「あの人、ノド大丈夫かな?」
2022/12/25
仕事柄、お芝居やミュージカルなど、さまざまな舞台にお招きいただきます。
レッスンの成果を見せていただく意味もあり、
日頃身近にいる人がステージの上で輝く姿を見たいという思いもある。
なにより、単純にエンターテインメントが好きですから、
時間の許す限り劇場に足を運ぶようにしています。
観劇をするときは、いや、コンサートやライブを見に行くときもですが、レッスン成果を本人やスタッフの方たちにご報告やご提案をしなくてはいけないとき以外、基本、素直に楽しみたいので、「ヴォイストレーナー・スイッチ」は切るように心がけています。
そうじゃないと、楽しめないんですね。
声や呼吸ばかりが耳に入ってくる。
思わず分析がはじまってしまう。
ストーリーが追えなくなってしまうときさえあります。
そうやって、なるべくフラットな気持ちで、舞台を楽しんでいるわけですが、そこは職業病。
やっぱり、聞こえてきちゃうんです。
「声」が、ですね。
特に、舞台に登場した役者さんの声を聞いた瞬間、あ、ノド、だいぶ来てるな・・・と感じてしまうとき。
一度、「あの人、ノド大丈夫かな?」と思ってしまったら、もうだめです。
その方がセリフを言うたびに、
そんなに激しく話したらダメ、
それでは声が強すぎる、
いやいや、どんなに激高しても人はそんな風に怒鳴らないよ、
・・・などなどと、
その人の声が心配で、もう気になって気になって、
いても立ってもいられなくなります。
縁もゆかりもない女優さん、俳優さんなのに、舞台があと何日続くのかとスケジュールをチェックしたりして、なんとか声が保ちますように、これ以上傷めませんように、と祈ったりします。
きっと声帯様のこと、知らないんだな。
もっと大切にしなくちゃダメなのにな。
激しい感情表現をするときこそ、クールにならなくちゃいけないのに。
ある程度丈夫で健康な人の場合、声帯様を2~3日程度なら酷使しても問題ないでしょう。
しかし、声が枯れてくるのは声帯様の発進するSOS。
そのまま酷使し続ければ、結節やポリープなど、トラブルの元です。
一度傷めてしまうと、治療期間は声を使うことができません。
もしくは、だましだまし使わなくてはいけなくなります。
きちんと治療できなかったのか、声がガラガラになったままという俳優さん、女優さんもお見かけします。
ガラガラ声では役も限られてしまうでしょうから、切実です。
なんといっても傷めないように、大切に、丁寧に使うことが一番です。
人間の声というのはそう簡単に痛むようにはできていません。
赤ちゃんが何時間泣いても声が枯れないように、自然な状態なら、どんなに激しく感情表現をしても、枯れたりしないんです。
お仕事で声を使う人、声をお仕事にしたい人ほど、「基礎づくり」をおろそかにせず、しっかりと取り組んで欲しい。
もっともっと声のこと、声帯様のことをきちんと学んで欲しい。
確実な「声のケア」を身につけて欲しい。
舞台に足を運ぶたび、そんなことを考えてしまう。
悲しき職業病です。
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