『きみ、ホントに、よくプロになれたよねぇ。』①
2015/08/21
『コーラス上達法』の続きを書こうと思ってつらつら思い巡らせているうちに、
自分の過去を思い出して、なんだかむずむずしてきたので、
今日から、『きみ、ホントに、よくプロになれたよねぇ。』というタイトルにて、
ダメダメだった駆け出しの頃の私の話を書いてみようと思います。
これを読むと、自信を失いかけている人も、元気が出ること、間違いなしです。
生まれてはじめてのお仕事は、
たしかプレイボーイかなにかのグラビア・アイドルさんのバックコーラスでした。
本番は小さなライブハウスで1本だけ。
同じ音楽学校の先輩に「やってみる?」くらいの軽いノリで頼まれ、
サークルの後輩に声をかけ、(なんたるテキトーな人選!)
小さなスタジオで1〜2回リハして、訳もわからずステージに立って、
ちょちょいのちょいで本番を終え、お小遣い程度のギャラをいただきました。
正直、そのアイドルさんの名前も、
やった曲も、その時のメンバーも全然覚えていないのですが、(ごめんなさい)
唯一、アンコールで、
素肌に男物のワイシャツだけ、というエッチな服装で登場した彼女が、
『END OF THE WORLD』をしっとり歌っていたことだけが鮮明に思い出されます。
思えば、この、「お仕事」とは言えないお仕事で、
なんにも考えず、ただなんとなくそこにいただけで、
叱られることも、注意されることもなく、
ちょこっとお小遣いをいただけたことで、
「なんだ、コーラスの仕事って、こんなもんなんだ。」と思ってしまったのが、
そもそもの大間違いでした。
本格的なお仕事デビューは、その数ヶ月後。
同じく音楽学校の友達に、
とある男性タレントのツアーのトラを2本、頼まれたことがきっかけでした。
「トラ」とは「エキストラ」の業界用語で、「代役」のこと。
全部で20数本のツアーの、2本だけ、
それぞれ別の子の代役としてステージに立つことになりました。
これが、もう、カルチャーショックの連続。
ほどなく。グラビア・アイドルのライブは、単なるライブのお手伝いであって、
「お仕事」ではなかった・・・と学ぶことになります。
まずは、いきなり、送られて来た資料の量に愕然。
カセットテープ(当時はまだカセットでしたのよ)数本に渡る、
オリジナル音源とリハーサル音源。
20数曲のコーラス譜、マスターリズム、メロ譜、歌詞カード、などなどの、書類の束。
どさっと送りつけられてきた時には、気が遠くなりました。
マスターリズムだの、コーラス譜だの言われても、
何が何だかわからず、
資料を聞いても、どこを歌うのかすら、さっぱりわかりませんでした。
友達に電話をすれば、
「リハやればわかるから。音、聞いてきてね」
と軽〜く言われるのみ。
とんでもないことになっちゃった・・・と気分が悪くなったのを覚えています。
なにしろ、最初の本番が、なんと、横浜スタジアム。
生まれて初めてのお仕事にしては荷が重すぎませんか???
そこから本番までのダメダメぶりは、もう書き始めるときりがないので、
かいつまんで書けば、
1.業界人なら誰もが知っているリハーサルスタジオ、「つづきスタジオ」の入口で、
あまりにおどおどし、素人くさいため、守衛さんに胡散臭い顔で見られた。
2.リハーサル初日は、あまりのスタッフの多さと、優れた音響で、
自分の声があまりにくっきり聞こえてしまうことにビビり、全く声が出なくなった。
3.譜面が全く読めず、相方に口伝えで音を教わっても、
リハを録音したテープをとにかく繰り返し聞いても、
全然音を覚えられず、絶望的な気分になった。
4.本番当日の入り時間の説明をする舞台監督に、
「ファンと間違えられて、
楽屋口から入れてもらえないことはないでしょうか?」と聞いたら、
「シロウトじゃないんだから!」と笑い飛ばされた。
4.いわゆる「コーラス踊り」が全く踊れず、ステージの上で、
不安でたまらず相方の方を見ていたら、「ちゃんと前むいて!」と突き飛ばされた。
5.まともにお化粧をしたことがなかったため、相方に激しく化粧を注意された。
正直、横浜スタジアム当日のことは、
リハが炎天下でやたら暑かったことと、楽屋の風景、
そして、ちょいっと突き飛ばされたことくらいしか覚えていませんが、
さぞかし酷いコーラスをしたであろうことは、想像にかたくありません。。。
穴があったら入りたい。
しかし・・・しかし、なのです。
ダメダメだった横浜スタジアムが終わり、2本目のコンサートのあった旅先でのこと。
さまざまな事情から、横浜スタジアムで一緒だった相方の代わりに、
私に、ツアーの残りの20数本をやらないか?というオファーが来てしまいました。
かくして、ダメトラだった私は、
そのまま、ダメコーラスとして、人生初のサポート仕事で、
全国ツアーを回ることになります。
これがまた、ホントにダメツアーで。。。
長きにわたり、私のトラウマとなることになります。
こんな私のダメストーリー、興味あるかなぁ・・?
などと、ちょっと不安になりつつ・・・また、書きますね。
関連記事
-
-
バブル期のカラオケ制作現場は、めっちゃすごかった!
「わかってんの? プロのミュージシャンとかいうのは、歌謡曲のカラオケつくったり、 …
-
-
「本屋を探しても答えがみつからなかったら、そん時はお前がその本を書け」
「わかないこと、知りたいことがあったら本屋に行け。 世の中には、お前とおんなじよ …
-
-
譜面台を立てる時のチェックポイント〜本編〜
さて、お約束どおり、 今日は、自分のための記録の意味も込めて、 「譜面台を立てる …
-
-
時代が変わって、「歌が好き」という人たちの思いは、 どれだけ変わったのだろう。
「困ったことがあったら本屋へ行け。 自分が困っていることは、他の人も同じように困 …
-
-
「好きなことやれよ」
「好きなことやれよ。 好きなことのない人生なんて、つまんねーぞ。」 私の人生にも …
-
-
「変わってる」って、なんだよ?
自分は何に、どんなことに、反応する体質なのか。 自分のアンテナは何に反応し、どん …
-
-
「がんばるのが好き」なんてヤツが世の中にいるのか?
私に関するひどい誤解のひとつに、 「MISUMIはがんばるのが好きだから」という …
-
-
「R&Bって、お洒落やねん」
連日ワークショップの仕込みをしながら、 遠い昔の友との会話を心の中で無限リピート …
-
-
あぁ、あこがれの「ビッチ感」
人にこう見られたい、というイメージと、 実際の自分自身が人に与えるイメージに開き …
-
-
なんで、「できる」って言っちゃうんですか?
まだ小学生の頃だったか、 おとなたちが屋外で音楽をかけながら、 パーティーをして …
- PREV
- コーラス上達法①『まずは、歌う音を探す』
- NEXT
- 音楽家なら必ず鍛えたい「耳」のお話