大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

MCって、どうしたらいいの?

   

かつては、MCというものが本当に苦手で、
ライブ当日何しゃべったらいいの?と考えるだけで、
気が重くなっていました。

洋楽ロックのコンサートしか行ったことがなかったこともあり、
なんならMCなんかいらないんじゃない派の私。

外タレのコンサートでは、
“How are you doing, TOKYO〜〜?”と煽ったり、
“This a song called…”という曲紹介こそあれ、

「本日はお日がらもよろしく」的なごあいさつもなければ、
ご当地ネタや世間話ももちろんないわけで。

「全部曲つなぎとかにしてくれたら、いいのに」とか、
「無理にしゃべらなくてもよくない?シーンとなっちゃったっていいでしょ?」
くらいに、ずっと思っていたわけです。

ところが、そうもいきません。
いきなりシーンとなるとお客さんが不安そうになるし、
ステージ上も妙な空気が流れるんですね。

仕方なく、台本を書いてライブに臨むことにしました。

「みなさんこんばんは。
今日はこんなにたくさん来てくれてありがとうございます。」
と台本通りしゃべって会場を見渡せば、客席がまばらだったり、
「それじゃ、こんな真夏の暑い夜にふさわしい曲を!」と準備していたのに、
その日に限っていきなり気温が下がったり。

台本をひととおりしゃべって、
「それじゃ、次の曲、聞いてください」と言った瞬間に、
「ごめん!弦が切れた!つないでて!」などと言われて、
へどもどになったことも、何度もあります。

「日頃おしゃべりなんだから、普通にしゃべれるでしょ?」
などと、よく言われたものですが、

マイク片手にライトを浴びて、お客さんに向かってしゃべるなんて、
日常とかぶることはひとつもありません。

しかも、直前までロックな気分全開で激しく歌い踊った後で、
ただでさえ、歌うと別人などと言われる私が、
どんなテンションで一体何をしゃべればいいのか。

いきなり素に戻って、かしこまるのも違う。
妙にテンション高く、「盛り上がってる〜?」なんて言うのはもっと違う・・・。

 

長年の悩みは、
ある日のライブでいきなり、その出口をみつけました。

ごくアットホームな、
20名も入ると満杯というサイズのお店で演奏した時のことです。

その日のお客さんは、音楽仲間や友達ばかり。
いわば、ホームパーティーのような雰囲気で、
めちゃくちゃリラックスした気分でステージに上がった私は、
MCをしているという意識すらなく、
気づけば、いつも友だちに飛ばすようなジョークや、
熱い語りを調子よく連発していました。

結果、MCは、自分史上かつてない大ウケだったのです。

その時ふと、
MCは、何をどう話すか、なんてテクニック的なことより、
誰に、どんな気分で語りかけるかが一番大事なのだと気づいたのです。

不特定多数の「みんな」に向かって話しかけるから、目も気持ちも泳ぐ。
「みんな」に話しかけようとすれば、結局だれにも届かない。

今、目の前にいる、たった一人の「あなた」に、
楽しい気分になってもらおう、
このメッセージを届けようと、向き合うと、
ことばは自然に出てくるのだと、
ふわっと腑に落ちたのです。

 

そこから、MCで悩むことはほとんどなくなりました。
もちろん前もって、こんなことを言おうと考えておくことはありますが、
あくまでも、友達に、こんなことがあった、
今日はこんな感じでやるから、と伝えるようなカジュアルさを失わないようにしていると、
ことばは自然に出てくるようになりました。

MCで悩んでいる方は、ぜひぜひ、試してみてくださいね。

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