ことばの力 ― 天は自ら助くる者を助く。あーめん。 ―
「メリークリスマス。
勉強がんばってますか。
お手伝いしてますか。
けっこう。けっこう。
天は自ら助くる者を助く。あーめん。」
こんなふざけたクリスマスカードをくれた我が家のサンタクロース。
クリスマスがくるたびに、ワインを飲んで、真っ赤になった、父のご機嫌な顔を思い出します。
本が大好き。書くことが大好きだった父。
小説を書いたり、詩を書いたりもずいぶんしていましたが、どちらかというとクリエイターというよりは、学者肌。
なんでも納得いくまで徹底的に調べては、自分なりの見解を見出すのが大好きでした。
40代になってからだったか、邪馬台国にハマって、専門の測量的な知識を元に閃いた自説を証明すべく、歴史関係の本はもちろん、ハワイポリネシアン諸語だの、ドラビダ語だのと、次々と語学の本を買い求めては、研究と執筆に没頭していました。
本業は建築士でしたが、休日だけでなく、仕事の移動時間、頭の中は、常に邪馬台国でいっぱいだったようです。
研究したいことがありすぎて、「時間が足りない」が口グセでした。
小学校に入学した時のこと。
父は私に、厚紙を表紙に見立て、原稿用紙を挟みこんだものに、「みすみの詩」とタイトルをつけたものをくれました。
それが私の最初の詩のノートになりました。
1年前に同じように父に詩のノートをもらっていた姉は、なんだか独創的な詩を書いて父を感動させていましたが、私自身が何を書いたか、さっぱり思いだせません。
それでも、その題字のついた原稿用紙のカバーをもらった時のことは、今でも鮮明に覚えています。
表紙に自分の名前が書かれていただけで、なんだか特別な力をもらった気がしたものです。
そう、それこそが「ことばの力」。
思いついたことを自由に書けばいい。
突拍子もないことだって、たんなる思い付きだって、ことばにしたとたん、力が生まれる。
本を読むのが嫌いだった私。
「本を読め。ボキャブラリーを増やせ。」という父に反発して、「ことばなんか知らなくたって、困らないもん」と言ったことがあります。
「そうか?じゃあ、お前は、ものを考える時、どうやって考えてる?
ことばだろ?ことばってのは、ものを考える力なんだぞ。」
反抗期真っ盛りだった私。
「てやんでぇ」とそっぽを向いたのだったけど、そのことばは、頭の中に今もしっかりあって、私を支えたり、励ましたり、蹴飛ばしたりしてくれます。
考える時も、書く時も、語る時も。
ことばってすごいな。
ことばを持っててよかったな。
そんな風に思い、父のくれた詩のノートを思い、
そして、父とまた、いつか、いろんな話をしたいなと思うのです。
いつか邪馬台国の本を出版するのが夢だった父は、道半ばの55才で、急逝しました。
メリークリスマス。
いろいろ苦しいけど、
今年も「天は自ら助くる者を助く」と「あーめん」を思い出して、ちょっとクスッとしながら、幸せなクリスマスを過ごすことにします。
ことばの力。
父が私にくれた最高の贈り物のひとつです。
あなたも、よきクリスマスを。

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