大槻水澄(MISUMI) Blog 『声出していこうっ!』

ボイストレーナー大槻水澄(MISUMI)が、歌、声、音楽、そして「生きること」をROCKに語ります。

*

「ハモりゃいいんでしょ?」は、実は結構奥が深い

   

「コーラス」と聞くと、どのようなイメージでしょう?
 

いわゆる中学高校などのコーラス部?
ママさんコーラス?
アイドルなどの後ろでゆらゆら揺れているコーラスさん?
 

私自身、自分がコーラスのお仕事に誘われ、現場に出るようになるまで、
「なにそれ?」くらいの知識しかありませんでした。
 

音楽性や現場によりますが、
実際には、「コーラス」というのは、
ドラム、ベース、キーボードと同じように独立したパートで、
同じくらい、重要な役割を果たします。
 

最近ではバンドものの人気や、ツアーの予算の都合などもあって、
バンドの人がコーラスも兼ねるということが多くなってきていますが、
 

それでも、ある程度以上のレベルを要求されるコーラスが必要なコンサートなど場合は、
今でも、コーラスのプロフェッショナルがステージ上にいるものです。

 

さて、コーラスというのは、どんなパートなのか?
 

「ハモりゃいいんでしょ?」
という声が聞こえて来そうです。
私も実際、そう思っていました。

 

しかし、現場に出てはじめて、
この「ハモる」がどのくらい難しいかを思い知ることになります。

 
ちゃんとハモるためには・・・

1.ひとりひとりが歌うメロディの細部のピッチがぶれてはいけない。
 

2.リズムの「点」のポイントがカチッとそろわなくてはいけない。
 

3.メロディのダイナミクスの波が心地よくシンクロしなくてはいけない。
 

4.ことばの発音が一致しなくてはいけない。
 

5.音色が変化するタイミングをそろえなくてはいけない。
 

 

こういうと、少し専門的すぎてイメージしにくいなら、

 
「コーラス」というものを2人、または3人、もしくはそれ以上で、
ひとつの楽器だと考えると、わかりやすいかもしれません。

 

鍵盤楽器や弦楽器で「ドミソ」と弾く場合、
すべての鍵盤や弦のチューニングが
(例え微妙でも)合っていないと気持ちの悪いハーモニーになります。
 

コードプレイの場合は、アタックのタイミングをそろえないと、
気持ちのいいビート感が出ませんし、
3本それぞれの指で演奏するメロディの強弱の波がそろわなくては、
妙にばらつき感のある演奏になるでしょう。
 

また、5.の音色についていえば、
ドの音はオルガン、ミの音はエレキギター、ソの音はフルート
などという音色にばらつきのある楽器でのコードプレイは、
安心して聴けないかもしれません。

 

これらひとつひとつの精度が高いほど、
コーラスとしての完成度は高くなると考えられます。
 

もちろん、ピッチやリズムがばっちり合うだけでも、
お仕事ができるレベルにはなるのですが、
それではやっと「プロ」のレベルをクリアする程度。
 

実際にグレードが試されるのはその先です。

 

それぞれの声のクオリティ、歌の表現力、
さらには、オリジナリティや人間的な魅力、パワー、
そしてルックスや踊りの能力まで、
 

コーラスのお仕事は、実に奥の深いもの。
 

コーラスのお仕事をする人の中には、
自らを「コーラスアーティスト」と位置づける人もいるくらいです。
 

コーラスに関しても、まだまだ語れることはありそうですが・・・
 

とにもかくにも、まずは、きちんとハモる。
話はそこからです(^^)

7840105_s

 

 

 - The プロフェッショナル

Message

メールアドレスが公開されることはありません。 が付いている欄は必須項目です

  関連記事

「ライブ直前って、何します?」

「ライブの前って何食べますか?」 「お酒飲みますか?」 「やっぱり結構声って出し …

わかりやすくうまい人 vs. さりげなくうまい人

「歌のうまい人」には2種類います。 ビヨンセやホイットニーやアギレラみたいに、 …

バンド・メンバーの選び方と、 そのメリットデメリット

友達と意気投合して、生まれて初めて組んだバンドが、 どかんと売れて、人気もバンド …

「自分のことば」になってない歌詞は歌えない!

役者さんがしばしばつかうことばに「セリフを入れる」というのがあります。 この「入 …

ハスキーボイスには2通りある

ハスキーボイスといわれるシンガーは、その発声の特徴によって、 実は2通りに分かれ …

誰に話しても「ウソぉ〜」と言われるOnline映像制作秘話③

当初、編集は誰かに頼む予定でした。 映像編集なんてやったこともないし、 できる気 …

ことばに「自分の匂い」をしみつける

ことばには、話す人の匂いがあります。 同じことを言うのにも、ことばの選び方や言い …

「違和感」をスルーしない

「違和感」は、ふわっと舞い降りる感覚です。   レコーディング中プレイ …

「売れてるミュージシャンに見せる方法」?

今日は、若かりし頃、先輩ミュージシャン、業界の人たちから教わった、 「売れてるミ …

「プロじゃない」から、すごいんだ。

最近、セミナーや講演を通じて、 全国の音楽愛好家の方たちと接する機会が多くなって …