大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

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スリルとサプライズが、演奏に火をつける

   

バンドをやったこと、ありますか?

高校2年でバンドをはじめて、いまだにバンドでライブをやっている私は、根っからのバンドマン。いや、バンドウーマン。
どれだけ歌でお仕事をしてきても、この根っこは変わりません。

バンドで活動していく上で、常に心がけているのは、メンバーに「サプライズ」を与えること。

といっても、別に、いきなりプレゼントをしたり、イベントを仕掛けたりというようなことではありません。
音楽的なサプライズを仕掛けたり、ステージ上でメンバーがドキッとするようなパフォーマンスをするという意味です。

人はドキッとした瞬間にアドレナリンが出る。
このアドレナリンが、新たな化学反応を引き起こす。
火事場の馬鹿力のような、素晴らしい演奏を引き出す。

メンバーの「おぉっ!」という心の叫びと共に熱量もが〜っと上がっていきます。
実際、演奏がガラッと変わることさえあります。

「ステー上で起こるスリル」は、お客さんに伝播します。
場のエネルギーがどんどん盛り上がって、演奏もさらに熱量を増していきます。
この「スリル」や「サプライズ」を担うのは、やっぱりヴォーカリストなのだと思うわけです。

 

「スリル」や「サプライズ」が場の空気を大きく盛り上げるのは、セッションでも、レコーディングでも、そして、講演やセミナーでも同じ。
どれだけ完成度の高い演奏をしても、どれだけいいコンテンツを提供しても、そこに「スリル」や「サプライズ」がなかったら、聞き手の心は動かせません。

心が動くから、記憶に刻まれる。
また聞きたい、また会いたいと思う。

もちろん、「いつものあれ」や、「お約束の定番」は、なくてはダメです。
新しい情報は人を不安にさせます。逆に新しい環境に慣れようと脳が働き過ぎて、心が動き出すのに時間がかかります。
だから予定調和は必要不可欠という前提のもとに、「サプライズ」をどう仕掛けるかがパフォーマーの腕の見せ所というわけです。

 

プロのパフォーマー/シンガーたちは実際に、こんなくふうをしています。

・リハでは歌わなかったとっておきのフレーズやアドリブを本番で披露する

・本番でエネルギー量がマックスになるよう、リハでは最低限の「確認」や「サウンドチェック」にとどめる

・最低限「動線確認」「照明確認」をしておいて、本気の動きやパフォーマンスは本番まで出さない

この他にも、衣装やメイク、MC、スモークや花火の演出など、仕掛けはいくらでも考えられます。
ベテランはみな、この辺をごく自然にやっている。
無意識にエネルギー量を調整し、サービス精神からさりげなくサプライズを演出するのです。

もちろん、ある程度実力を身につけ、経験を積むまでは、「仕込み」は必要不可欠です。
「サプライズ」を仕掛けたつもりが、ただの「事故」になってしまった、などというのは避けたいものです。

音楽的なスリルとサプライズ。
バンバン仕掛けていきましょう!


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