「ミュージシャンズ・ミュージシャンなんか嫌じゃい!」
「ミュージシャンズ・ミュージシャン」ということばを聴いたことがあるでしょうか?
Weblioの実用日本語表現辞典によれば、
「ミュージシャンのうち、特に音楽のプロであり同業者であるミュージシャンから支持されているミュージシャンを指す語」。
業界ではその実力を高く認められ、その名も知られているけど、
一般の人にはあまり知られていない人をさすことが多く、
Weblioでは、こう続きます。
「必ずしも一般消費者の受けがよいとは限らないが、専門家から高く評価されているミュージシャン。」
まぁ、誰もが知っている、
いわゆる「スター」とは一線を画する、渋い存在でありながら、
その「スター」たちにも一目置かれる存在、というところでしょうか。
ミュージシャンたちが、他のミュージシャンに対し、
尊敬の念を込めてつかうことばでもあります。
「ミュージシャンズ・ミュージシャンなんか嫌じゃい。
文ちゃんは、みんなの文ちゃんがいいんじゃい・・・。」
3年前に亡くなった、
友人であり、大好きなキーボードプレイヤー、
小川文明さん=文ちゃんの、忘れられない一言です。
楽屋に訪ねてきたファンの人に、賞賛と尊敬の念を込めて、
「ミュージシャンズ・ミュージシャン」と呼ばれ、
爽やかに「ありがとう」と握手をして、その人を送り出した後に、
ぽつりと、つぶやきました。
実際、文ちゃんは、さまざまなバンドやメディアで活躍した、
いわば、「スタープレイヤー」のひとり。
彼にそう言った方は音楽通風の方だったと記憶していますから、
文ちゃんが、「スタープレイヤー」であることを充分踏まえた上で、
ミュージシャンにも尊敬される存在ですよ、と伝えたかったのでしょう。
それでも、「ロックスター」を愛してやまなかった文ちゃんにとって、
どれだけ実力を評価されることばだったとしても、
「ミュージシャンズ・ミュージシャン」は、
褒め言葉とは感じられなかったに違いありません。
この人、カッコいいな。
心底思いました。
どんなに実力があっても、
どんなに業界やミュージシャン仲間に認められていても、
どんなに稼いでいても、
メディアに登場しない、
名前も聞いたことのないミュージシャンは、
一般の人にとっては、
無名なフリーター&バンドマンと、なんら変わりありません。
扱いも軽いし、たいした興味も持ってもらえないのが通常です。
自分が関わったお仕事や、
一緒にプレイした有名人の名前を出した瞬間に、
へぇ〜といきなり態度が変わる一般の人も少なくないでしょう。
ちょっと演奏すると、
「やっぱりプロは上手だね」
と、十把一絡げにされるのがせいぜい。
自分が、自分として知られなければ、面白くない。
口に出さないまでも、
そんな風に心の中で思っているミュージシャンは、
実はたくさんいるはず。
自己評価と他人の評価のバランスが悪くって、いらついている人、
他者に対して、尊大な、横柄な態度を取ってしまう人、
ひねくれたり、カッコつけたりしてしまう人・・・
そんな残念なミュージシャンがたくさんいる中で、
「みんなの文ちゃんがいいんじゃい。」と、
ことばに出して、言い放ってしまう潔さ。
実にロックです。
一般の知名度と、音楽的な実力はイコールではありません。
知名度があるから、売れたからといって、
ミュージシャンの言うところの、
いわゆる「いい音楽」「いい演奏」とは限りません。
しかし、知名度がある、売れているということは、
それだけ、たくさんの人の心に届く何かがあるということ。
実力を磨いて、業界で認められる努力をするのとおなじくらい、
たくさんの人の心に届けるにはどうしたらいいかを考え、発信し続ける。
「みんなの○○」になる人は、そんなことをきちんきちんと、
積み重ねてやって行かれる人なのかもしれません。
自らのミュージシャンとしてのあり方に想いを馳せるとき、
いつも決まって思い出す、懐かしい声です。
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