ぎの超売れっ子ミュージシャン・・・

 

そ〜んな方々が、ひょっとしたら読んじゃうかもしれないような状況で、

いや、実際に、「ブログ読んでるよ」と大先輩に言われたり、
「いいね」していただいたりすることしばしばという、
恐ろしい状況の中で、
こうして歌のこと、プレイヤーのこと、
音楽のこと、音楽業界のこと、などなどなどを、

「〜と思います」という逃げことばなしに、書き放つ。

 

実は、毎日、

 

このブログは、誰かを傷つけてないか?
誰かを糾弾したり、誰かの気持ちを害したりしないか?

このブログは、人の誤解を招かないか?

このブログは、自己満足になってないか?
自分を大きく見せるために書いていないか?

このブログは、ただブログを書くために書かれていないか?

誰かの心にきちんと届くか?
正しいメッセージを伝えてくれるか?

このブログは、私らしく、私のことばで、書かれているか?

 

 

そんなことを自分に問いかけながら、何度も何度も読み返し、
毎日、ジェフ夫さんにもちゃんと聞いてもらって、
時に叱られて書き直しをしたりして、

 

祈るような気持ちで、えいっ!!!と「公開」ボタンをクリックしているのです。

 

個人的には、このブログは、
「私という人間のコンテンツのすべてを文字化する」という、
プロジェクトの一環として書き始めました。
実は「自分のボイトレメソッドを完全に文字化する」という、
プロジェクトをスタートしたところ、
メソッドにはならない、
でも、もしかしたら、ボイトレメソッドそのものよりも、
大切かもしれないことを、エッセイ風に書いてみようと思ったのがきっかけです。

 

こんな私のことばが、少しでも、誰かの役に立つなら、と、
心を込めて、書いています。

私のことばがおもしろくないと感じる人もいるようです。

「お前は何様だ?」と、本気で不愉快に感じる人もいるかもしれません。

 

私は私です。
これまでも、これからも、それだけは変わりません。

 

偉ぶるつもりも、知ったかぶりをするつもりも、
大物を気取るつもりも全くありません。

むしろ、書くほどに、自分の小ささにうんざりする日の方が多いくらいです。
それでも、私は私のまま、私のことばで、今日もブログを書いています。

 

今日も読んでいただいてありがとうございます。

36534201_s

 

 - My History

Comment

  1.  Tony Takano より:

    先日仕事でお一人の契約社員さんの契約を終わりにしました。自分が社長でもないですが、聞く側は会社側メッセージを聞くわけで、思い切り断定口調の連絡にせざるを得なくなりました。無責任な決断だけには見えてはいけ無かったので。なんとかご理解いただけたはずです。

  2. 小澤祐一郎 より:

    初めまして、小澤祐一郎と申します。
    今回初めて返信しました。
    毎回きちんと読ませていただいています。
    そんな読者もいることをわかっていただければ幸いです。

  3. otsukimisumi より:

    >小澤祐一郎さん

    ありがとうございます。とても嬉しいです。

  4. otsukimisumi より:

    >Tony Takanoさん

    ことばはつかう人の責任をともなうものです。
    同時に、キッパリとしたことばをつかうことで、送り手の覚悟も伝わるものではないでしょうか。
    言いにくいことほど、断定的に言わなくてはいけない。苦しいですけどね。

  5. 田中敦子 より:

    misumiさんのこのブログ、大好きです。
    私は将来、音楽で人と人を繋ぐ仕事をしたいと思っています。
    今は子育て中で、自分の音楽もままならない毎日。
    でも、このブログを読むことで思い出せます。
    なぜ私は毎日歌うのだろう。って。
    これからもずっと続けてください。
    応援していますね!

  6. otsukimisumi より:

    >田中敦子さん

    とても励みになるコメント、ありがとうございます。
    がんばります!

  7. TAKA より:

    読み手は違う人間で、それがたくさんいるわけですから、「どう受け取られるか?」に違いやバラつきが出来るのは仕方ないですね。

    私も、このブログを見つけてから、いろんな記事にちょこちょこコメント書かせてもらってますが、それらが読み手みんなを代表しているわけでもない。

    書き手として、一生懸命に覚悟を持って書かれていることはよくわかりますね。
    これだけの中身のある記事をこれだけ続けていること、凄いと思います。
    時には失敗や間違いもあるでしょうけど、無責任な読み手なんかより遥かに大きな覚悟を持って記事を書いて公開されているわけですから、ブレないことが大切ですね。

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

  関連記事

「アイデンティティ」と向き合う 〜from USA①〜

週明けから10日ほどの予定でニューヨークに来ています。 ニューヨークは1992年 …

バンド世代 vs. カラオケ世代

こどもの頃から楽器を練習している人でも、 自分の楽器以外のことはわからないという …

「歌に必要なすべて」って何だ?

一般の人向けの歌の講座って可能なのだろうか? 2015年9月、休暇でニューヨーク …

バンドマンって、大変なんだ。

はじめて「フライヤー」ということばを聞いたのは、ニューヨークで初ライブをやったと …

「ときめかない」ものは、「ときめかない」。以上。

こどもの頃から、アイドル歌手というものに、 ホントに興味が持てませんでした。 友 …

世の中には、「カッコいい人」と「それ以外」しかいない。

「MISUMIぃ、お前さぁ、化粧品減って仕方ないだろぉ〜。 ハ〜ッハッハッハッハ …

「所詮同じ人間」という前提に立つ。

誰かにできて、自分にできないことを、 生まれや育ちの違いのせいにしてしまうのは、 …

聞く人を黙らせる、圧倒的な歌を歌う

大学を卒業してフリーターをしながら、 あちこちのセッションで歌わせてもらっていた …

「エアギター」のススメ

ギターリストになりたくて、 明けても暮れても練習していた時代があります。 今やこ …

期待される人であれ。

ニューヨーク時代のこと。週1回、ジャズダンススタジオでレッスンを受けていました。 …